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 今さら昔話をしても仕方がないのだけれど、先日あるウクライナ関係者が、「2013年にウクライナはユーラシア関税同盟にオブザーバー加盟した」と発言していて、当方は「おや?」と思った。私の認識では、確かに当時のヤヌコーヴィチ政権は関税同盟にオブザーバー加盟をした上で「3+1」といった形の協力関係を築きたいと願ってはいたが、結局それが実現しないうちに2014年のユーロマイダン革命を迎えたと理解していたからである。

 そこで、事実関係を確認してみると、私の理解で正しかった。当該の動きは、当ブログでもこちらのエントリーで取り上げていた。それで、その当時は怠っていたのだけれど、今回はユーラシア側とウクライナとのメモランダムの原典テキストにも当たってみた。こちらのサイトに掲載されている「ユーラシア経済委員会とウクライナ間の連携強化に関するメモランダム」というのがそれで、2013年5月31日に調印されている。この中で、「関税同盟、単一経済空間諸国との連携を深化し、その後にユーラシア経済連合のオブザーバーになりたいというウクライナの希望に留意し」という文言がある。明らかに、ウクライナがオブザーバーになる希望を表明し、ユーラシア側は単にそれをテイクノートしただけである。しかも、ご丁寧にも、この文書の末尾には、本文書は国際条約ではなく、何らの権利も義務も発生しないということが明記されている。

 しかし、このメモランダムを読むと、内容が滑稽だ。ウクライナは、ユーラシア側から招待された場合には、ユーラシアのサミット等の会合の公開部分に出席できるとされている。公開部分というのは、マスコミのカメラが入っているセレモニー的な部分ということだろう。そんな形ばかりのパートに出席して意味があるとは思えない。また、ウクライナはユーラシアで採択された文書の写しを受け取る権利をもつ、ただし部外秘文書を除く、などとされている。ユーラシアで採択された文書は、秘密資料以外はすべてウェブサイトに公開されるはずであり、まったく無意味な「権利」だ。さらには、ウクライナはユーラシアの諸文書に示された原則を順守し、ユーラシアの利益に反する言動は差し控える、などという笑える文言もある。結局のところ、ロシアはウクライナに対し、ユーラシアかEUかの二者択一を厳しく迫り、いいとこ取りは許さなかったということだろう。


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