ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週1位にDean Martin - Everybody Loves Somebodyとあるが、個人的にはすぐメロディーが浮かばなかった。YouTubeで再生してみたら、あああの曲かと思い出したが。元々はフランク・シナトラのあまり売れなかった持ち歌らしいが、シナトラ所有のリプリーズ・レコード所属のディーン・マーチンに歌わせて、上手くリサイクルできた形か。

その頃ソ連では
1964年8月9日:ソ連国際連合代表部、7月25日に米州機構加盟国外相会議で採択された反キューバの諸決定に関するソ連政府の声明を国連安全保障理事会議長に送付。

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 こちらの記事によると、ウクライナのT.カチカ経済次官(通商代表)が、2024年上半期のウクライナの貿易動向につき語ったということなので、それを整理しておく。

 カチカ次官によれば、2024年上半期のウクライナの商品輸出額は195億ドルであり、これはかなり低い数字であり、外貨収入は今のところ芳しくない。他方、上半期の輸入額は330億ドルだった。かくして、上半期の貿易収支は135億ドルの赤字で、毎月20億ドル強の赤字を出していることになる。これは通商代表を務める私にとっては悪い実績だ。貿易をバランスさせることが重要であり、赤字を避けつつ、貿易を拡大するようにしたい。カチカ次官は以上のように述べた。


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 意味があるのかないのか良く分からないが、ロシア財務省から毎月発表される連邦財政の執行状況をもとにグラフを更新する作業を続けており、こちらに見るとおり今般7月までの数字が出たので、上掲のとおりグラフを更新した。グラフはクリック・タップで拡大。まあ、あまり目立った変動はなく、7月には単月で若干赤字になった程度である。

 1~7月の累計では、歳入が19.7兆ルーブル(うち石油・ガス歳入が6.8兆ルーブル、非石油・ガス歳入が13.0兆ルーブル)、歳出が21.1兆ルーブル、収支は1.4兆ルーブルの赤字で対GDP比0.7%だった。


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URA

 中国と欧州間を鉄道コンテナ輸送で結ぶ「中欧班列」に関しては、このブログで何度も取り上げてきた。ウクライナ戦争で欧州の顧客がロシア・ベラルーシ領経由のルートを敬遠し、中国⇔欧州間のトランジット輸送は低下したものの、中国⇔ロシア間の貨物が増加しているため、中欧班列全体としては貨物量が維持されているというのが、全体像だった。ただし、昨年暮れから中東情勢に関連して海上運賃が高騰に転じており、中欧班列の競争力が高まったため、中国⇔欧州間のトランジット輸送も盛り返しつつある。

 上図は、ユーラシア鉄道アライアンス(カザフスタン・ロシア・ベラルーシによる合弁企業)による中国⇔欧州間のトランジット輸送量の月別推移であり、そのあたりの動向が見て取れるはずである。ちなみに、2024年上半期には18万9,036TEUがトランジット輸送され(前年比57.5%増)、うち西航が16万2,858TEU(104.4%増)、東航が2万5,168TEU(35.1%減)であった。

 さて、関連して、こちらのサイトでA.ベズボロドフという専門家が中欧班列のトランジット輸送の動向につき論じているので、以下抄訳しておく。

 中欧班列輸送量の急成長は2023年9月に始まり、2024年3月にはすでに取扱量が10万TEUを超えた。ベラルーシの中国向け肥料輸出のコンテナ輸送が、このようなダイナミックな成長の主な原動力となっている。肥料のコンテナ輸送は3月にピークを迎え(3万8,000TEU)、過去2ヵ月は一貫して高水準(3万6,000TEU)を維持している。さらに、ロシアを経由する中国⇔欧州間の鉄道輸送は、特に主にカザフスタンとベラルーシを経由する最短ルートでの輸送は、紅海での緊張の高まりを受け、今年も積極的に利用されている。

