2020_03_26_koronavirus_7263

 こちらに見るとおり、ロシアのプーチン大統領は3月25日の大統領令で、4月22日に予定されていた改憲に関する国民投票を延期することを決定した。新しい投票日はこれから調整することになる。

 本件に関し、こちらのサイトで、政治工学センターのA.マカルキン氏が論評しているので、要旨を以下のとおり整理しておく。

 改憲に関する国民投票は、年内に実施されるだろうが、その時には政治的リスクが高まっている可能性が強い。プーチンは、下院、上院、地域議会が同日に改憲案を承認し、必要な手続きは踏みながら、その発効がいつになるか分からないという、奇妙な状況を作ってしまった。

 政権は投票の実現に向けぎりぎりまで全力を挙げたが、次第に投票実施は不可能であることが明白になっていった。最初は注目を集めていた改憲問題も、コロナの流行や油価・ルーブルの下落に主役を奪われた。高齢者も多い投票組織スタッフに、この状況で作業を強いるのは、酷なことである。決定打となったのが、プーチンがコロナ対策の特別病棟を訪問し、欧州の大流行の二の舞になってはいけないと発言したことであり、それ以降、大統領の国民向けスピーチの準備が始まった。プーチンは、2014年の時と同じように、共通の敵を前にして国民を束ねる存在として、国民に語り掛けた。

 延期された投票がいつ実施されるかは、まだ明らかでない。パンデミックが落ち着いていたら6月かもしれない。あるいは、統一地方選挙と同日の9月かもしれない。しかし、国民投票と地方選挙はまったく異なる意味合いであり、たとえば不人気な現職知事が改憲を支持する発言をすると、かえって有権者が反発する恐れもある。

 さらに、政治状況は刻々と変化し、政権は次々と新たな課題に直面し、それがいつ終わるかも不明である。現時点であれば、国民のムードは読みやすく、それは「危機の時には現政権の下に団結する」というものである。しかし、パンデミックが収束した後では、団結効果が薄れている可能性がある。経済状況、失業、ビジネスへのダメージがどうなっているか不明である。ロシアはトランプの米国のような大規模な経済対策は打てない。ロシアの国家的な優先事項は安定と安全保障であり、国の支援を期待できるのは、年金生活者、公務員、軍事・治安関係者、そして経済の基幹となるような大企業だけである。旅行会社、外食といった大都市のサービス部門は、その対極にある。銀行預金の利子に対する新たな課税などは、預金が乏しい公務員や年金生活者にはウケるかもしれないが、大都市のアッパーミドルの不興を買うことになろう。

 こうした状況での国民投票実施は、政治的リスクが高まる。かといって政権が宙ぶらりんの状態を続けたり、国民投票をやめてしまったりすることもできない。投票をやめたら、政権の面目が潰れ、国民の反政権的ムードが高まる恐れがある。おそらく、中断の時期をなるべく短くし、何としても今年中に投票を実施するように全力を尽くすだろう。その際に依拠するのはやはり、安定的な支持層である年金生活者と公務員である。


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