148

 乗客・乗員71名が亡くなったサラトフ航空機の墜落事件。事故原因は現時点では不明であり、機体の技術的な問題なのかは明らかでないが、いずれにしても問題の機種AN-148について確認しておけば、これはソ連時代以来の伝統を誇るウクライナのアントノフ設計局が設計したリージョナルジェット機である。ロシア・ウクライナ両国間の分業関係にもとづきつつ、最終的な組立も両国それぞれで行われていたが、ほとんどがヴォロネジ航空機製造株式会社(VASO)による組立だった。

 AN-148機の開発・生産の経緯についてこちらの記事が良くまとまっていたので、以下抄訳して紹介する。

 ヴォロネジのAn-148生産ラインは、2018年に凍結される可能性がある。その原因は、ロシア・ウクライナ関係の悪化で、必要な部品やユニットを調達するのが困難になっていることである。

 ウクライナからの部品の納入の遅れは、AN-148の生産開始当初から見られたが、2014年の政変後、決定的となった。禁輸対象となった部品の一部は、ロシア国内での生産に置き換え、それにより、当初の計画よりも縮小したとはいえ、今日までAN-148の生産を維持してきた。しかし、今日のような対ウクライナ関係では、ロシアはロシア独自の開発機か、または国際プロジェクトのうち制裁に影響を受けないものに集中すべきだという意見が強まっている。一方、AN-148の将来性が高かったにもかかわらず、ウクライナ側はもうかなり前にその生産に見切りをつけてしまっていたように思える。

 2010年の時点では、AN-148の生産計画に14ヵ国の240以上の企業が参加していた。のちにAN-148をベースとした輸送機AN-178もラインナップに加わり、その時点では作業比率はロシア53%、ウクライナ41%となった。ウクライナにはソ連崩壊時点でキエフ、ハルキウと2つの大規模な航空機工場が残されており、AN-148のプロジェクトはそれらを結集して現代的な生産合同に再編する起爆剤になると期待された。

 2009年にAN-148が稼働を開始した時、アントノフのD.キヴァ社長は、本プロジェクトにおいてロシアは最大の戦略的パートナーだと発言していた。2020年までの販売規模は590機と見積もられ、それとは別に軍用輸送機AN-178の需要も400機と見積もられた。

 現在、ロシアの航空会社が使用しているAN-148は10機ほどで、さらに国家航空隊、軍、非常事態省が18機を保有する。その他は、ウクライナと北朝鮮に1機ずつが飛んでいるだけである。また、航続距離を伸ばしたAN-158が6機キューバ航空に納入されている。

 専門家は、AN-148が時代を先取りした素晴らしい飛行機であると指摘する。旧ソ連圏で初めてデジタルテクノロジーの環境で開発された機体で、世界でもボーイング777に次いで2例目である。

 なお、こちらの記事によれば、ウクライナのポロシェンコ大統領は2月14日、プーチン・ロシア大統領と電話会談を行い、今回の墜落事件の原因究明への協力を申し出たということである。


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