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 こちらに、サッカーの国際移籍市場の動向と、そこにおいてロシアが占めるポジションに関する記事が出ている。以下、記事の要点を整理しておく。

 ロシアのサッカーが選手獲得に費やす費用は、2010年代の初頭に急増した。2012/13シーズンに、ロシア・プレミアリーグは選手獲得に3.3億ユーロを投じ、ドイツ、スペイン、フランスのリーグを抜いた。2013/14シーズンも3.2億ユーロだった。かくして、ゼニトではフッキとヴィツェルが、アンジではエトーとロベカルがプレーするリーグとなり、外国からロシア・リーグへの関心も高まった。

 しかし、その後、ウクライナ危機、経済危機が起こり、スターたちはロシアを去り、新規の選手獲得は最小限となった。それが、2019年になってロシア・プレミアリーグの選手獲得は再び活気付き、2.4億ドルが投じられた。しかし、専門家たちは、サッカーは経済の一部であり、経済危機の影響が消え去ったなどということはありえないという。実際、現時点で巨額を投じているのは上位の一部のクラブだけである。もしもサッカー界全体が活気付いているなら、プレミア下位のクラブも資金を投じるはずだが、そうはなっていない。スパルタク、クラスノダル、ディナモ、ゼニトの4クラブだけで、移籍金総額の4分の3を占めている。

 なお、ロシア・プレミアリーグ所属クラブの選手の市場価値は、以下のとおりとなっている(額は100万ユーロ)。

  1. ゼニト・サンクトペテルブルグ:201.4
  2. クラスノダル:148.5
  3. CSKAモスクワ:135.2
  4. ロコモティヴ・モスクワ:133.1
  5. スパルタク・モスクワ:93.4
  6. ディナモ・モスクワ:69.5
  7. ルビン・カザン:41.1
  8. アフマト・グロズヌィ:40.3
  9. ロストフ:33.9
  10. アルセナル・トゥーラ:33.5
  11. ソチ:28.9
  12. ウラル・エカテリンブルグ:25.2
  13. オレンブルグ:21.5
  14. ウファ:21.0
  15. クルィリヤ・ソヴェトフ・サマラ:18.9
  16. タンボフ:12.2

 この夏の移籍市場で最も目立ったのは、3年振りにUEFAチャンピオンズリーグに出場し、資金もガスプロムの支援で潤沢なゼニトだった。ゼニトは過去数年の不景気の時期も例外的に積極的な補強を行ってはきたが。ゼニトは、オレンブルグのリーダーだったA.ストルミンを獲得した。最初はストルミンはルビンに移籍すると言われていたが、オレンブルグのスポンサーはガスプロムの子会社であり、天の声が振ってきて、移籍先がゼニトに変わったという。ゼニトはさらに、ロコモティヴのミランチューク兄弟に4,500万ユーロでオファーを出したが、ロコ側が引き留めに成功した。

 その一方でゼニトは、余剰人員をFCソチに売却することに成功した。FCソチのような新興クラブが1,200万ユーロを出したのは異例だが、ソチのスポンサーもまたガスプロムの子会社だというのがミソである。

 この夏の市場で、最大の移籍は、ゼニトが4,000万ユーロでマルコムを獲得したことであった。この額はかつてゼニトがフッキやヴィツェルを獲得した額と同じであり、だからこそ「ロシアのサッカーは危機を乗り越えた」という言説も語られた。しかし、この間、西欧のマーケットはさらに拡大を遂げた。フッキやヴィツェルはクラブでも代表でもリーダーの本物だったが、マルコムはバルセロナの控えにすぎず、まだ目立った活躍はしていない。西欧のビッグクラブは様々な分野のスポンサーを獲得し、新規市場開拓にも余念がないが、ロシアは相も変わらず国営企業、国家財政だけが頼りである。唯一、西欧のクラブと平等な収入源は欧州カップ戦だが、そこで勝てなくなっているという問題がある。

 ある有識者は、次のように指摘する。マルコムの4,000万ユーロは現在の市場では適正だが、問題は今日のロシアで30億ルーブルもの資金を1人のサッカー選手に費やすのが適切かということだ。ガスプロムの支配株は国家に属しており、これは実質的にゼニトの資金の一部は血税ということである。国民の所得水準が低下している中で、こうした支出は社会に対する不道徳ではないのだろうか。

 


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