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 先日簡単にご紹介した益田実・山本健(編集)『欧州統合史:二つの世界大戦からブレグジットまで (Minerva Modern History 1)』(ミネルヴァ書房、2019年)。サブタイトルに「ブレグジット」を掲げているだけあって、さすがに本書におけるその問題についての解説は説得力のあるものになっている。マスコミ報道では、イギリスとEUの駆け引きとか、イギリス国内のゴタゴタだとか、どうしてもそういう側面に偏重しがちだが、本書ではイギリスとEUの関係史、離脱決定に至る経緯はもちろん、イギリスが実際にEUから離脱した場合に双方に及ぶ結果や影響などについて具体的に書かれており、非常にためになる。

 特に、個人的に認識を新たにさせられたのは、第9章の333~334頁の次のようなくだりである。

 イギリスにとって同じく重要なのは、EU以外の国や地域との関係構築である。というのも、関税同盟と共通通商政策はEUの排他的権限であったため、1973年のEC加盟以来イギリスはどの国や地域とも直接通商関係を結んでおらず、離脱すればイギリスはEU域外の国・地域との通商協定がなくなってしまうからである。現在EUは50以上の国や地域とさまざまな通商協定を締結しているが、それに代わってイギリスは、離脱後に世界の国々と新たに通商協定を締結しなければならない。その作業量は膨大であり、交渉自体も数年かかると言われている。加えて、長年通商関係はEU任せであったことから、イギリス政府にはこの分野に精通した専門家が不足しており、またEUから離脱して一国となったイギリスの交渉力は著しく弱まることになる。

 うむ、これは個人的にまったく盲点だったが、言われてみれば確かにそのとおりであろう。そして、これは一例であり、おそらく当のイギリス国民が現在明確に意識していなくても、EUから離脱することによって生じる不利益や空白などは、膨大に存在するということなのだろう。


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