ロシア・コメルサントのこちらのサイトに、先般ロシア政府が発表した経済危機対策プランに関する論評が出ているので(V.シトニナ記者署名)、ざっと抄訳しておく。

 ロシア政権が、危機を危機と認めていないので、今回政府が提示した措置は、全面的なものとはなっていない。危機対策プランは、公式的には、「経済発展および社会安定化を確保するための緊急措置プラン」と銘打たれている。最も楽観的なロシアの役人たちでさえ、今年は経済の発展が一切ないと予測しているにもかかわらずだ。「困難な2015年は始まったばかりだ」と、D.メドヴェージェフ首相も地域指導者たちとの遠隔会議で言明している。

 しかしながら、文書のテキストでは、深刻さが認められていない。相変わらずの、資源依存からの脱却、中小企業の役割向上といったお馴染みのテーゼがうたわれているだけである。問題の噴出にもかかわらず、ロシア政権は楽観論を誇示することを自らの責務と考えているかのようである。明白な問題を認めていないため、危機対策は中途半端で、遅れ馳せな内容となっている。

 労働力調査評議会のD.ミチャエフ次長は、次のように説明する。危機対策プランは、新たな予算を採択するまでの、一時的な措置である。それは諸問題を根本的に解決するのではなく、ある種の息継ぎのようなものである。最も肝心なものは、プランの枠外にある。現在、新たな社会・経済予測が策定中であり、それにもとづいて連邦予算が修正されることになる、と。

 本来であれば、危機対策は2014年夏の終わり頃には着手するべきだった。当時すでに、経済制裁、リセッション、石油価格下落などが明らかになっていたので。しかし当時は、誰も責任を負って、事の深刻さを認めようとしなかった。政府および下院は、石油価格を96ドル、為替を1ドル=37.5ルーブルとして、2015年連邦予算を採択した。その結果、危機対策プランの議論が始まったのは、それがもう実施に移されてしかるべき局面であった。しかも、当の文書は、出来上がった行動計画ではなく、これから法制化していこうという提案の寄せ集めにすぎない。これらが実際に法制化された頃には、事態はさらに悪化している恐れが強い。

 SBSビジネスソリューションのA.カリーニンは、次のように指摘する。提案されている危機対策措置は、経済の救済には資さない。全体として、危機の克服には、不充分すぎる。病気の治療ではなく、症状を緩和するだけであり、しかも主に国営および国に近いセクターをターゲットとしている。これまで同様、農業や自動車産業には注意が払われているが、中小企業対策は実質的に何もない。伝統的に、中小企業を支援するという文言はあるものの、地域行政の恣意的な政策など、中小企業を妨げている構造的な障害が、プランでは取り上げられていない、と。

 現在のところ、危機対策プランは、経済状態が今よりも悪くならず、もしかしたら少しずつ良くなるかもしれないという前提に立っている。新たな制裁の導入、長期にわたって低い油価が続く危険性、不況の長期化といったリスクは、今回のプランでは想定されていない。増してや、SWIFTから排除されること、格付けが一層引き下げられることといったシナリオは描かれていない。しかも、食料輸入の禁輸に見られるように、ロシア政権自体がリスク要因となっている。

 記事はもう少し続くが、以下省略。


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