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 アルファバンクのN.オルロヴァ氏は、ロシアを代表する民間エコノミストだが、普段は、ロシア経済は硬直的で成長余力がほとんどないといった悲観的なことを言いがちな印象がある。しかし、最新のこちらの記事で、今般の新型コロナウイルス危機のロシア経済への影響についてのコメントを見ると、思いのほか楽観的なことを述べており、ちょっと意外な感じがする。

 オルロヴァ氏によれば、確かに2020年第2四半期(4~6月期)のGDPは強制休業の打撃を受け崩れるが、2020年通年のGDPはマイナス1.0%に留まるということである。もっと大幅なマイナス成長を予想する専門家が多い中で、あえて楽観論をとる根拠として、オルロヴァ氏は以下の7点を挙げている。

  1. 2008年、2014年は金融市場の逼迫による銀行融資危機で、2008年には銀行が流動性不足に直面して融資を引き締め、2014年には金利が急上昇した。それに対し、現在は中銀が大量の流動性を供給しており、金利政策にも変化はない。
  2. 現在最も苦しんでいるのは中小企業およびサービス部門だが、これらはロシア経済の基幹部門ではない。
  3. ロシア企業は伝統的に需要が減退すると賃金カットで対処する傾向があるが、現時点では労働市場は売り手市場であり、企業が賃金をカットすることにはなりにくい。
  4. 過去の経済危機は財政の引き締めにも起因していたが、過去2年で財政の基準となる石油価格はバレル50ドルにまで引き下げられており、仮に今後半年か1年で油価がその水準に戻れば、連邦財政が経済の縮小に拍車をかけることはなさそう。
  5. ロシアの輸出の主力は資源であり、世界の需要低下は供給量よりも価格下落に反映される(つまり実質GDPは減らない)。ルーブルの為替政策がロシア生産者の競争力を最大限に保護するものであることも、これに繋がる。
  6. 人々の移動が困難になっていることで、ロシア国民の外国旅行が減り、外国からの出稼ぎ労働者の流入が減るので、ロシアの国際収支、GDPにとっては有利となる。
  7. ロシアは広大な国土を有し、大都市では経済活動停止の影響が大きくなっても、地方ではそれが緩やかになる可能性がある。

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