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 こちらの記事にもとづき、本日はウクライナのコークス生産の動向を整理する。

 ウクルメタルルグプロムのデータによれば、2016年上半期にウクライナのコークス生産は27%伸び、550万tとなった。その結果、ウクライナはコークスの輸入を33%削減し、53.5万tの輸入で済ませることができた(これは統計局のデータ)。アルセロールミタル・クリヴィーリフは伝統的に、ポーランドにあるグループ企業のアルセロールミタル・ポーランドからコークスを輸入しており、2016年上半期にも38.3万tを輸入した。もう一つの大口供給国であるロシアからの輸入は26.9万tだった。

 ロシア産コークスを購入しているウクライナの鉄鋼メーカーは多くなく、購入理由は国内のコークス不足というよりは、ロシア産の高品質である。2016年にロシア産を購入したのは、イリチ記念冶金コンビナート、ザポリジスターリである。

 メトインヴェスト傘下のアウジイウカ・コークス化学工場は欧州最大のコークスメーカーだが、同社はドンバス紛争の軍事境界線に近すぎるという問題を抱えている。時折、インフラ、特に鉄道と送電線が、戦火の被害を受け、そのたびに工場は出荷を停止して復旧作業を余儀なくされる。2016年にも6月と7月に後半にそうした事態が起きたが、数日後には操業は再開されている。

 また、武装勢力の占領地で2016年初夏にコークスの出荷、原料炭の搬入の鉄道輸送に支障が生じたことも、各工場に打撃を与えた。それが特に該当するのが、占領地側にあるアルチェウシク、マキイウカ、ヤシニウカの各コークス化学工場であり、当時は鉄道出荷ができなくなり在庫を積み上げている状態だった。7月に鉄道輸送が再開され、ようやく困難が解消された。

 ウクルメタルルグプロムのデータによれば、2016年上半期にウクライナのコークス化学工場には300万tのウクライナ産原料炭(前年同期比9%増)、610万tの外国産原料炭(同33%増)が供給された。ドンバスの紛争開始以来、ドンバス炭の入手困難により、外国の原料炭への依存度は一層高まった。2013年には1,660万tのコークスを生産するのに1,140万tの輸入原料炭を要したが、2015年には1,160万tのコークスを生産するのに990万tの輸入原料炭を要している。製鉄メーカーが高炉での石炭粉注入にシフトするようになっていることも、より品質の高い外国産を求める要因となっている。ウクライナではコークス生産と発電用の両方に用いられる低品位の石炭がだぶついており、エネルギー石炭政策省としてはコークス化学工場への販売を拡大したいが、単体ではコークス生産には向かないので、より伝統的なKクラスまたはZhクラスと混ぜて使う必要がある。

 2016年に入って鉄鋼市場が改善し、占領地域の情勢もある程度安定したことから、2016年通年ではコークスの生産は前年比20%ほど拡大し、1,400万tレベルになると期待される。そのためには、1,200万tの外国産原料炭が必要である。


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