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 先日も取り上げたが、12月7日の首脳会談でもすれ違いに終わったロシア・ベラルーシ関係につき、ロシア政治工学センターのこちらの記事の要旨を以下のとおり整理しておく。

 7日の会談後、ロシアの代表団で唯一、結果についてコメントしたのが、オレーシキン経済発展相だった。大臣によれば、交渉は実り多いものであり、農業、通信、税関、石油市場といった一連の分野で大幅な前進があり、石油およびガス市場に関しては両国の立場は限りなく合意に近付いた、という。

 一方、テレグラムの「ネズィガリ」というチャンネルがまことしやかに伝えたところによると、閣僚も参加して行われた会談の中で、やり取りが感情的になり、個人攻撃も伴った。ルカシェンコは何度か取り乱し、平静を取り戻すために中断を余儀なくされた。メドヴェージェフ首相はルカシェンコに対し、ロシアの閣僚に対して暴言を吐いたことを公式に謝罪するよう求めた。ロシア側からルカシェンコに対し、次期大統領選に出馬することは考え直した方がいいのではないかと指摘される場面もあった、ということである。

 セマシコ大使によれば、31項目の工程表のうち、7日の会談で3項目につき合意し、残るは8項目だという。解決できたのは、電力問題と、税関問題だった(注:あと1つは?)。一方、折り合いがついていないのが税法であり、これについては期限を1年伸ばすことになった。税制マヌーバに伴う全面的な補償は、2022年1月1日以降に解決されることになる。ロシアは2015年から税制マヌーバを開始した。世銀の専門家は、ロシア側がその補償を支払わなければ、ベラルーシは経済危機に陥る恐れがあると指摘する。

 ベラルーシはこれとは別に、4月に石油パイプライン「ドルージバ」で有機塩素化合物により汚染された石油が輸送された事件に対する補償7,000万ドルも求めている。ドルージバのベラルーシ区画で汚染が発見されたのは4月19日だった。ベラルーシの2つの製油所は生産を縮小し、うちモズィリ製油所では稼働停止が報告された。ポーランド、ドイツ、スロバキア、ハンガリーが汚染された石油の受入を拒否したため、ドルージバによる輸送は一時停止した。正常な石油がロシアからベラルーシに到達したのは、やっと5月の初頭だった。7月にトランスネフチは、パイプラインを汚染したことに対する補償を最大で1バレル当たり15ドル支払う用意があることを表明した。

 難航している税関の問題に関しては、2020年6月1日までにロシア・ベラルーシ双方の法基盤を正すことになっている。この問題は、ロシアに制裁対象商品が流入してしまっているグレースキームとかかわるだけに、喫緊である。9月に『コメルサント』が報じたところによると、両国の税関を一体化することまでが想定されている。しかし、ロシア側が一体の税関を創設し実質的に自分でそれをコントロールしたいのに対し、ベラルーシ側は緩やかな結び付きを求めており、折り合いが付かない。ロシア国内でも利害の食い違いがあるという指摘もある。

 「ブレミナ・グループ」というところが、ベラルーシ東部オルシャに巨大なロジスティクスセンターを建設しており、国際貨物航空便を受け入れ、入荷した第三国の商品をベラルーシ製としてロシアに輸出するというプロジェクトを進めていることも、ロシア側を懸念させている。

 ルカシェンコにとっては当然、ロシアの既存の政財界派閥で、ベラルーシとのパートナー関係から利益を得ているような勢力がプーチン体制で力を持ってくれることが、都合が良い。それは、石油利権や制裁を回避する転売ビジネスを背景とする役人・政治家たちである。それは、ロシア・ベラルーシ連合国家の現状に適応し、グレースキーム・密輸体制の中で居心地の良さを味わい、しばしばロシア国庫で儲けることも含め、会計・税制・補助金の盲点を利用している人々である。

 ロシアとベラルーシの新たな文書調印の動きに反発して、ベラルーシのミンスクでは、12月7日に700~1,000人、8日に数百人の抗議デモが発生した。こうした動きは、規模からしても、大多数の国民が反ロシア主義に共感していないことからしても、ルカシェンコにとって危険ではない。むしろ、「ルカシェンコが譲歩を迫られたら、より大規模な抗議活動を呼び起こしかねない」という形で、モスクワに対する圧力の手段として利用できるという面もある。

 そうした中、ルカシェンコは政権幹部人事を進めている。新たに大統領府長官に起用されたセルギエンコは、大統領の息子ヴィクトルのお気に入りである。セルギエンコはベラルーシKGBの幹部として、防諜、ロシアに対する謀略、ロシア・スパイ一掃の専門家であった。ルカシェンコ一家の利益のために働き、最も信頼の厚い一人である。セルギエンコ起用は、ルカシェンコがロシアと一戦交える覚悟であることを物語っている。

 大統領府副長官に起用されたチュプリスは法律家であり、憲法改正への布石との受け止め方がある。連合国家の目的のための憲法改正という見方もある一方で、より可能性が高そうなのが、ルカシェンコがカザフスタンのナザルバエフのように、将来退陣する場合に備え、国家体制を部分的に非属人化しようとしているというシナリオである。

 ルマス現首相は2018年8月に就任したばかりだが、すでに何度も大統領に辞意を伝えていると言われる。首相候補として、ベラルーシとしては異色だが、改革派のルディ駐中国大使が取り沙汰されている。ルカシェンコは2020年に政府を改造するということをすでに表明している。現在は、ルマス首相がロシアとの工程表交渉に当たっているのですぐに解任するのは難しいが、年末までにそれが達成されるにせよ未達成にせよ、それが一段落すれば可能性は出てくる。


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