今週は地獄の雑誌締切があり、ブログ/HPを更新している余裕がないのだが、これは雑誌用のレポートを執筆している過程で出会った知見なので、軽く披露しておく。「クリエイティブ・クラス」という言葉が、ロシアの新たなキーワードとして浮上していることだ。

 ウィキペディアから引用させていただくと、「クリエイティブ・クラス」という言葉は、経済学者・社会科学者であるリチャード・フロリダ (トロント大学 Rotman School of ManagementのMartin Prosperity Institute 所長)が、米国の脱工業化した都市における経済成長の鍵となる推進力として提示した社会経済学上の階級、ということである。蛇足ながら、これもウィキからだが、脱工業化社会とは、工業化を経た産業社会(工業社会)がさらに発展し、産業構造において情報・知識・サービスなどを扱う第三次産業の占める割合が高まった社会、である。

 それで、昨日のエントリーにも記したとおり、ロシアではこのほど、「戦略2020」と題する今後のロシアの指針となるべき中心的な文書がとりまとめられた。その戦略のなかで、まさに「クリエイティブ・クラス」という言葉が、キーワードとなっているのである。以下、戦略の一節を引用する。

 新たな成長モデルは、脱工業化経済、明日の経済への志向を想定している。その基礎となるのは、教育、医療、IT、メディア、デザイン、「印象の経済」など、人的資本の開発を志向するサービス部門である。先進国でも、途上国でも、「クリエイティブ・クラス」が誕生している。これは自らの日常的な仕事の過程でイノベーションを創出する創造的な労働に従事する人々である。21世紀の現代的な経済において、競争優位を決定するのは、まさに彼らである。近年の経済史が示しているように、クリエイティブ・クラスによるイノベーションの創出は、制度的な環境からは相対的に独立して、多様な組織やネットワークの枠内で生じる。そのためには、人的資本の開発に関連したすべての分野に、質的に異なるアプローチを採ることを必要とする。

 このように、戦略をとりまとめた有識者らはいわば未来志向を示しているわけだが、肝心のプーチン現首相/次期大統領が、「再工業化」路線を掲げて大統領選を戦い、大都市部のクリエイティブ・クラスというよりは企業城下町等の組織票で勝利を勝ち取ったという矛盾があるわけだ。

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