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 前回に引き続き、小泉悠さんの新著『「帝国」ロシアの地政学 』(2019年、東京堂出版)の紹介を続けたい。

 本書では、第1章、第2章で理論的考察を行い、以下の章でその枠組みに沿って、ジョージア、バルト、ウクライナ、中東、北方領土、そして北極という具体的なエリアの現象を論じるという構成になっている。非常に理に適った構成であるが、個人的には、北極を扱った第7章は、それ自体は読み応えがあるものの、本書の主題からはやや外れているかもしれないという印象を受けた。

 第1章では、先行研究にもとづきながら、ロシアの対外戦略を、西欧志向、帝国志向、大国志向の3つに分類する枠組みを採用し、今日のプーチン体制においては旧ソ連圏を勢力圏とする大国志向が主軸になっているとの理解が示されている。その上で、第2章においては、プーチン・ロシアによってその大国志向が、具体的にどのような形で展開されているのかが論じられている。結論を言えば、以下のとおりとなる。

 ロシアの理解によれば、ロシアは、より弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家」=大国であり、その「歴史的主権」が及ぶ範囲は概ね旧ソ連の版図と重なる。その内部において、ロシアはエスニックなつながりを根拠とするR2P(保護する責任)を主張し、介入を正当化してきた。

 ただし、その際に、ロシアは必ずしも旧ソ連全域に一様に支配を行使しようとしているわけではなく、ロシアの影響圏から逃れようとしているような遠心的な国については、「ロシアが決定的に望ましくないと考える行動」(とりわけウクライナやジョージアのNATO・EU加盟)を少なくとも阻止するという対応をとっており、「現在のロシアが目指しているのは、まさにこのような意味での影響圏=消極的勢力圏を維持することであろう」と指摘されている。

 私自身も、小泉氏と同様のイメージは描いていたが、本書によってそれをより明確に理解する理論的枠組みが得られ、有益であった。


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