ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

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 先日刊行した『ロシア極東・シベリアを知るための70章』の販売促進のために、「じんぶん堂」というサイトに、「ロシアという大いなる謎をシベリア・極東から読み解く」と題する小文を寄稿しましたので、よかったらご覧ください。


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 先日、「GMK Centerがウクライナ鉄鋼業につき有益な資料発表」という話題をお届けしたが、また関連する情報を取り上げたい。やはりGMK Centerが、こちらに見るとおり、ウクライナの鉄鉱石輸出に関する情報を発信した。

 上図に見るとおり、今年に入ってから、ウクライナの鉄鉱石輸出は、前年を大きく上回るペースで推移している。ざっくり言うと、ウクライナの鉄鉱石輸出では伝統的に、中国と、近隣の中東欧諸国が2大市場となってきた。このうち、近隣の中東欧諸国へは陸路で輸出できるからいいが、遠隔市場の中国向けは海路で運ばざるをえず、ロシアの軍事侵攻以降、中国向けがストップしていたのだ。例の黒海穀物イニシアティブは、貨物が食料に限られたので、中国向けの鉄鉱石を載せるわけにはいかなかったわけだ。

 それが、現状でロシア海軍による脅威が黒海の西側エリアで遠のいたことで、昨年の秋以降ウクライナは、独自の黒海輸送回廊を構築し、それにより食料のみならず鉄鋼や鉄鉱石も船で出荷できるようになった。その結果、中国向けの鉄鉱石輸出も復活したわけで、上掲グラフに見る鉄鉱石輸出の伸びは、間違いなくその効果によるものであろう。


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 Yahooに出た「プーチン氏、ウクライナに4州からの軍撤退要求-和平の条件提示」という記事に、コメントした。

 その際に、現時点で実際にロシアが当該4地域のどれだけを占領し支配しているのかを確認したいと思い、調べたところ、こちらの記事が一番分かりやすかったので、それを使った。併合手続きから1年を経た昨年9月30日現在の状況を示したものであり、その後ドネツク州でロシア側が若干支配地域を広げたりしたことはあったと思うが、まあそんなに大きな変化はないはずだ。

 この資料によれば、ロシア側が占領していたのは、ルハンシク州の99%、ドネツク州の58%、ザポリージャ州の72%、ヘルソン州の82%ということだった。ただし、ヘルソン州に関しては、テキストでは82%としながら、上掲地図のように、図中では81%になっている。

 なお、Yahooのコメントに「参考になった」をいただけると、励みになります(笑)。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週8位には、Barbra Streisand - Peopleが入っている。女優・歌手バーブラ・ストライザンドにとり、初のヒット曲。ミュージカル「ファニー・ガール」で歌われた曲だった。

その頃ソ連では
1964年6月12日:ソ連と東ドイツが友好・相互援助・協力条約を締結。

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 こちらに見るように、このほどロシアの経済メディアのエクスペルトが、ロシアの諸地域(連邦構成主体)の経済健全性ランキングと称するものを発表した。ロシアが編入を主張しているクリミア共和国、セヴァストポリ市までを含めた85地域を対象に、様々な経済指標を総合して、各地域の経済健全指数を弾き出して、ランク化したものだ。地域の経済健全性ランキングというのは個人的に初めて見たので、興味を覚えたが、結論から言うとあまり面白みはない結果となった。

 85地域のうち、上位20地域を見たのが、上表である。上からサンクトペテルブルグ市、モスクワ市、ヤマル・ネネツ自治管区、サハリン州、ハンティ・マンシ自治管区、タタルスタン共和国、サハ共和国、モスクワ州、レニングラード州、チュメニ州と並んでいて、ここまでがベスト10。ベスト10は、大都市圏か、資源地域ばかりだ。ただ、11~20位は若干様相が変わり、工業地帯と、なぜか極東の諸地域が並んでいる。

