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 先日、UNIDOおよび外務省主催のGUAM投資ワークショップというのがあり、そのパネルディスカッションのモデレーターを務めさせていただいた。その中で私はウクライナの投資環境について問題提起したのだが、ウクライナからの参加者は直接的な回答の代わりに、同国に投資を行っている外国企業をずらずらと列挙し始めた。「これだけのサクセスストーリーがあるのだから、投資環境云々といった指摘は当たらない」と言いたかったのだろう。

 そのウクライナ参加者は、実例として自動車のシュコダによる投資も挙げており、同社は西ウクライナで自動車アセンブリーに従事しており、現在それをさらに拡大しようとしていると述べていた。しかし、最新のこちらの記事は、残念な現実を伝えている。シュコダはウクライナでの新工場の建設を断念したということである。

 記事によると、フォルクスワーゲン・グループの傘下にあるシュコダは、複数ブランドの自動車のアセンブリーを手掛ける工場の建設地を選定中であり、2017年には同社代表団がウクライナを訪問してフロイスマン首相とも面談した。しかし、その後ウクライナ側は、シュコダが望むような条件を提示できなかった。工業団地の関税・税制優遇は欠如し、電気自動車戦略は15年も機能しておらず、電気自動車生産を促進する法案は年初に上程されながら審議もされていない。こうした中、ウクライナでは中古車の輸入が野放しの状態にあり、まともな自動車ビジネスを駆逐してしまっている。シュコダがウクライナを選んでくれれば、14億ユーロの投資、5,000人の新規雇用、年産30万台の生産、年間45億ドルの輸出が得られたはずだったが、かくしてウクライナはそれをみすみす手放した。シュコダでは現時点で工場建設地を中東欧の4ヵ国にまで絞り込んだが、そこにはウクライナの名はない、とのことである。


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