ベラルーシを代表する政治評論家のV.カルバレヴィチ氏に、最新のベラルーシ事情に関するレポートを寄稿してもらった。そのなかで、ベラルーシの原発建設に言及した箇所があるので、差し当たりその部分だけ以下のとおり翻訳して紹介してみたい。
ベラルーシの原発建設は、実に奇妙なプロジェクトだ。原発建設は、ベラルーシが直面する問題を何一つ解決せず、逆に新しい問題を作り出す。
ベラルーシが厳しい経済難に見舞われているまさにその時に、大規模建設プロジェクトに着手するというのは、賢明なこととは思われない。ベラルーシの国庫には、そのために必要な財源はない。原発はロシアの資金で建設されようとしており、その目的のためにロシア側は100億ドルを貸し付けることになっている。
ロシア側がベラルーシで実施しようとしている原発の設計案は、一切前例のないものであり、またしてもベラルーシ人が実験台にされようとしている。
当初、原発建設の理由の一つとされていたのは、余剰となった電力を輸出し、貿易赤字を補填するというものだった。ところが、現在この地域では、リトアニア、ポーランド、ロシア・カリーニングラード州、そしてベラルーシと、実に4箇所で新たな原発の建設が計画されている。カリーニングラード原発などは、すでに建設が開始された。しかも、この地域一帯は産業の発展度が低い。ベラルーシの原発は同国北西のグロドノ州オストロヴェツでの建設が決まっているが、同州は産業の発展度でベラルーシ東部に引けを取る。バルト3国などは、ソ連時代の鉱工業をすでに放棄してしまった。
かくして、余剰の電力をどこに持って行くのかというのが、大問題となる。ベラルーシの原発は元が取れないという恐れも出てくるわけで、その場合にロシアからの融資をどのように返済するのか?
ロシア側は、ベラルーシの原発で生産される電力を輸出するための合弁企業の創設を、要求している。つまり、ベラルーシは借金を負い、原発を建てながら、電力販売収入はロシアと折半しなければならないわけだ。
このシナリオは、ロシアにとって好都合だ。ベラルーシは、エネルギー面でも、資金面でも、ロシアに依存することになる。なぜなら、原発の燃料はロシアが供給し、核廃棄物もロシアで処理されることになるからだ。