 逆に、ワースト20が下表のとおり。ビリから順に10地域だけ見ていくと、イングーシ共和国、カラチャイ・チェルケス共和国、トゥヴァ共和国、北オセチア共和国、チェチェン共和国、カルムィク共和国、モルドヴィア共和国、マリ・エル共和国、クルガン州、ダゲスタン共和国と続いており、ほぼほぼ民族共和国で、しかも辺境のムスリム系が目立つ。

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 金属産業を得意とする調査機関のGMK Centerが、こちらのページに見るとおり、Economic Impact of Iron & Steel Industry of Ukraine 2023という資料を発表した。基本点が要領良くまとめられており、英語で読めるということもあり、重宝するだろう。

 特に、上掲の地図などは秀逸だ。ウクライナに元々あった鉄鋼業関連のアセットのうち、2014年以降のドンバス紛争により失われたもの、2022年以降の全面軍事侵攻で失われたり破壊されたもの、現時点でまだキーウ側が維持しているものが、区別して示されている。

 ちなみに、2013年、2018年、2023年で、ウクライナ鉄鋼業の指標は以下のように変化したということである。キャパシティがある程度残っていても、港からの輸出ができなかったり、停電が起きたり、原料炭が手に入らなかったりで、稼働率はかなり下がっている。

  • 製鉄所の数:12→9→6
  • 粗鋼生産キャパシティ:4,200万t→2,700万t→1,780万t
  • 粗鋼生産量:3,270万t→2,100万t→620万t

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 韓国系ヒュンダイ自動車のサンクトペテルブルグ工場は、今年1月にアートファイナンスというロシア企業により破格の安値で買収された(部品をストックしていた倉庫付き)。そして同工場は、元々ヒュンダイのモデル名である「ソラリス」のブランド名を冠し、在庫部品を利用して生産を再開した。ヒュンダイは追加の部品供給は行わないはずであり、在庫が切れた後の生産方針については未定だと理解しているが、いずれにしても、こちらの記事で、同工場のソラリス車生産動向が伝えられたので、以下要点を整理しておく。

 記事によれば、アートファイナンス社は買収後、工場を「AGR自動車工場」に改名し、ヒュンダイが2022年春に停止していた生産を、今年2月に再開した。生産再開から今日までに、7,900台が生産された。

 AGR自動車工場のA.カリツェフ社長は、「我が社は、計画に沿った台数の自動車を生産し、ディーラー網の構築にも精力的に取り組む」とコメントした。


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 毎月、ロシア財務省から連邦財政の執行実績の数字が出るたびに取り上げているが、今般5月の数字が出たものの、これといった新味はない。まあ、他にネタもないので、これを取り上げさせていただく。新味と言えばむしろ、最近また、ロシア財務省のページが、日本からアクセスしにくくなったことか。

 上図に見るとおり、2024年5月は単月で黒字になった。過去の動向を見てみると、どうも5~6月は一年で月額の歳出額が一番低まる時期らしい。

 2024年1~5月の累計では、歳入が14.3兆ルーブル(うち石油・ガス歳入が5.0兆ルーブル、非石油・ガス歳入が9.3兆ルーブル)、歳出が15.3兆ルーブルだった。財政収支は9,830億ルーブルの赤字で、対GDP比は0.5%だった。


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 当ブログで2度ほど取り上げたが、6月6日から8日にかけて開催されたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが終了したということで、そのまとめの数字が出たので、一応記しておく。

 これまで、フォーラムへの参加人数は、上掲のグラフのとおりとなっていた。2019年に過去最高の1万9,000人を記録したが、コロナ真っ盛りの2020年はフォーラム中止で、その後も2019年の水準は回復できていなかった。それが、こちらの記事によると、今回は139ヵ国から2万1,300人の参加者を数え、過去最高を更新したということである。

