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 末廣昭・田島俊雄・丸川知雄(編)『中国・新興国ネクサス: 新たな世界経済循環』(2018年、東京大学出版会)の紹介を続けさせていただく。

 本書の中でも、第1章「中国・新興国ネクサスと『一帯一路』構想」(伊藤亜聖)は非常に多面的かつ情報量豊かで、決定版に近い論考と思われる。ただ、この章を読み終え、「よし、これで一帯一路のことは良く分かった」と思うよりも、むしろ一帯一路なるものの掴みどころのなさ、研究する上での難しさを思い知らされた気がする。

 伊藤によれば、一帯一路政策が対象としている地理的範囲は、実は明確でないという。一般に、65ヵ国の沿線国が対象とされることが多いものの、それは俗説に過ぎないし、65ヵ国の具体的な顔ぶれにも複数バージョンがあるということである。ともあれ、代表的な説によれば、(服部の個人的な研究対象地域である)旧ソ連諸国や、やはり関心国である中東欧諸国が、すべてその対象国となっていることは、間違いないところのようだ。ただ、実際には中国がアフリカ等を対象に実施する投資プロジェクトも、一帯一路の一環として位置付けられることが多く、その地理的範囲を特定することは意味をなさないということのようである。

 恥ずかしながら、29ページに掲載されている一帯一路の「六大経済回廊」という枠組みを、個人的に知らなかった。六大のうち、私の研究対象地域にかかわるのは、①中国・モンゴル・ロシア経済回廊、②新ユーラシアランドブリッジ経済回廊、③中国・中央アジア・西アジア経済回廊である。驚いたことに、ロシアのモスクワ~カザン高速鉄道プロジェクトは、①の一環ということになっているようだ。中国と欧州を結ぶコンテナ貨物列車「中欧班列」は、②に位置付けられている。さらに、トルクメニスタンと中国を結ぶガスパイプラインも、③の一部として、一帯一路政策に含まれているとは知らなかった。

 ただし、個人的に気になって調べたところ、ロシアから中国向けのガス輸出パイプライン「シベリアの力」は、一帯一路の枠内とは位置付けられていないらしい。あれだって中国との共同プロジェクトに変わりはないのだが。


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