 国の交通システムにおけるトランジットの役割を公平に評価するためには、トランジットとは何か、なぜそれが必要なのかを原則的に定義する必要がある。トランジットとは、余剰能力を必要とする他者に販売することである。特別軍事作戦開始後、制裁はトランジットそのものは対象としなかったが、それでもトランジットは減少した。まず第一に、ロシアが余剰能力を売却することが不可能になったことが挙げられる。ロシア鉄道東部管区の大規模な再開発、物流全体の変化、西から東への転換、総じて物流システム全体の再構築が見られる。ユーラシア諸国⇔中国間の輸送も含む中欧班列の輸送量は、2024年通年でに合計120万~130万TEUに達するだろう。これは2021年の記録を更新することになるが、ベラルーシの肥料の中国向け割引輸送が主な役割を果たすこのようなトランジットからの収入は、中国⇔EUという従来のトランジットからの収入よりも少ない。

 ロシア鉄道東部管区の近代化が完了すれば、ロシア鉄道とロシアの運行各社が得た技術と能力をどのように活用するかという問題が生じる。新たな市場を開拓するという課題も生じるだろう。今日、日本と韓国の対EU貿易全体は、年間200万TEUである。ワニノにバム鉄道用のターミナルをゼロから建設し、シベリア鉄道やバムにアクセスできる沿海地方の港をいくつか拡張すれば、3年以内にこの量のほとんどすべてをロシアの鉄道に誘致することが可能になる。技術的にはすでに準備は整っており、EUの補助金を得ようと躍起になっているポーランドでさえ、過去数年間、ロシアを通過する中国製品の主要ゲートウェイであったマラシェヴィツェ国境鉄道の拡張に予算を割り当てている。しかし、結果を出すためには、政治的な正常化が必要であることは言うまでもない。

 政治家たちは、交通というのは国家にとって非常に有利な事業であると理解している。一方で、トランジットにはそれなりの準備が必要だ。自国内で質の高い輸送サービスの選択肢をすべて提供する能力が100%なければ、トランジットサービスを売ることはできない。

 旧ソ連の領域でトランジット・サービスを提供できるのは、コンテナ輸送と鉄道管理の能力をそれなりに持っている2カ国、ロシアとカザフスタンだけである。それ以外の国々は、トルコ、アゼルバイジャンからトルクメニスタン、アルメニアに至るまで、いくらトランジットに従事する用意があると宣言しても、残念ながら、最も基本的な責務である自国企業のための安価な物流を提供することすらまだできない。


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 ロイターがこちらで伝えているとおり、S&Pは8月2日、ウクライナの信用格付けを「選択的デフォルト(債務不履行)」に引き下げた。ウクライナが大規模な債務再編の最終段階に着手する中、外国債券の支払いを期日に行わなかったことを受けたもの。3,400万ドル相当の利払いが、1日に期限を迎えた。10日間の支払猶予期間内であるものの、ゼレンスキー大統領が債務再編が完了するまで債務返済停止を可能にする法律に署名したことを踏まえ、支払いが行われる可能性はほぼないとS&Pは判断した。S&Pは債務再編が実施されれば、ウクライナの格付けをいったんデフォルトに引き下げた上で、新たな条件などに応じてCCCかBに引き上げる可能性があるとしている。2022年のロシアによる侵攻前はウクライナの格付けはBだった。

 さて、ウクライナ債務問題の全体像を分かりやすく示したような図解資料などがないかと思って探したのだが、見付かったのはロシア・タス通信のこちらの図解資料くらいだった。ウクライナ事情をロシアメディアでフォローするのはあまりよろしくないが、まあ差し当たりこれを参照しておくことにする。

 この資料は主に上図のとおりウクライナの国家債務残高の対GDP比の推移を見たものである。2024年5月31日現在で債務残高は1,431.5億ドルであり、対GDP比は94%となっている。ただし、意外にも、ロシアによる全面軍事侵攻が始まって以降、激増したという感じにはなっていない。債務残高の内訳は、対外債務が1,027.5億ドル、対内債務が404億ドルである。

 債権者の主な内訳は下に見るとおり。なお、私の理解によれば、ここに米国の名が登場しないのは、米国の対ウクライナ支援が融資ではなく無償援助だからだろう。

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 欧米からウクライナに供与される戦闘機F-16がウクライナに届けられたという情報が伝えられているが、こちらの記事の中でロシアのD.スースロフ氏という専門家が本件につき論評しているので、以下要旨を整理しておく。スースロフ氏は、高等経済学院欧州・国際複合研究センターの副所長で、かつヴァルダイ・クラブのフェローを務める。