 そう言えば、今年初めごろに私のところにも、在日ロシア通商代表部から、「ぜひフォーラムに出席しませんかっ!!」といったメールが来ていたような。ブツブツブツ

 次に、これまでの投資成約件数と、その総額は、下図のように推移していた。件数は2023年の900件が、額は2022年の5兆6,700億ルーブルが最高だった。それに対し、こちらの記事によると、今回は982件の成約があり、総額は6兆4,300億ルーブルに上ったということで、見事過去最高を更新した。メデタシメデタシ。

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 ロシアの天然ガス輸出データを整理していたら、奇妙なことに気付いた。目下ロシアはヨーロッパ向けのガス輸出を急減させているが、上図に見るとおり、同盟国のベラルーシ向けにも2022年に減少に転じ、2023年には従来の水準からほぼ半減となっていたのである。ベラルーシのルカシェンコ体制は、以前はしばしばガス供給をめぐってロシアと対立していたものの、現在は完全にプーチンの軍門に下っており、現時点では政治的な理由でガス供給が削減されるとは考えられない。

 それで、考えてみれば、一つ重要な要因を思い出した。ベラルーシでは、同国初となる「ベラルーシ原発」が稼働し、それに伴い発電用のガス需要が大幅に低下すると言われていたのだ。どう考えても、上図に見るガス輸入の低下は、それに起因するものであろう。

 ベラルーシ原発に関する事実関係は、こちらのサイトに日本語で分かりやすくまとめてある。要約すれば、ベラルーシ原発1号機は2020年11月に国内送電網に初めて接続され、2021年6月に同国初の商業炉として営業運転を開始した。これにより、電力供給の大部分をロシアからの輸入天然ガスに依存する同国で、30億立米以上の天然ガス利用を削減できることになった。さらに、2号機も2023年3月に運転を開始した。

 そう言えば、以前「ロシア依存を軽減するはずが逆効果だったベラルーシ原発」というコラムを書いたことがあった。それにしても、ベラルーシ向けは低価格に設定されているので儲けは少ないとはいえ、ロシアがガスの売り先に困っている時に、肝心の同盟国までもがガス輸入を低下させるというのは、何とも微妙な状況である。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、上位ではないのだが、あまりにも好きすぎて、どうしても取り上げたい曲がある。今週80位のEddie Holland - Just Ain't Enough Loveがそれである。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったモータウンのソングライターチーム、HDHの一員であるエディー・ホーランドが、自らパフォーマーとして放ったシングル曲。大ヒットはしなかったものの、この時期のエディー・ホーランドは本当に格好良い。

その頃ソ連では
1964年6月10日:ウクライナの国民詩人、タラス・シェフチェンコの像がモスクワに設置される。

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 一般消費者は直接目にしたりしないので、あまり意識しないかもしれないが、スケトウダラという魚は、すり身に加工され、それがフィレオフィッシュになったりカニカマの原料になったり、現代の食生活を支える重要な食材なのである。そして、最近ロシアのすり身加工産業が急成長しており、こちらの記事によれば、ロシアがスケトウダラのすり身の輸出で米国を猛追しているということなので、簡単に骨子だけまとめておく。なお、上図はすり身ではなく、未加工のスケトウダラの露米による輸出量。

 記事によると、2023年のあらゆる魚のすり身市場は、世界全体で90万tだった。うち、30%に当たる27万tが、スケトウダラのすり身である。

 2023年のスケトウダラすり身の国別生産シェアは、米国75%、ロシア19%、日本6%だった。それが、ロシア漁業協会によれば、今年はロシアが24%になりそうであり、その分、米日のシェアが低下することになる。

 ただ、現在のところロシアですり身を生産しているのは2社だけで、サハリンのギドロストロイと、ロシア漁業会社である。


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 こちらの記事が、ウズベキスタンからロシアに働きに来る労働移民の動向について伝えているので、以下で記事を抄訳しておく。

 ウズベキスタンからロシアへの労働移民が4分の1に減少したと、ウズベキスタンのSh.アサドフ大統領報道官が明らかにした。同氏によると、2016年当時は400~600万人だったが、それが現在は100万人に減少しているという。アサドフ氏はこの減少を、ウズベクで進行中の「経済改革の効果」と説明した。

