20120219prokhorov

 ロシアの『コメルサント』紙が、大統領選の候補者のプロフィールを順次掲載するシリーズを始めたようだ。そこで、2月16日付の同紙に掲載されたミハイル・プロホロフ氏の回を、以下のとおり抄訳しておく

 大統領選の候補者5人のうち、初出馬はプロホロフだけ。専門家は、彼が最大で10%を得票できると見ており、選挙後は政党を結成するか、または政府に入るかのいずれかになると予想している。プロホロフ本人は前者の意向と述べている。

 プロホロフの選挙マニフェストは、「本物の未来」と題されており、リベラル政治家らしい内容になっている。ロシアの未来について、本物の政治を取り戻すことが必要で、そのためには大統領および知事は生涯に2期を最大とし、任期は4年に制限するとしている。選挙法・政党法を改革し、下院選の政党足切りラインは3%に引き下げ、立候補者は公職から辞任する、などとしている。

 本人は、自分のプログラムの眼目は、改革のスピードと質としている。ロシアが現在進んでいるスピードはあまりにも遅く、ゆえに世界的な競争に負けており、私は最後尾ではなく世界をリードするロシアに住みたい、としている。

 プロホロフの公約には、以下のようなものがある。経済犯の恩赦、国家発注法の廃止、すべてのガス生産者にパイプラインと輸出への平等なアクセスを、ガスプロムの分割、国有企業の本業以外の資産の売却、年金赤字を埋めるための国有企業の民営化、税制・財政改革。

 国民自由党のネムツォフは、プロホロフのマニフェストは最も進歩的で、リベラルかつヨーロッパ的で、深甚な改革を想定しているが、問題はそれが宣伝なのか本気なのかということだと指摘、プロホロフはどのような状況で、またプーチンとどのような話をしたうえで大統領選に出たのかについて真実を語っていないので、彼が本気かどうか疑わしいと指摘している。政治評論家のミンチェンコは、このマニフェストは誰も実施したくないような形で書かれており、馬鹿げて有害な思い付きが含まれており、リベラルな主張が国家主義的なそれと同居していると、批判している。なお、来週にはマニフェストのフルバージョンが発表されることになっており、ロシア経済スクールのソニン教授がその作業を仕切っているという。

 ミンチェンコの指摘によれば、プロホロフの選挙キャンペーンはプーチン陣営と歩調を合わせており、たとえばプロホロフはノリリスクニッケルの元社長としてクラスノヤルスク地方で評判が良いにもかかわらず、地方でのプーチン票を奪わないように、大々的なキャンペーンは自粛しているという。目立った動きと言えば、妹のイリーナがプーチン陣営のミハルコフとテレビ討論した程度だった。

 政界や専門家筋では、3月4日にプロホロフが10%得票したら大成功であるとしている。ネムツォフは、プロホロフの成功はキャンペーンにどれだけカネを費やすかにかかっていると指摘。統一ロシアのチェスナコフは、プロホロフはミロノフと4位争いをしており、4位につけて右派と同盟を組めば、今後の政治的活路が開けると指摘。ミンチェンコは、5%なら駄目だが、10%なら政党結成に向かうことが可能と分析。プロホロフ本人は、選挙戦の流れで、下から自然発生的に自分を支持する政党が成立することを思い描いているようだ。

 ミンチェンコによれば、プロホロフには前倒しの議会選をめざすという道もあるが、政党を形成するためには地域との協力が必要で、現在はウラルに1人仲間がいるだけで、現在プロホロフは表舞台の政治家になりえていないし、右派政党での失敗の経緯を見ても組織者としても資質を示していない。評論家のチェスナコフも、プロホロフが政治家として続けていくためには、一匹狼から、チームrのリーダーに脱皮しなければならず、クドリンのような無個性な同志ではなく、より快活な仲間が必要と指摘。プロホロフ本人は大統領選の得票が10%以上なら自らが主導する政党を作り、それ以下なら誰かと連合を組むとしており、陣営ではクドリンをパートナーとして有望視している。

 もう一つのシナリオは、プロホロフが政府入りすること。ミンチェンコは、プロホロフは現政権と歩調を合わせており、プーチンがそのことに感謝して副首相に据える可能性があるとしている。ただし、不人気な改革担当の副首相となり、その場合、大統領選で3位に着けながら副首相に就任して不人気な改革を担当したウクライナのチヒプコ氏と同じように、人気が急落するだろう、とのこと。ただし、プロホロフの陣営では、同氏は他人ではなく自分の政策を実現したいのだとして、プーチンの下で首相に就任する可能性は否定している。

 大統領選後に政治から離れる可能性については、プロホロフ本人が明確に否定しており、本人は選挙後には政治・社会活動に長期的に専念すると明言している。