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 先日も書いたように、現在のウクライナの経済状態をどう見るかについては、意見が分かれている。そうした中、先日、フィナンシャルタイムズに、「Ukraine’s recovery is a headache for Putin」と題する記事が掲載され(読むのにはログインが必要)、ウクライナ経済が上向きであることが論じられた。だいぶ好意的な論調だが、影響力あるメディアの論評なので、以下でそれを抄訳しておく。

 ウクライナに関する否定的なニュースには事欠かないが、経済についてはその多くがポジティブな内容となりつつある。6年前の政変とロシアの介入により、ウクライナ経済は下降線を辿ってきたが、改革派のゼレンスキー大統領と議会に導かれてそこから抜け出そうとしており、向こう数年間で経済的離陸のチャンスが充分にあると考える専門家もいる。

 ウクライナは1月、12.5億ユーロの起債に成功したが、その利回りは4.37%で、1年前から半減している。2019年に通貨グリブナが17%切り上がった効果もあり、外貨準備は1月に2012年以来の水準にまで拡大した。公的債務も、2016年のGDP比81%から、51%にまで低下している。

 ポロシェンコ前大統領の時代に、その基礎は築かれていた。問題点もあったが、ポロシェンコ時代の歴代内閣は困難な課題に取り組み、その政治的な代償として選挙に敗れた。長らく補助金漬けだったガス価格を市場価格にまで値上げし、家計に苦しみを強いつつも、財政を改善した。中央銀行は、闇経済に染まり非効率だった銀行部門を健全化した。前政権時代に導入された汚職対策が、ようやく実を結ぼうとしている。

 ウクライナの労働移民の本国送金も、プラスに働いている。世銀によれば、ウクライナから500万人強が国外に働きに出ており(ポーランドだけで100万~200万に達する)、2018年のレミッタンスは144億ドルとなり、ヨーロッパ最大の受け手となっている。ただ、ウクライナ経済が回復し、2019年には実質賃金が10%ほど上昇したことから、ウクライナの労働移民は帰国し始めており、その結果として2019年の流入は120億ドルに低下したと見られる。

 ゼレンスキー氏が大統領に選出され、その公僕党が議会選で勝利したことから、改革関連法案が大量に可決され、国際社会は「急ぎすぎて質を犠牲にすることのないように」と釘を刺したほどである。中でも画期的なのは、長らく禁止されていた農地売買が10月に解禁されることであり、これにより農業・食品産業の生産性が高まることが期待されている。

 ただし、政治的なリスクも2つある。第1にオリガルヒが改革を骨抜きにすることである。中でもゼレンスキーの大統領就任を手助けしたコロモイスキーが、国有化されたプリヴァトバンクの奪還を目指しているのが不安材料である。これについては、かつてコロモイスキーの顧問弁護士だったボフダン大統領オフィス長官を、ゼレンスキーが2月に解任したことは良い兆候である。第2のリスクは最大のもので、クレムリンに由来する。ウクライナの成長率がロシアのそれよりも高いのは、プーチンにとって面白くない事態である。最近生じたドンバス情勢の激化は、ロシアが依然として行使できるテコの存在を改めて想起させた。


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