 ただし、移民問題の専門家V.コジェノフは、確かに改革の効果はあるが、数字が現実に一致していないとして、異を唱える。コジェノフによると、ウズベクからの移民の数は年々減少している。おそらく2017年から2018年にかけてがピークで、250万人程度だった。その後、大統領が交代し改革が進められ、経済は成長し始めた。そして、パンデミックの後、ウズベクからロシアに来た市民の数は、毎年10万~15万人程度減少しているが、激減というほどではない。なお、ウズベク市民がロシア国籍を申請する数が半減しており、つまり彼らはロシア・パスポートにあまり興味を示していない。以前どおり、現在も200万人近くのウズベク人がロシアに来て働いている。一方、ウズベクの人口は3,300万人で、ロシアに出向いているのはその7~8%に当たる。キルギスからなどと違って、ウズベクからは女性はあまり積極的に来ておらず、ほとんどが男性であると、コジェノフは指摘する。

 昨今では、ウズベクからの出稼ぎはヨーロッパ、トルコ、中東に行くことを好む。そこでは給料が高いからだ。ロシアの給料は、タシケントのそれと変わらないと、サンクトペテルブルグのウズベキスタン民族文化自治会長のS.アブドゥラヒモフは言う。同氏によると、今日ウズベキスタンは非常に発展しており、給料はロシアと遜色ない。ロシアでは、ある事件の後、警察との関係が悪くなった。そして、下院議員でさえも、移民にはデメリットしかないと声高に言う人が多い。実際には、300万人近くが、5,000ルーブルの個人所得税を払っているのだが。これはロシアが移民だけで毎月150億ルーブルを稼いでいることになる。還付可能とされているが、実際には5%も還付されていない。個人所得税については、185日間働かなければならず、その後であれば還付を受ける権利があるが、登録が正しく行われていなかったり、給与が正しく支払われていなかったりするため、実際には還付されない。サウジアラビアは現在、100万人の移民を求めており、給与は1,500ドルで、他の経費はかからず、住居、食料、すべて与えられ、正味1,500ドルの収入を得られると、アブドゥラヒモフは言う。


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 先日もお伝えしたとおり、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが、いよいよ本日開幕する。

 フォーラムの華と言えば、投資契約の調印だ。毎回、合計でどれだけの成約があったかということが、事務局から発表される。こちらの記事によると、今年は過去最高レベルの6,000億ルーブルの成約が見込まれているということである。

 しかし、ロシアのこの手のフォーラムに関しては、「契約や覚書を結んでも、ちゃんと履行してるのか疑惑」というものがある。イベントを盛大に見せるために、見切り発車的に調印に踏み切っても、そのあとちゃんと取引が実行に移されているのか、疑問を禁じえないのである。個人的に、かつて日露投資フォーラムの日本側事務局を務める貿易促進団体に勤務していたので、身に覚えがある(笑)。

 それに関し、こちらで興味深い情報が伝えられた。これは、フォーラムで結ばれた契約全体ではなく、レニングラード州がかかわる投資プロジェクトの話ではあるが、A.ドロズデンコ・レニングラード州知事によると、過去5年間でレニングラード州がペテルブルグ・フォーラムで結んだ契約のうち、87.5%が実行されているということである。


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 こちらの記事によると、ロシアが中国と新たなガスパイプライン「シベリアの力2」の建設で合意できていないのは、中国側が国際価格よりも低いロシア国内価格での供給を要求しているからだという。元記事はFTだが、そちらは有料なので、ロシアの引用記事で我慢。

 FTが情報筋から得た情報によると、ロシアがシベリアの力2で中国と合意できていないのは、中国側が実質的にロシア国内市場と同等の価格での供給を求めているからである。また、パイプラインのキャパシティが年間500億立米と想定されている中で、中国側はその一部しか購入義務を負おうとしていないこともネックとなっている。

