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 昨年GLOBE+に書いた「ロシア版の新幹線計画がまさかの大迷走」というコラムは、幸いにして多くの読者に読んでいただけたようだ。ただ、サンクトペテルブルグ路線とカザン(当面はニジニノヴゴロドまで)路線が競合し、2019年末までにどの路線にGOサインを出すのか最終結論を出すと言われていたにもかかわらず、結局年内には明確な決着が着かなかったようで、相変わらず雑多な情報が飛び交っている。以下では、雑駁になるが、11~12月に出た報道を整理しておく。

 11月半ばのこちらの記事によると、ロシア運輸省は、サンクトペテルブルグ~モスクワ~ニジニノヴゴロド高速鉄道プロジェクトを、ナショナルプロジェクトの一環である「インフラ近代化総合計画」に追加で盛り込むことを主張している。ティトリフ運輸相が11月12日に述べた。モスクワ~ニジニノヴゴロドについてはすでに総合計画に盛り込まれている。まず2024年までにモスクワ~ニジニノヴゴロドを完成させ、サンクトペテルブルグ~ニジニノヴゴロド全体は2026年開通を目指す。モスクワ~ニジニは421kmで費用5,300億ルーブル、モスクワ~ペテルブルグは659kmで費用1.59兆ルーブルと想定されている。

 こちらに見るとおり、プーチン大統領は11月に出席した経済フォーラムで高速鉄道についてのビジョンを尋ねられ、以下のように回答した。「私の立場は、市場的なもので、試算が必要だ。長いこと試算をしているのは事実だが、それでも必要だ。我々は高速鉄道が多くの国で発展していて、その経済的成果というものも知っている。どんなやり方が我が国にとって最適なのか、最終的な決定を下さなければならない。高速鉄道なのか、それとも単なる急行列車にするのか。貨物、旅客の兼ね合いもある。資金は割り当てられており、拠出は基本的に可能だ。国民福祉基金からも可能である。それをどう回収するかというのが肝心である。遠い将来ではなく、せめて中期的に回収できるようにすべだ。これが事業の前提である。」

 12月12日のこちらの記事によると、オレーシキン経済発展相は、モスクワ~サンクトペテルブルグ高速鉄道に公的資金を投入することは可能である、しかしそれはプロジェクトの正確な総額が明らかになった後のことだ、現時点では政府は費用を1.5兆ルーブルと見積もっている、などと述べた。

 12月23日のこちらおよびこちらによると、㈱ロシア鉄道はモスクワ~サンクトペテルブルグ路線建設の設計・予算文書案を、2022年までに策定することになった。ロシア鉄道ではモスクワ~ペテルブルグ、モスクワ~ニジニを一体のプロジェクトと位置付けており、その総額を2.3兆ルーブルと見ている。ニジニ路線は2024年、ペテルブルグ路線は2026年の開通を見込む。

 12月27日のこちらの記事によれば、ゴーリキー鉄道管区の次長代行は、モスクワ~カザン高速鉄道中止という決定は下されておらず、その設計作業はまだ続けられていると発言した。

 一方、だいぶ趣が異なる情報になるが、12月10日のこちらの記事によれば、ロシア・ベラルーシ連合国家の枠内のプロジェクトとして、サンクトペテルブルグからドイツのハンブルグに至る高速鉄道(「マギストラーリ」という名称)を建設する計画が検討されているという。連合国家のラポタ国家書記(同氏はロシア側の代表)が明らかにした。同氏は、ロシアではモスクワ~カザン高速鉄道計画があるが、我々は高速鉄道網の西部分を推進し、その際に主として民間資金に依拠する別のモデルをとることにした、潜在的なステークホルダーとはすでに交渉しており、ドイツ鉄道、ドイチェバンク、シーメンスから成るドイツのコンソーシアムの参加が想定されている、ハンブルグ市および港湾当局とも協議している、環境を重視する欧州の潮流にも合致する、ポーランドとはまだ直接交渉はしていないが好感触は得ている、費用は400億ユーロを要すると見られる、などと述べた。また、ロシア科学アカデミーのセルゲエフ総裁は、もしも欧州側に委ねるとミンスク~ベルリンだけで高速鉄道が建設されてしまい、そうなると貨物のコントロールはEUに移り、ロシア~ベラルーシ間では高速鉄道ができなくなってしまうので、連合国家の軸となる高速鉄道を建設して地域の貨物および旅客の流れをコントロールできるようにすべきだと主張している。


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