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 ロシアの『エクスペルト』誌(2019年12月16-22日号、No.51)が、12月9日のノルマンディー方式のウ露仏独首脳会談の結果についての論評記事を掲載している(A.スミルノフ氏署名)。その中から、ウクライナのゼレンスキー大統領の思惑について述べた箇所を中心に、以下で要旨をまとめておく。

 パリにやって来たのは、「公僕」ではなく、反ロシアレトリックに満ち溢れた「ニュー・ポロシェンコ」だった。会談でゼレンスキーは、前任者が結んだミンスク合意を順守することを認めざるをえなかったが、帰国後に、合意されたコミュニケのウクライナ語訳に変更を加え、またミンスク合意を修正していく意欲を示した。

 ゼレンスキーはノルマンディー会合に、米・英を加えることを求めている。仏・独がロシア寄りであると考え、米・英が加わればよりウクライナの立場が強化されるという期待に加えて、国内での政敵を牽制する思惑もある。

 ゼレンスキーという政治家の特質は、八方美人なことである。芸人の性なのか、皆に好かれようとし、両立できないような約束をしてしまうことは、米国の民主党、共和党に矛盾した約束をしたことからも明らかである。

 国民のゼレンスキーに対する支持率は、秋口までは高かったが、11月の調査で52%にまで急減した。また、約半分の国民が、いまだにホンチャルーク首相の存在を認識していない。

 ウクライナの成長率は4%で、先進国なら充分だが、ウクライナにとっては不充分である。ゼレンスキーは大胆な改革には踏み切れず、それでいて個人事業主向けのキャッシュレジスターを導入させるなど、締め付けを強めている。労働力の国外流出は続いており、2019年1~10月の国外から本国への送金額は前年同期比7%増の97億ドルに達した。

 ウクライナの公的対外債務は、上図のとおり推移している。現在のところ、IMFの融資と、米欧の支援、外資によるウクライナ国債の購入で、資金繰りに問題は生じていない。ウクライナは国債の外貨建て利回りを9%から4%に、グリブナ建てを17~19%から12~13%に引き下げることができた。これにより、債務の借り換えや財政赤字の補填が可能になっているが、ウクライナ経済の非効率という根本問題は解決しない。外貨の流入により2019年にはグリブナの対ドル・レートが20%上昇し、輸入および貿易赤字が拡大した。

 支持率が急落したことを受け、ゼレンスキーは光熱費を引き下げることを閣僚らと討議する動画を公開した。ホンチャルーク首相は、法律の制約がありこの冬は無理だが、次の冬には引き下げる可能性が生じると発言した。

 汚職対策でも、進展はない。ゼレンスキーは、前政権の関係者による汚職のうち、最も重大なものについての調査を徹底すると述べていたが、誰も罪には問われていない。それのみならず、大多数の汚職スキームを現政権の関係者が引き継いでいるという疑惑も生じている。オリガルヒとの関係にしても、ゼレンスキーはすべての大物との良好な関係をすぐに築き、誰も罪に問われたりしていない。

 ミンスクでの3者コンタクトグループでウクライナを代表しているクチマ氏はこの夏、ドネツクおよびルハンスク人民共和国との通商封鎖を解く可能性に言及した。しかし、ゼレンスキー大統領のミンスクでの代表者がそれを軌道修正し、両人民共和国で国有化された資産が元の所有者に返還されることを要求した。国有化の対象になったのが主にアフメトフ氏の企業だったことを考えれば、この方針転換を主導したのはアフメトフだったと考えることができる。

 結局のところ、ゼレンスキーは、落ち込んだ支持率を立て直すには、ドンバス和平交渉しかないと決断したのだろう。ただ、オリンピックの「参加することに意義がある」と同様に、ゼレンスキーもこの交渉で勝とうとしているのではない。ゼレンスキーとその側近たちにとって、広範な自治をドンバスに与えるというミンスク合意は、完全な履行ができないものである。それを受け入れれば、社会的支出とインフラ再建でウクライナ財政に多大な負担が生じ、その一方でキエフ中央政府がコントロールできない資金の流れが生じる。そこで、ゼレンスキーとしては、たとえ長引いたとしても、ドンバスに対する全面的支配を取り戻すことを目指し、そのために時間を稼ぐことにしたのだ。あるいは、ゼレンスキーは米国で政権交代が起きるのを待って、より支援を当てにできそうな民主党政権に期待しているのかもしれない。


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