 FTによると、プーチンの訪中にはガスプロムのミレル社長が同行しておらず、これは近い将来に本件調印が期待できないことを物語っている。中国と本件につき本格的に交渉するならば、ミレルの同席は不可欠のはずである。

 FT記事が出た後、中国外務省報道官は、合意が遅れているのではないかとの記者の質問に、「相互に有益な接点を見つけ、利益のすり合わせを深め、相互の成功を達成する。これが両首脳の間で合意されたコンセンサスだ。中国は、この重要な合意を実現するためにロシアと協力する用意がある」と答えた。

 FT紙によると、シベリアの力2の合意は、プーチン大統領が習近平国家主席に示した3つの主要な要請のひとつであり、両首脳は北京での会談で本件につき話し合った。残りの2つは、中国の銀行のロシアでの活動を活発化させることと、中国がスイスで開催されるウクライナ会議に出席しないことであった。

 FTの取材に応じた専門家は、ロシアにはガス輸出の陸路代替ルートがないため、ガスプロムは中国の要求に応じざるを得ないと考えている。最新データによると、2030年までに中国の輸入ガス需要は2,500億立米に達する可能性がある(2023年は約1,700億立米)。


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 ロシア経済最大の祭典と言うべきサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが、6月5日から8日にかけて開催される。組織者となるロスコングレスのこちらのページで、その概要が伝えられている。

 大統領顧問で、フォーラム組織委員会の長を務めるA.コビャコフによると、現在、136の国と地域から17,100人の参加者と3,400人のメディア関係者がフォーラムへの参加を表明している。今日、同フォーラムは世界の発展における主権的な中心地の一つとして機能しており、世界のパワーバランスを維持し、多極的な国際システムを構築し、ロシアの国益が要請する統一的かつ建設的なアジェンダに基づく発展のための条件を確保するという、歴史的にユニークな使命を果たしている。

 フォーラムは本格的な国家開発機構となった。フォーラムへの参加率や関心度は、事前に設定されたレベルに達している。今日、実業界の活発度は、回復の期間は終わり、成長の期間に入ったと自信を持って言える。本年の指標が2019年のそれを上回ったことは、コミュニケーションツールとしてのフォーラムが世界のビジネス界から求められており、フォーラムへの関心が高まり続けていることを示していると、コビャコフは発言した。


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 こちらの記事によると、このほど、ウクライナ産の穀物の輸送ルートとして、ウクライナの広軌鉄道から、ルーマニアの欧州標準軌鉄道に積み替えるターミナルがオープンしたということである。穀物は、最終的にはルーマニア最大のコンスタンツァ港まで運ばれ、そこから輸出向けに船積みされる。

 記事によると、積み替えターミナルは、ウクライナとの国境に近いルーマニア・スチャヴァ県のドルネシティに開設された(上掲地図参照)。ヨーロッパ最大規模の穀物積み替えターミナルとなる。

 この施設の建設には、ルーマニアのグランペット・グループが約1,000万ユーロを投じた。 グランペット・グループの代表によると、このターミナルは年間300万トンの穀物を積み替えることができ、コンスタンツァ港への輸送ルートにおける要衝になるという。8両の貨車が同時に積み下ろし・荷積みできる。

 ターミナルの開設により、ルーマニアの道路輸送網への負荷が軽減され、輸送の安全性が確保される。このターミナルはまた、ウクライナの穀物がルーマニア市場に流入し、地元農家の商品と競合するのを防ぐのにも役立つと期待されている。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、アメリカンオールディーズを彩る名曲がまた一つNo.1ソングに輝いたので、これを取り上げねばなるまい。Dixie Cups - Chapel Of Loveがそれである。ニューオリンズの黒人女性グループが、レッドバード・レーベルから放った一曲。

