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 先日NHKのBSで「激動の世界をゆく:バルト三国ロシアとヨーロッパのはざま」が放送された。某筋からの圧力でメインニュースの司会を降ろされてヒマになったのか(?)、大越健介キャスターがバルト三国を実際に訪れて丹念に取材し制作されたドキュメンタリー番組で、時宜にかなった内容だった。

 ただ、番組は前後半に分かれていたのだが、一般向けなのでやむをえないとはいえ、前半はちょっと陳腐すぎたかな。大国に翻弄されてきた苦難の歴史、とりわけ20世紀にはソ連・ロシアの苛烈な支配に苦しみましたという、まあ確かにその通りではあるのだが、あまりにも一面的な描き方のような気がした。バルト三国の歴史の本質を知る上では、以前当ブログで紹介した書籍の方が、ずっと複眼的で優れている。

 今回のドキュメンタリーで面白かったのはむしろ後半で、今日のバルト三国の直面している様々な問題が描かれていた。特に、人口減に苦しむエストニアがITに活路を見出し、優秀なIT開発関係の人材を輩出しているだけでなく、国としても「電子市民」という取り組みをしているという話は面白かった。外国人が簡単にエストニアの電子市民権を取得でき、そうすることによって同国で起業や銀行口座開設などもエストニア市民と同等にできるようになるというのだ。いわば、バーチャル・オフショアみたいな存在になりつつあるらしい。まあ、当然、そうなるとマネーロンダリングなどに悪用される可能性も出てくるわけで、ゆえに、実際に銀行口座を開設するためには意外と面倒な手続きが必要という情報もあり、実際のところは良く分からない。ともあれ、現実に近年エストニアが好調な経済成長を遂げていることも事実のようで、ひょっとしたら欧州のシンガポール的な存在として化けるような可能性もあるのかなと感じた。


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