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 だいぶ遅れ気味のフォローだが、7月16日にヘルシンキで開催された米ロ首脳会談に関し、評論家のB.マカレンコ氏(上掲写真)がこちらで論評しているので、要旨を整理しておく。

 ヘルシンキでどちらが勝った、負けたといった論評は意味を失った。双方とも自分の側の利益を追求し、達成できたものもあれば、できなかったものもあった。

 サミットは、破談にならなかった。両大統領は共同記者会見を行い、お互いに対する友好的な姿勢を示し、会談は有益だったと述べた。不一致点もあったが、それを強調することはしなかった。

 会談の具体的中身につき、我々が知りうるのはごくわずかである。一対一の会談は、予定されていたよりも長く、130分続いた。これは一方では、重要なテーマはすべて討議されたことをうかがわせる。他方では、事前の専門家による準備や協議が不充分で、トランプが事前にすべての資料に目を通さなかったと思わせる。大幅な前進はなく(期待もされていなかったが)、共同声明も出なかった。立場の隔たりがあったことは明らかだが、核問題についての対話は行われたと考えることができる(ただし米マスコミが報じているように中短距離ロケットの問題は取り上げられなかった)。たとえばシリア問題など、具体的な成果があったかについては、追々明らかになるだろう。

 プーチン大統領の側は、サミットによって、国内での正統性を強化できた。対外関係での正統性はそこまで簡単ではないが、ロシアと西側の信頼関係悪化を多少なりとも埋め合わせるポジティブなきっかけとなるとしたら、対外関係の面でもプラスである。

 トランプ大統領の側は、今回も、反対の声を押して、外国の指導者との会談にこぎ着けたということが、成果である。米大統領選への介入疑惑に関しては、プーチン大統領はこれまでどおりきっぱりと介入を否定した。この点ではトランプはジレンマに陥り、自らの政権基盤や、11月の中間選挙での共和党の戦いに否定的影響が及びかねない。

 一言で言えば、会談は、とりあえず可能なことは成し遂げた。それは、対話を開始すること、米ロ関係に多少なりともポジティブな要素をもたらすことである。と同時に、会談は両国の立場の隔たりをすべて明るみに出すことにもなった。


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