その頃ソ連では
ベラルーシ共和国のT.ニジニコヴァ、N.トカチェンコにソ連国民アーティストの称号が授与される。

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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「『ロシア極東・シベリアを知るための70章』刊行に寄せて」です。よかったらご笑覧ください。また、上掲の動画は、この新刊の7つのセールスポイントを語ったものです。

極東・シベリアのセールスポイント

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 こちらの記事によると、このほど「ユーラシア格付機関」が事業を開始したということである。以下記事の骨子をまとめておく。

 独立の「ユーラシア格付機関」が設立され、業務を開始した。前ロシア中央銀行副総裁のA.トルシン氏がその社長に就任した。BRICS国際金融経済フォーラムにおいて、ユーラシア諸国民会議のA.ベリヤニノフ事務局長が発表した。

 プーチン・ロシア大統領が2023年5月、ユーラシア経済連合における成長する経済活動に対応した適切な評価ツールが利用可能となるよう、ユーラシア格付機関の設立を提唱していた経緯があった。

 現時点では、新機関のスタッフたちが、格付けの方法論に関する調整を進めているところである。ベリヤニノフによれば、このような機関の設立はむしろ遅すぎたくらいである。5年前に、ユーラシア経済空間内での投資についてより正しい評価を得たいという必要性を正しく捉えていれば、同機関は今ではこの地域の経済発展にとって不可欠なものとなっていたはずだった。国際的な格付機関による格付には、政治的な動機による意図的な偏りや歪みが見られる。

 ベリヤニノフによれば、格付けの範囲は金融・経済分野に限定されるものではなく、文化・教育機関の評価も含まれるべきである。「そうすれば、格付けはユーラシア地域のグローバルな発展の原動力となり、経済秩序と文明秩序の両方の主要因が考慮されることになる」と彼は締めくくった。


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 プーチン政権が、大統領選挙という山場を越えた時点で、税制改革、もっと言えば増税に踏み切るのではないかということは、事前に言われていた。そうした中、5月28日付のこちらの財務省プレスリリースによれば、財務省はこのほど政府に税制改革案を提示したということである。

 ロシア国民の関心事は個人所得税の累進課税化だろうが、個人的には企業への課税の方が気になるので、それだけ簡単にまとめておく。こちらの記事によると、企業利潤税が20%から25%に引き上げられるということである。

 また、こちらの記事は、地下資源採掘税をめぐる動きにつき伝えている。同税は、鉄鉱石で15%、塩化カリウムで130%、リン鉱石で100%引き上げられるということである。また、窒素肥料生産者が原料となる天然ガスを調達する際に、1,000立米当たり1,200ルーブルの物品税が導入される。

 要するに、ロシア政府は鉄鋼業や肥料産業にはまだ余力があり、搾り取る余地があると見ているわけである。


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 Wedge ONLINEに、「【現地ルポ】ウクライナの次はモルドバ? 平和に見えても、所々に潜む亀裂、現地から見た小国モルドバの“今”」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひどうぞ。


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 こちらに見るとおり、ウクライナ中央銀行が、最新の経済概況を発表した。この中で、最近のロシアによる攻撃で電力インフラが破壊されている問題への言及があるので、以下紹介したい。

 ウクライナ中銀によると、この春にはエネルギー部門を中心に重要なインフラ設備が破壊された。これらの設備を短期間ですべて復旧させることは不可能であり、既存の発電設備も計画的な修理が必要である。そのため、各地域で定期的な電力不足が発生し、当然ながら経済回復の妨げとなる。我々が2024年のウクライナの経済成長率見通しを3.6%から3.0%に下方修正したのは、まさにこのエネルギー部門の損失のためである、ということである。


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 こちらの記事によると、このほど中国鉄道はWeChatにおいて、中国~欧州諸国間のコンテナ鉄道輸送が、2016年から2023年にかけて10倍に拡大したとして、その成果を強調したということである。これは一帯一路の一環としてのいわゆる「中欧班列」の話であろう。現実には、経由国であるロシア・ベラルーシがEUとの関係を悪化させたあおりで、中国~EU間輸送は2022、2023年と利用が低下し、中国~ロシア間輸送の増大がそれを補っている形なのだが、一応記事を以下のとおり抄訳しておく。