 スースロフ氏いわく、F-16は、破壊される可能性を最小限にするため、ウクライナの西部地域に保管されるだろう。ロシアはもちろんF-16を探し始めるだろう。F-16の損失はウクライナと西側諸国にとって非常に悪い評判となるため、F-16の損失を最小限に抑えるために、できるだけ前線から離れた場所に保管することになるだろう。ウクライナにF-16が納入されても、質的な変化にはつながらない。受け取る戦闘機の数が少なく、配備する場所も難しいため、戦場の戦力バランスが変わることはない。F-16は、防空の手段として、またロシアの陣地に対する長距離攻撃の手段として使用されるだろう。F-16譲渡の決定は以前に下されたため、配備によりロシアと欧米の関係が影響を受けることはない。ただし、エスカレーションのリスクは高まり、ロシアとNATOの直接的な軍事衝突に一歩近付いた。ウクライナに譲渡されたF-16が、NATO加盟国の飛行場にも配置される可能性があるため、紛争がエスカレートするリスクが高まる。F-16が核兵器の運搬機でもあることから、ロシアとしてはF-16と一緒にウクライナに核兵器が譲渡される可能性につき提起することになるだろう。スースロフは以上のようにコメントした。


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 2024年4月29日付の英エコノミスト誌に、興味深いグラフが掲載されていた。ロシアが軍需産業を稼働させる上で必要な重要物資、工作機械、半導体等々を、どこから輸入しているかを図示したものである。なお、単位は取引件数ということであり、当然1取引で複数個を輸入しているケースはあるということである。元データは、米国の戦略国際問題研究所ということである。ただし、2023年7月で止まってしまっているのが惜しいのと、2023年2月以前の数字が不自然という気がしないでもない。いずれにしても、現状でロシアが中国から重要物資を調達して軍需産業を回している構図は、見て取れる。

 関連して、こちらの記事によると、7月にブリンケン米国務長官は、ロシアの軍需産業を主に支えているのは中国からの供給であり、ロシアは工作機械の70%、マイクロエレクトロニクス製品の90%を中国から輸入していると指摘した。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 今週は、夏らしく、ラテン風味溢れる Drifters - Under The Boardwalk を聴いてみようか。メンバー交代を繰り返しながら長く活躍してきたグループだが、ベスト10ヒットはこれが最後だったようだ。ちなみに、個人的には2000年頃にロンドンに遊びに行った時に、ウィンブルドン劇場というところで「ドリフターズ・コンサート」という催しがあるのを知り、半信半疑で出かけた思い出がある。若いあんちゃんたちが、「ハ~イ、僕たちドリフターズです」と元気よく出てきて、確かにドリフターズの持ち歌を歌ってはいたのだが、「お前ら偽物ちゃうんか」という疑念は最後まで晴れなかった。

その頃ソ連では
1964年8月2日:ソ連の同盟国、北ベトナムが米駆逐艦に魚雷を発射したとされるいわゆるトンキン湾事件発生。実は米側の偽旗作戦だったが、これがベトナム戦争へと繋がっていく。

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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「沿ドニエストルの障子に目あり」です。よかったらご笑覧ください。


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 先日、「カホフカダム決壊から1年 再建には異論も」という話題をお伝えした。その問題に関しては、ウクライナ水力発電公社のI.シロタ総裁も、最新のこちらのインタビュー記事の中で、(職務上、当然のことながら)再建は絶対に必要という考えを示している。

 さて、このインタビュー記事の中で、注目されたのは、総裁が、以前から計画されていたカニウ揚水式発電所を、地下に建設することによって、ロシアの攻撃に備えたいとの考えを示したことである。地下に発電所を建設するなどと聞くと、だいぶ突飛に聞こえるが、揚水式発電所の場合には、むしろよくあることのようだ。総裁によると、ロシアによる全面軍事侵攻開始後、ウクライナの水力発電施設は120回も攻撃を受けており、カホフカダムの決壊という大惨事も起きた。そこで、攻撃するのが不可能な地下の発電インフラとして、地下揚水式発電所を有望視しているということのようだ。


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 こちらの記事によると、ロシアなど5ヵ国で結成する経済同盟の「ユーラシア経済連合」は近く、インドと自由貿易協定(FTA)を結ぶ見通しということである。

