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 現在ロシアのプーチン政権が取り組んでいる「ナショナルプロジェクト」に関しては、以前「プーチンの『ロシア改造計画』はどこへ 人もコンクリートも重視の欲張りプロジェクト」というコラムを書いたので、そちらを参照していただきたい。今般のミシュースチン新首相の起用には、ナショナルプロジェクト実現に向けて、改めてネジを巻き直す(少なくとも国民向けにやってる感を出す)という狙いがあったものと思われる。ただ、実現のためには先立つ財源が必要だ。こうした問題に関し、エクスペルト誌のこちらのサイトでA.コロリョーヴァという論者が論じているので、要旨を以下のとおり整理しておく。

 メドヴェージェフ内閣退陣の主要因と言われているのが、大統領が教書で掲げた諸課題を、自分たちが実行できないと閣僚たちが認識していたことである。経済閣僚たちは、教書によって示された巨額の社会支出に、難色を示していたという。

 しかし、連邦税務庁長官だったミシュースチンは、違ったようだ。首相に就任すると、ミシュースチンはすぐに、国には大統領教書の諸課題を実現するのに充分な財源があると言明した。下院での演説では、「マクロ経済の安定と財政黒字のお陰で、我が国には大統領によって提起されたすべての課題を本年1月から実現するための財源が存在する」と発言した。ちなみに、教書では新たな支出は本年1月1日から計上されると述べられていた。大統領も教書で国民の貧困について語っていたが、ミシュースチンの発言振りからすると、その改善にすぐにでも取り組まなければならないということなのだろう。与党「統一ロシア」も最大限柔軟に今年度の予算を修正していきたいとしている。

 今回表明された憲法修正を円滑に実施していくためにも、ミシュースチンは国民の行政府への支持率を高めなければならない。

 教書を実現するためには、今年だけで4,500億ルーブルが、4年間ではざっと4兆ルーブルが必要だが、ミシュースチンによれば連邦予算の枠内の組み替えによって可能である。実際、2019年1~11月の財政は3兆990億ルーブルの黒字(対GDP比3.1%)であり、当初の予算の1兆4,808億ルーブル(対GDP比1.4%)を超過している。

 予算によれば、今後3年間の財政黒字は対GDP比で、2020年0.8%、2021年0.5%、2022年0.2%となっている。2020年の黒字は8,761億ルーブルということになっている。「予備基金」の規模が予定額を7%超過している状態であり、余剰分をナショナルプロジェクトに回せば、歳出へのしわ寄せは小さくなる。また、政府が「国民福祉基金」形成に当たっての油価基準額を引き上げる可能性もある。基準額は、2019年がバレル41.6ドル、2020年が同42.4ドルとなっている。

 専門家のM.コーガンによれば、予算修正後に考えられる動きとしては、ナショナルプロジェクトの精査、経済のデジタル化、実業界との対話などが考えられるという。ミシュースチンは税務庁長官として、経済成長が5年間で3.2%しかなかったところ、税収は実質36.5%も引き上げるという実績を示している。ナショナルプロジェクトは2019年に明らかに停滞し、それが低い成長率にも影響したわけで、ミシュースチンの税務庁長官としての能力が買われ、この状況を正せると期待され今回の起用になったと考えられる。


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