 中国と欧州諸国間の鉄道コンテナ輸送量は、2016年から2023年にかけて10倍に伸び、2023年には運行本数が1.7万本に達した。中国鉄道がWeChatのポストで明らかにした。

 この間、輸送量は年率40%のペースで増大した。累計の運行本数は9万便に及ぶ。累計で870万TEUのコンテナが運ばれ、その総額は3,800億ドルとなる。

 中国鉄道によれば、ユーラシア空間の鉄道輸送は、安全で、安定し、切れ目なく行われている。その輸送量は常に拡大している。諸ルートの処理能力は拡大し、作業の質も向上している。中欧間の鉄道供給ルートはますます拡大し、これにより中国商品がEU市場に参入しやすくなっている。

 今後、中国経済が回復し、中国とヨーロッパ間の貿易が増加するにつれて、このルートの鉄道輸送の需要は引き続き堅調に推移すると、中国鉄道はコメントしている。

 中国税関によると、2023年、中国と欧州諸国(ロシアおよび非EU諸国を含む)との貿易総額は1兆2,100億ドルで、前年比1%減少した。2024年1~4月期は3,950億ドルで、前年同期比0.2%の減少であった。


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 ロシア・ウクライナ戦争勃発後、我が国で刊行された関連本の中で、最大の話題作と言っていいのが、松里公孝著『ウクライナ動乱:ソ連解体から露ウ戦争まで』(ちくま新書1739, 2023年, 512 ページ)ではないでしょうか。このほど私がその書評を執筆し、最新の『ロシア・東欧研究』に掲載されました。こちらから無料で閲覧可能ですので、よかったらどうぞ。


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 以前、「破産で再編を迫られる『エクスペルト』」という話題をお届けした。従来のビジネスモデルが行き詰って破産したため、再編して新たな形態の雑誌を出すという話だったのだが、その後、具体的な動きがないなと、個人的には受け止めていた。ところが、昨日職場の図書館に立ち寄ったところ、新装なった『エクスペルト』誌が開架されていたので、驚いた。

 『エクスペルト』のホームページが分かりにくくて、気付かなかったのだが、新装版の発行状況については、こちらのページで確認できることが判明した。以前は週刊誌だったが、どうも、月1回か2回の発行に変わったようである。図書館で現物に触れると、紙質や手触りなどもだいぶ変わっていた。

 しかも、驚いたことに、現時点では、すべての号が、PDF版を無料でダウンロードできるようになっている。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週チャート入りし、93位に着けているのが、Beach Boys - Don’t Worry Babyである。ビーチボーイズでも一二を争う超名曲だが、実はそんなに特大ヒットではなく、最高22位までしか上がらないので、もう取り上げてしまうことにする。後年出たCDでは、フェイドアウトが早すぎて不満が残るが、上で見るYouTubeの音源は(たぶん)オリジナル45から板おこししたたものなので、最後の「ウウウウ」までちゃんと聞こえて大変よろしい。

その頃ソ連では
1964年8月19日:ソ連電子機器国家委員会の指令により、モスクワにエレクトロニカ中央研究所が開設される。現在も存在し、ロステフ傘下。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年6月号のご案内。毎年5月号がロシア総論特集となっているのに対し、6月号はロシア以外のNISの特集。今回は、「脱・ロシア依存に向かうNIS経済」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部は、特集の枠内で「経済の脱ロシア依存を進めるモルドバ」という調査レポートを書き、「ウクライナのレミッタンス受入に生じている変調」という連載記事も。特集の枠外では、「ロシア農業の現場からの声」を執筆。