 記事によれば、このほどインド輸出業者連盟のトップであるサハイ氏が、インド・ユーラシア経済連合間のFTAの見通しについて語った。FTAは、関係国政府の尽力により、短期間で締結される可能性がある。インド政府はすでにユーラシア側5ヵ国の政府との交渉を開始している。通常、こうした交渉には長期間を要するものだが、最高指導部の意向次第では迅速な合意も可能だ。90%の問題は事務レベルの交渉で決まるが、10%の重大な問題は最高指導部が決める。サハイ氏は以上のように述べた。


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1906

 具体的な証拠があるわけではないが、おそらくロシア側の破壊により、ドニプロ川下流のカホフカダムが決壊したのは、2023年6月6日のことだった。それから1年あまりが経過した。

 個人的なことだが、最近、英エコノミスト電子版の購読を始め、同誌にカホフカダムの再建問題に関する興味深い記事があった。それによると、周辺地域の灌漑用水が失われるなど、確かにダム破壊は多大な問題を引き起こした。

 しかし、記事によると、環境活動家などの間には、ダムを再建すべきでないとの意見もあるという。そもそも、ドニプロ下流にユニークな環境が広がっていたところに、ソ連当局がダムを建設したこと自体が、間違いであった。昨年のダム破壊後、自然は驚くべき回復力を示しており、このまま手を付けなければ、3~5年以内に森林、葦原、浅い湖からなる「モザイクの風景」が形成されるとして、彼らはダム再建に異論を唱えている。


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 ロシアとウクライナの戦争は、「非対称戦争」だなということを感じるわけである。国家・経済・人口の規模は、ロシアの方がかなり大きい。黒海という海域一つとっても、2014年以降、ウクライナは海軍戦力らしきものは持ち合わせず、栄光のセヴァストーポリ港を拠点とする黒海艦隊を有するロシアに敵うはずはないと思われた。ところが、昨日の穀物輸送の話でも述べたが、ウクライナの手作り水中ドローンがかなり効果を発揮し、これ以上損害を出したくないロシアは、黒海艦隊を東方のノヴォロシースク方面に退避させ、結果ロシアが黒海西部の制海権を握る状況ではなくなっている。

 それに関連して、興味深かったのは、こちらの記事である。ロシアは、自爆したウクライナの水中ドローンの断片をかき集め、それを模倣して、自らもウクライナを攻撃するための水中ドローンを生産しようとしているというのである。

 しかし、記事によれば、そもそもウクライナ側は人間が乗るような艦船は持ち合わせていないわけだから、仮にロシアがウクライナを模倣して水中ドローンを手に入れても、ターゲットとするウクライナの標的が存在しない。ロシアによる水中ドローン模倣作戦は、少なくとも現状ではまったく的外れであり、資源の無駄遣いであると、記事では指摘している。

 ウクライナ側には水中ドローンで攻撃すべきターゲットがあるが、ロシア側にはそれは存在しない。やはり、非対称戦争だなとの思いを、強くするわけである。


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 私は、ウクライナの穀物輸出ルートの問題をずっと追ってきたわけだが、戦時下の状況に関しては、断片的なデータが飛び交うばかりであり、網羅的なデータにはなかなかお目にかかれなかった。

 そうした中で、今般見付けたのは、ウクライナの経済戦略センターというところが定期的にとりまとめているらしいグラフである。こちらのフェイスブックページに、2024年6月までのルート別穀物・採油作物輸出量の最新版が出ていたので、凡例に日本語をかぶせ、上掲のとおりご紹介することにする。

 いやホント、個人的にここまで全体像が良く分かる資料というのは、初めて見た。要するに、元々ウクライナの穀物輸出は圧倒的に黒海港湾(大オデーサ港およびミコライウ港)からが多かった。それが、ロシアの侵攻開始でストップし、従来はマイナーな存在であったドナウ川港湾にシフトしたものの、それにも限界があった。また、鉄道およびトラックという陸路で周辺の中東欧諸国にウクライナ産食品が溢れ、軋轢を生むことにもなった。その状況を見かね、国連およびトルコの仲介により黒海穀物イニシアティブが成立、2022年8月から黒海港湾経由輸出が復活したものの、その合意も2023年7月にロシアが握り潰し、黒海港湾輸出は再び暗礁に乗り上げる。しかし、その頃にはウクライナのドローン攻撃でロシア海軍による脅威が後退し、ウクライナは独自の黒海輸送路を開設、ウクライナはロシアの協力を得ずとも大オデーサ港から食料を輸出できるようになって(鉄鋼・鉄鉱石の海路輸出も復活)、現在に至るというわけである。まあ、その構図自体は知られていたが、それをここまで具体的に図示した資料は貴重である(欲を言えば各項目のデータラベルを付けてくれれば…)。


