ロシアのショイグ非常事態相が1月の末に「極東・東シベリア開発公社」の創設を提唱し、2025年までに1兆ルーブル兆を投入すべきと唱えて話題となったが、こちらのニュースによると各省庁は総じて前向きであるもののそれぞれニュアンスの違いがあり、なかでも財務省は反対の姿勢を示すことになりそうだという。記事の要旨を以下のとおりまとめておく。

 これによると、まず地域発展省はショイグ案を完全に支持しており、そのために税制・関税優遇措置を明記した連邦法を採択すべきだとの立場。事業主体は、国家コーポレーションでも、国が出資する公開型株式会社でも、どちらでもいい。財源は、国民福祉基金から調達しうるが、同時に官民パートナーシップの枠組みで民間の資金も誘致したいと、同省の関係者は話した。

 ショイグは開発公社に天然資源の管理権を与え、「東方インフラ基金」を開設して、資源を利用した合弁企業が利益を同基金に納入することを提唱しているが、これに対する反応は様々である。地域発展省ではインフラ基金と称するものの目的が不明確だとしており、天然資源省の関係者は総じて賛成できるが実現には様々な法改正が必要と指摘した。

 経済発展省は、極東開発を加速するというショイグ案に総じて賛意を示し、経済・社会インフラの開発、イノベーション、天然資源利用効率の向上、環境保護、輸出促進、中小企業振興といった方向性も正しいとしている。その際に経済発展省は、独自の開発公社の創設に加え、経済特区の活用を提唱している。また、極東・ザバイカル開発プログラム策定の際に、それなしでは技能の高い専門家に来てもらうことは不可能なので、大都市での生活条件の改善のための措置を盛り込むべきだと主張している。

 産業・商業省からは、ショイグ案に加えて、以下のような追加措置を講ずるべきだとの声が聞かれる。すなわち、極東から他地域に貨物を輸送する際の補助金、工業生産経済特区(複数)の創設、工業施設で働くために移住してくる人々を雇う雇用主への補助金、などえある。

 一方、漁業庁は特有の提案を示しており、東シベリア全域のすべての河川で企業が成長できるよう、イルクーツク郊外に漁業ゾーンを設けることを提唱している。

 運輸省筋は、ショイグ案を支持するとしながらも、極東への移住者とその家族向けに航空運賃を無料にするためには、航空会社に補償金を払う必要があり、国庫に1.5兆ルーブルの負担がかかるとしている(移住者が500万人、その家族が500万人として試算)。

 これに対し、いつもどおり、新たな国家コーポレーションの創設に反対しているのが、財務省である。同省によれば、これらの措置を講じることによって財政にどのような影響が生じるのかを予測するのは不可能だし、ショイグは財源を明確にしていない。すでに対外経済銀行が創設した極東・ザバイカル開発基金があるし、新組織の創設には追加の資金が必要なので、理に適っていない。2013年以降の国庫資金の配分は、特定の国家プログラムに厳密に沿って行われるべきで、国家コーポレーション経由であってはならないというのが、財務省の立場である。