 今号は、表紙の写真も服部によるもので、4月のモルドバ出張で撮影してきた製菓会社ブクレアの直営店の風景です。


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ALROSA

 G7がロシア産のダイヤモンドの輸入を禁止する制裁を発動し、効果が注目されているところだが、そもそも石油などと比べるとダイヤモンドの輸出額や連邦財政への貢献度は桁違いに低く、それだけでロシア全体の屋台骨を揺るがすような性格のものではない。

 ただし、ロシアのダイヤモンド採掘の独占的企業として知られるアルロサ社のお膝元であるサハ共和国にとっては、事情が異なる。そして、こちらのリリースが、2023年にアルロサ社がサハ共和国財政に記録的な額の歳入をもたらしたということを伝えているので、以下要旨を整理しておく。

 2023年にアルロサは、サハ共和国の統合財政に、956億ルーブルの納入を行った。税金、義務的支払、配当、社会プログラムへの投資などから成る。2022年には528億ルーブルだったから、67%増ということになる。

 アルロサによる納入は、サハ共和国の統合財政の独自歳入の32%を占めた。大企業からの納入分に対しては、58%という比率となる。

 956億ルーブルのうち、税金の納入は790億ルーブルであり、過去最高となった。主なものは、地下資源採掘税の390億ルーブル(前年比75%増)、利潤税200億ルーブル(同36%増)、個人所得税の天引き分が79億ルーブル(同16%増)だった。

 アルロサはサハ共和国のミールヌィ市に登記され、主な子会社と生産企業もサハ共和国内にある。それゆえ、アルロサの納税の4分の3は連邦ではなくサハ共和国と各郡に納入される。

 また、アルロサの株式の3分の1ほどをサハ共和国が、別の3分の1を共和国の8つの郡が保有しているので、サハ共和国の財政には配当ももたらされる。2023年上半期終了時に、90億ルーブルの配当がサハ共和国の統合財政に支払われた。


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 寒冷国のロシアの場合、地球温暖化を、絶対に阻止しなければならない悪夢というよりは、「悪いことばかりではない」と捉える傾向がある。こちらの記事によると、今般モスクワで開かれた会議で、気候変動がロシア諸地域の発展にとって及ぼす影響につき意見が交わされたということである。以下、記事をざっと抄訳しておく。

 講演者たちは、今日、人間が環境に与える影響は地球的な規模に達しており、生態系のあらゆる領域に影響を及ぼしていると指摘した。

 鉱業に関しては、地球温暖化の両面の影響が見られるという。一方では、気候変動は、操業停止時間の短縮、屋外での作業条件の改善、暖房によるエネルギー消費の削減につながる可能性がある。他方、気候変動の結果、ガス生産量の減少、鉱山での作業の危険性の増大、石油ガス施設・金属構造物・ダムに対する脅威の増大などのリスクが増大する。

 温暖化がもたらすプラスとマイナスの影響は、運輸業、農業、林業、建設業、住宅産業、公共事業でも同様であると専門家は指摘する。

 専門家は、地域の環境問題を解決するために、例えば、牧草地が枯れてしまうまでの間、播種された牧草地を拡大して緑の飼料として利用すること、高度なモニタリング技術を応用して火災対策を行うこと、温度変化に強い素材を使った新しい設計を導入することなどを提案している。

 温暖化はロシアの人的資本と経済発展に深甚な影響を及ぼすため、気候変動への各地域の適応プログラムを策定し、気候変動の影響に関する政府、企業、公的機関スタッフの知識レベルを向上させ、気候変動への適応のための最善の解決策と技術を用意する必要がある。

 専門家たちは、環境プロジェクトは赤字になるのではなく、逆に様々なビジネス部門にとって有益であることを強調している。「環境・気候プロジェクトは、企業や地域にとって大きな経済効果をもたらす」と、ロシア経済大学のYe.スダリコヴァは言う。

 会議ではまた、電気自動車へのシフトや二酸化炭素排出量削減活動を奨励し、適切なリサイクルが持続可能性の鍵であることが報告され、宇宙から温室効果ガスを監視する技術についも説明があった。


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