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0726

 Wedge ONLINEに、「【インドの銀行に死蔵?】ロシアが石油を輸出しても収入は懐に入らず、戦費調達へなされたスキーム」と題する論考を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、順当に行けばこの週1位になったビートルズのA Hard Day's Nightを取り上げるべきなのだろうけど、そんな誰もが知る曲をシェアしても面白みはない。むしろ40位にThe Beatles - Ain't She Sweetという見慣れない曲が入っているのが気になった。調べてみたところ、ドラムがまだピート・ベストだった時代の1961年に録音されたカバー曲で、それがこの年のビートルズ・ブームにあやかって便乗的に発売されたらしい。ビートルズのオリジナルアルバムには収録されていないので、個人的には音源を持っていなかった。後にアンソロジーに収録されたとのことだが、自分はアンソロジーは持っておらず、これは盲点だった。

その頃ソ連では
1964年8月19日:中央研究所「エレクトロニカ」の創設に関するソ連電子機器委員会指令。

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0726

 こちらのページに見るとおり、ロシア統計局が2024年上半期(1~6月期)の鉱工業生産統計を発表したので、軽くご紹介。

 2024年上半期のロシア鉱工業生産は、前年同期比4.4%増だった。引き続き、鉱業が0.3%減と振るわない一方、製造業が8.0%と好調となっている。

 振るわない鉱業では、石炭採掘業3.0%減、金属鉱石1.0%増と発表されているが、石油および天然ガスは非公開となっている。

 製造業の主要部門では、食品4.8%増、製紙5.5%増、石油精製等4.4%減、化学1.6%増、医薬品11.4%増、ゴム・プラスチック0.4%増、冶金1.2%減、電気機械2.5%増、機械・設備18.6%減、自動車等19.7%と、まだら模様。

 そうした中、やはり急成長しているのが軍需関連で、「他のグループに含まれない金属加工製品」(弾薬などはここに含まれる)53.2%増、コンピュータ・電子・光学機器35.0%、航空・宇宙機器30.2%増、「他のグループに含まれない自動車以外の輸送機器」(戦車、艦船などはここに含まれる)33.5%増と、急激な拡大が続いている。


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 これは日本の報道などでも話題になっていたので、取り上げることにした。と言っても、グラフをお見せする程度だが。キーウ国際社会学研究所のこちらのページに、領土の譲歩に関するウクライナ国民の最新意識調査が出ているので、以前作成したグラフを更新してお目にかける。

 より正確に言うと、「ウクライナは、そのために戦争が長引き、独立喪失の脅威が生じたとしても、自国の領土を絶対に譲歩すべきではない」、「ウクライナは、速やかな和平と独立保持のために、自国の領土の一部を譲歩しうる」という二択の設問になっている。上図のとおり、昨年暮れ頃から譲歩論がじわりと広がり始め、最新の5月の調査では32%に達した。


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 こちらに見るとおり、今般のロシアのツァルィグラドというメディアが、スイス系ネスレがロシア工場におけるキットカットの生産を再開することを計画中と伝えた。なお、ネスレは2022年3月にロシアからの撤退を表明し、それ以降、キットカットの代わりに「グッドミックス」が、ネスクイックの代わりに「フルトカ」が生産されてきた。

 しかし、こちらの記事に見るとおり、ネスレ社はロシアにおけるネスレブランド商品の生産再開という報道を否定している。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年8月号のご案内。8月号は、「ロシア・NIS貿易と物流ルートの再構築」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今回は私は完全に脇役で、「東方シフト2.0の行き着く先は?」、「占領されているのはウクライナ領土の17.57%」という短い連載記事のみ書きました。服部倫卓・吉田睦編著『ロシア極東・シベリアを知るための70章』の書評も掲載していただきました。


