前の記事の続きで、政治工学センターのマカルキン第一副所長による大統領選後のロシアの展望の続き。
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政党システムの再編は、ロシア政治の力関係を大きく変える可能性がある。その際に、現在すでに登録されている政党は、政権との距離にかかわりなく、すべて負け組になることも考えられる。
「統一ロシア」は、改革の必要に迫られているが、それをどんな方針で進めるかについて、党内に方針がない。看板のすげ替えにとどめるという慎重な立場もあれば、統一ロシアから「全ロシア国民戦線」に組織的資源を送り込んで新党を形成するという考え方まで(後者には自前の資源がない)、様々である。党内競争は激しくなっているし、プーチンの選挙キャンペーンの過程で統一ロシアのライバルとなるD.ロゴジン氏の「軍支持運動」も結成された。ただし、「軍支持運動」の見通しは、純然たる政治プロジェクトというよりは、より広範なものだ。ロゴジンは政権寄りの表舞台の政治家の中では最も人気のある一人で、2006年には同氏の新党結成は充分に体制に忠誠的なものではないとしてクレムリンによって阻まれたが、状況が変わり、現在は政権のクライアントではなく、野心のある同盟者こそが必要とされているのである。
ウダリツォフは、大統領選ではジュガノフを支援したが、同氏は共産党の古い組織には飽き足らず、もし彼が新左派政党を結成した場合は、共産党は左派陣営における独占を失うことになる。自由民主党は、ナショナリスティックなスローガンを主張する唯一の政党という地位を失い、より全うなイデオロギー的ナショナリストによって脅かされるだろう。S.バブーリンやK.クルィロフといった人物がそれに該当し、これらの政治家は過去数年、クレムリンが政界での台頭を阻んできた経緯がある。「公正ロシア」は、リベラル派にとって、議会に議席を獲得できる党のなかでは、最もマシな党であり、それゆえに同党は議会選挙で躍進できたわけだが、その地位を失い、組織の内部が崩壊していき、有力な活動家の多くは左派やリベラルに接近していく可能性がある(I.ポノマリョフ、グトコフ親子など)。ヤブロコは伝統的に融通が利かず、他の党との合併も拒んできており、したがってリベラル新党たちとの競合を余儀なくされるだろう。
これまでの政治システムでは、これらの政党は「凍結」されており、存続が保証される一方、発展の可能性も限定されていた。現在は政党システムが全体として「解凍」されているが、長年にわたる強いられた停滞が基調を決定付けている。旧来の政党は、新政党に比べてスタートポジションが良いにもかかわらず、過去のしがらみによって相殺されてしまっている。
現在のところ目立っているのはプロホロフ氏の新党作りで、彼はリベラル派でしかるべき地位を占め、政治家や、現在は政党参加をためらっているエリートたちの、中心になりうる。彼の優位点は、大統領選挙戦での露出、新顔効果、資金力、政権側が敵視していないこと(プーチンはプロホロフに入閣を打診した)である。また、プロホロフはクドリンなど、他人と組む余地も大きい。なおそのクドリンは、最初は自ら新党立ち上げを考えていたが、現在は基金を創設する意向となっている。ヤブロコと、プロホロフ新党の他に、リベラル潮流としてはPARNASがあり、比較的誰にでも受け入れやすく、妥協的な解決を見出せるルィシコフという指導者がいる(それゆえにモスクワの反政府集会のリーダー役も任された)。
議会に勢力を持っていない反体制派にとって重要なのは、あまりに多数の新党を作らないことである。現在の法律では複数の政党が選挙ブロックを結成するのが禁止されているということもあるが、仮にそれが解禁されても、1995年の下院選で43政党のうち4党しか議席を得られなかったという教訓もあり、いずれにしても小党乱立は有害である。
いずれにせよ、ロシアには「政治」が帰ってきた。体制側は、主導的であり、あらゆる面で最も資源を有しているが、以前持っていたような絶対的な優位は失っている。
続きは明日。
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