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 これも夏休みに読んだ本。明石書店のエリアスタディーズのシリーズで、『イギリスを知るための65章』。私自身、現在そのシリーズの別の国の作業をしているところなので、他の国も参考例としていくつか読んでおり、今回はBrexitもあったのでイギリス編を紐解いてみたというわけである。ちなみに、このエリアスタディーズのシリーズは、電子書籍のKindleになっているものといないものがあり、私はKindle版が得られる本はそちらを選ぶようにしているので、今回もKindle版を利用した。

 そんなわけで、イギリスの65章を読破はしてみたものの、イギリス編はだいぶ歴史・文学・文化に偏重した中身だった。逆に言うと、今日の政治・経済・社会問題、国際関係などは、かなり手薄である。私の発想では、ビートルズ、パンクロック、イングランド・プレミアリーグ、ラグビーなどの章くらいあってもいいと思うのだが、それらは正面から扱われていない。まあ、イギリスのようなネタが尽きない国は、ある程度重点項目を絞らないと本としてまとまらなくなってしまうので、これはこれでいいのだろう。せっかくなので、EUに関係したくだりだけ、以下引用しておく。

 二〇〇二年一一月、日産のゴーン社長(当時)は、早期にユーロ参加が実現しない場合、イングランド北東部サンダーランドからヨーロッパ市場に向けた新型車の生産拠点をよそに移すつもりだ、とブレア首相にせまった。日産が五〇〇〇人の雇用を提供しているこの地方は、ブレア首相の地元である。一九九七年、トヨタの奥田社長(現会長)は、欧州通貨統合に参加しなければイギリスへの投資を見直すと警告したが、そもそもこの年、「親ユーロ」を掲げて総選挙で保守党を破ったのが、現労働党ブレア政権であった。ユーロ安ポンド高が製造業に影響しないはずがない。製品輸出の六割をヨーロッパ市場に頼っている現状で、この国の製造業を支える日本やアメリカのメーカーからの批判は免れない。

 イギリスにとって、EC加盟は政策の大転換だった。それは、植民地や自治領との貿易において享受してきた特恵関税など、大英帝国の遺産をすて、「西」ヨーロッパ市場を選ぶことを意味した。背後には、スターリング・ポンド圏が縮小して、ポンドが切り下げ一歩手前まで弱体化していたという通貨事情があった。また、軍事的にはアメリカとNATOで連携していてもドルへの反発が強いヨーロッパで、首都ロンドンを一大金融市場と変貌せしめる。こんな夢もEU加盟には託されていた。



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