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 ロシア鉄鋼大手の一角「エヴラズ」社は、北米に生産子会社を有している。ウクライナ侵攻後、その身売りを表明したが、こちらの記事が、売却が難航しているということを伝えている。

 エヴラズの北米子会社Evraz North Americaは鉄鋼業の垂直統合会社で、米国・カナダの鉄道、電力、産業、建設市場をターゲットに事業を行っている。その年間生産能力は、粗鋼230万t、完成鋼材350万tである。2箇所の電炉工場、4箇所の圧延工場、8箇所の鋼管工場、くず鉄回収業から成る。

 2022年8月、エヴラズは北米子会社売却の意向を表明した。しかし、北米子会社の2023年年次報告書によると、売却は難航しており、不透明感が残っているという。売却手続きのためのゼネラルライセンスを交付されているものの、その延長が必要となっている。


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 こちらの記事によると、2023/24年度の実績で、ロシアが世界の小麦輸出の4分の1を占めたということである。

 国際穀物理事会がデータを発表した。2023/24年度にロシアは5,530万tの小麦を輸出し、これは世界全体の輸出量の26.1%に相当した。ロシアの世界シェアは昨年度は23.1%で、従来の最高記録は2017/18年度の23.4%であった。

 2023/24年度の世界全体の輸出量は2億1,170万tであった。ロシアに次ぐ2位はEUの3,530万t、3位はカナダの2,500万tであった。


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 こちらの記事によると、現在ウクライナやルーマニアなどの黒海沿岸地域では気温が40℃を超えるような強烈な熱波が発生しており、作物に深刻な被害が出ている。

 記事によれば、ルーマニア政府は本年、農家、特にトウモロコシとヒマワリの栽培農家に対して、5億ユーロの補償を検討しており、一部はEUから支給される。それに対し、戦時下3年目のウクライナには、そのような手段はない。代表的な事業者のカーネルは、この暑さが8万ヘクタールに作付されたトウモロコシの一部を駄目にしていることを明らかにしている。ウクライナの気象当局は、この熱波によってトウモロコシの収穫量が30%も減少すると予想、「この暑さに耐えられる穀物栽培方法はない」とコメントしている。とうもろこしの生産量が落ち込むと、備蓄が打撃を受け、国際的に飼料コストが高騰する可能性がある。アフリカへの穀物輸出を含め、食料安全保障に対する広範なリスクが露呈することになる。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週の48位には、Ventures - Walk--Don’t Run ’64がチャートインしている。1960年のヒット曲を、ヴェンチャーズ自らがリメイクしたもの。先走って言うと、この64年版は最終的に8位まで上がるのだけど、何でも同じバンドが同一曲をリメイクして、両方ともベスト10に入れたのは、これが史上初めてだったらしい。

その頃ソ連では
1964年7月19日:ソ連・東ドイツ友好条約(1964年6月12日締結)に関する米・英・仏の声明に対し、ソ連が反論声明。

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 時々取り上げるが、ロシアの自然独占問題研究所のこちらのページに、2024年第2四半期および上半期のロシア港湾貨物取扱量の概況が出たので、拝見することにする。

 戦争が始まる前の2021年の貨物量を100として、同研究所の発表にもとづき、その後の推移を私が跡付けてグラフ化したのが、上図となる。開戦後、欧米との物流ゲートウェイであるバルト海の港湾が麻痺し、それに比べ(キャパシティ不足で期待ほどは伸びていないにせよ)極東港湾の貨物量が上向き、私などはこれを貨物の東方シフトの表れだろうと受け取った。しかし、2024年上半期には、奇妙な再逆転現象が生じた。バルト海が力強く盛り返し、他の海域が落ち込んだため、現時点でバルト海が開戦前夜と比べて最も輸送水準が高いということになってしまったのである。

 この現象に関し、仮説を述べておけば、ロシアのバルト海港湾は肥料の輸出窓口になっているので、好調な肥料輸出がバルト海を押し上げたという要因はあったはずである。その他、バルト海港湾の石油製品、LNG、コンテナの取り扱いも増えている。一方、極東港湾は半分が石炭輸出という世界なので、石炭輸出の不振が響いているものと見られる。

