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 いやあ、これは面白かった。橘玲著『タックスヘイヴン Tax Haven』(幻冬舎文庫、2014年)である。ただ、最近関心が集まっているタックスヘイブン問題に関する解説書というのではなく、小説である。パナマ文書問題を発端にタックスヘイブンが話題になっているのに合わせ、2014年に出た本を最近電子書籍化したという経緯である。内容は以下のとおり。

 東南アジアでもっとも成功した金融マネージャー北川が、シンガポールのホテルで転落死した。自殺か他殺か。同時に名門スイス銀行の山之辺が失踪、1000億円が消えた。金融洗浄(マネーロンダリング)、ODA、原発輸出、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ……。名門銀行が絶対に知られたくない秘密、そしてすべてを操る男の存在とは? 国際金融情報小説の傑作!

 橘玲氏の現代の経済問題についての著作は私も何点か読み、ライターとしての力量は分かっているつもりだったが、小説作品もここまで面白いとは、驚きだった。本書の場合は、マネーロンダリング問題、日本社会の闇をサスペンス的に描き、そこに青春グラフティ的な要素も無理なく落とし込んでいるところが凄い。ただし、本書に登場するタックスヘイブンはほぼシンガポールに限られ、正直タイトルも別の方が良かったのではないかと思えるほどで、タックスヘイブンに関する概括的な知識を習得するために本書を手に取ると、やや空振りになるかもしれない。



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