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 ロシアの『エクスペルト』誌(2019年12月16-22日号、No.51)が、アルメニアの最新情勢についてのレポートを掲載している(K.デニセンコ、P.スコロボガティ署名)。セルジ・サルグチャンが去り、ニコル・パシニャンが政権に就いた「ビロード革命」から1年半が経ち、その後の情勢について報告したものである。レポートの中から、重要と思われるところの要旨を以下のとおりまとめておく。

 パシニャンは2018年4~5月の国民の抗議行動を受け首相に就任し、その後の議会選挙で同氏の「我が歩み」は70.4%を得票した。現在でもパシニャンの支持率は高いが、公約をすべて直ちに実現するわけにはいかないので、徐々に低下しつつはある。また、パシニャンとその一派は、問題をすべて前政権の腐敗のせいにし、具体性のない公約を発するなど、「ポピュリスト」と呼ばれることもある。

 問題は、唯一の同盟国と言えるロシアとの関係である。革命の際には、特にロシアのマスコミなどは、パシニャンを米国派と呼んでいた。その後、「多角外交の政治家」と、若干穏便になったが。就任後、ユーラシア経済連合の会合などでの訪ロはあったが、パシニャンはロシアを一度も公式訪問していない。ブリュッセル、トビリシ、テヘランなどにはすでに行っているのにである。2020年前半には、初めてのロシア公式訪問が行われるという情報もある。一方、プーチンの側は2018年秋にエレバンを訪問して実り多い対話をしているので、両国関係の危機というほどではないのだが。

 パシニャンは米国との協力に熱心だが、それは歴代の政権と同じでもある。一つには、米国がナゴルノカラバフ紛争調停のためのミンスク・グループ共同議長であるという事情がある。また、米国には非常に強力なアルメニア・ディアスポラのロビーがあり、米国からの政治的・経済的支援を取り付けているからである。

 他方、ロシアは近年カスピ海地域での活動を活発化させ、アゼルバイジャンやトルコとの関係を強化しており、これはアルメニア・ロシア関係にとってはマイナスの要因である。また、パシニャンとプーチンの個人的な関係もスムーズではなく、これはパシニャンが革命的な方法で政権に就いたことにも起因しているだろう。また、ロシアはコチャリャン、サルグシャンといった歴代指導者と協力関係を築いてきたが、パシニャンが汚職を理由に前者を逮捕し後者を取り調べていることも、ロシアとの関係をぎくしゃくさせる。

 アルメニアの2019年の成長率は7.5%にも達しようとしており、これは欧州最高の数字である。もっとも、成長は2016年9月~2018年5月のカラペチャン首相の時から続いている現象である。カラペチャン時代の成長は対外借入とレミッタンスの賜物であり、パシニャン首相はそれを維持している形である。貧困率や失業率は依然として非常に高い。

 パシニャン首相はアルメニアの投資環境の悪さは前政権の腐敗のせいだとして、その関係者を厳しく訴追しているが、それがかえって外国人投資家にハイリスク国という警戒感を呼び起こし、投資が伸びない原因となっている。リンデン・インターナショナル社がアムルサルスコエ金鉱山の開発に3.5億ドルを投じながら、環境リスクを理由に採掘に待ったがかかっていることも、外資誘致の障害となっている。

 外国人投資家がパシニャン政府の様子見を続けている現時点で、最大の投資国となっているのはロシアであり、アルメニアへの投資の45%を占めている。アルメニアにはロシア資本の参加した企業が2,000社ほど存在する。


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