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 このところ、ベラルーシとロシアの間で隙間風が目立ち、それと裏表の現象として、ベラルーシが欧米、特にEUに接近する動きを見せている。この問題に関し、こちらのサイトでI.ザハルキンという論者が論評しているので、大意を以下のとおり整理しておく。

 2月18日にベラルーシのS.ルマス首相は欧州委員会人事・財政担当委員ギュンター・エッティンガーと会談し、ベラルーシ側としてはできるだけ早期に、協力に関するEUとの基礎協定に調印したいということを改めて表明した。しかし、両者の関係には引き続き多くの不一致があり、妥協点を見出すのは容易でない。

 A.ルカシェンコ大統領も、「ベラルーシは常にEUの頼りがいのあるパートナーであり、両者のアプローチが相互的であることを期待する」と述べている。ベラルーシ側はもうだいぶ以前からそのような立場を示しているが、現実には実務作業を開始する必要性を確認するだけで、そこから先には進めていない。

 EU側は、最近は民主化と人権の問題には目をつむるようになりりつあるが、それ以外にも関係の発展を阻害する3つの未解決の問題がある。

 第1に、本来は「2018~2020年のパートナーシップの優先事項」という文書が調印され、それが両者の関係のロードマップになるはずなのだが、現実にはそれが調印されていない。2017年に調印されるはずだったのだが、ベラルーシの原発建設にリトアニアが反発したことで、いまだに検討段階に留まっている。

 第2に、ベラルーシ・EU間で協力関係についての基礎協定が存在しないことである。形式論として言えば、上述の「優先事項」が制定されたことを受けて、ようやく基礎協定を結ぶことができる。想起すべきなのは、1995年にベラルーシとEUがパートナーシップ・協力協定に調印しながら、EU側が1997年に批准手続きを停止したことである。それゆえ、現在ベラルーシとEUの関係を規定しているのはいまだに、1989年に結ばれたソ連とECの協定となっている。この地域でEUとの本格的な関係文書を有していないのは、ベラルーシが唯一である。その結果、ベラルーシは東方パートナーシップに積極的に参加できず、EUの各種プログラムによる資金の恩恵にもあずかれていない。影響を受けているのは政治対話だけでなく、貿易関係も然りである。しかも、ベラルーシが現在盛んに言っている基礎協定とは、EUがジョージア、モルドバ、ウクライナと結んだ連合協定よりも、はるかに低いレベルのものである。

 第3に、ビザ体制の簡素化の課題が未解決である。両者はもう何年も本件につき交渉し、2018年には交渉最終段階にあるとされたが、本件が近い将来に実現する可能性について専門家はますます懐疑的になっている。

 上述の諸問題の解決が容易でないのは、それが政治体制にかかわってくるからである。ウクライナ危機後、ベラルーシ当局は政治犯を釈放したり、ビザ免除を打ち出したりしてEUに譲歩を示したが、ベラルーシ当局は相変わらず国内情勢を不安定化しかねない大胆な改革には応じるつもりはない。ベラルーシがEUとの関係正常化で望んでいるのは、制裁の解除、基礎協定の調印、貿易の差別撤廃、定期的な首脳会合などであるのに対し、EUは政治・経済の改革、人権の順守、死刑の廃止などを求めている。しかも、EUはベラルーシ当局と関係を拡大しつつも、同時に野党への支援も行っている。つまり、両者の思惑が食い違っているのだ。EUが硬直的な官僚組織であり、またリトアニアの例のように加盟各国の利害もからむとなると、ベラルーシ・EU関係で突破口を開くのはかなり難しい。


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