 2024年上半期のロシアの港湾による取扱貨物量は前年同期比1.0%減だったが、貨物の種類別に増減を見ると、以下のとおりとなる。

  • 肥料:28.1%増
  • 穀物:11.0%増
  • コンテナ:10.9%増
  • LNG:3.2%増
  • 石油製品:1.7%増
  • 鉱石:1.1%減
  • 原油:1.5%減
  • 石炭:11.2%減
  • 鉄鋼:13.7%減

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Gazprom

 ウクライナ侵攻開始後、ロシアはまともに貿易統計を発表しなくなったので、たとえばロシアから欧州向けの天然ガス供給が激減していることは明らかだが、なかなかそれを具体的に示すデータは得られない。

 ロシア(ガスプロムのと言い換えても同じ)の天然ガス輸出動向に関し、私がデータを色々探してみた範囲内で、一番説得的だったのが、フィリップ・ルドニクという人の書いたこちらのコラムの中に出てくるグラフだった。上図は、その図を転載させていただいたものである。

 これが石油であれば、欧州に売れなくなった分をタンカーでインド等に回すことが可能で、ロシアの石油輸出量は落ち込んではいない。それに対し、パイプラインで運ぶしかない天然ガスはそうした転換が至難であり、欧州への供給が減った分、そのまま輸出総量の激減に繋がっている構図が確認できる(2023年のデータは著者の推計ではあるが)。

 なお、このデータは、ロシアが言うところの「遠い外国」だけの輸出量であり、バルト三国を含む旧ソ連向け供給は除外されている。


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 こちらのページに見るように、ロシアのアフトスタットという自動車市場調査会社が、2024年上半期のロシアの乗用車(新車)販売動向を発表したので、軽くご紹介。元の表はゴチャゴチャして分かりにくいので、重要なところだけ切り抜いて整形したのが上表。

 アフトスタットによると、2024年上半期の新車販売は71.9万台で、前年同期比79.1%増と、顕著に回復した。ウクライナ侵攻後のパターンとして、ロシアブランドと中国ブランドの独壇場と化しており、ブランド別ランキングは、ロシア系のLADA:20.7万台がトップ、あとの上位は中国系ばかりで、HAVAL:8.1万台、CHERY:7.1万台、GEELY:6.9万台、CHANGAN:4.9万台と続く。


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yena

 ウクライナ・ドネツク州のエナキエヴェ(ロシア語読みではエナキエヴォ)は、早くも2014年以降のドンバス紛争で親露派側に占領された。同市の中核企業であるエナキエヴェ冶金工場は、2020年から操業を停止していた。ところが、こちらの記事によると、占領側のロシアは、この製鉄所での高炉生産を再開しようとしている。

 記事によると、プーチン大統領は7月15日、リモート形式で、ロシアの一連の鉄鋼関連事業所の開所式に立ち会った。これは7月21日がロシアで冶金産業の日に指定されていることにちなんだものである。そして、今回操業開始を遂げた一連の事業所の中に、自称「ドネツク人民共和国」に所在するエナキエヴェ冶金工場の第5高炉も含まれていた。

 プーチン大統領は、エナキエヴェの高炉生産により年間100万t以上の粗鋼生産が可能になり、同工場では4,500人もが働いており、2023年の両人民共和国における冶金生産は前年比30%伸びたなどと指摘した。


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ac

 こちらの記事によると、Anderida Financial Groupというところのアンケート調査により、ロシアの現金離れが明らかになったということである。

 Anderida Financial Groupが18歳以上のロシア市民1,680人を対象にアンケート調査を実施したところ、70%の回答者が、家から出かける時に通常は現金を持ち歩かず、キャッシュレスの支払手段を選んでいると回答した。キャッシュレス派の比率は、2020年から倍増した。

 現金を持ち歩く人の間では、500ルーブル未満が12%、500~1,000ルーブルが25%、1,000~3,000ルーブルが33%だった。つまり、キャッシュレスが圧倒的になり、仮に現金で支払うにしても乗り合いタクシーや手渡し販売などのごく限られたケースで、500ルーブル以下の場合がほとんどであり、少額を「念のために」に持っているにすぎない、ということである。

 ちなみに、日本に関しては、こちらの記事が目に留まった。日本では、財布を持ち歩かないという人は、まだ24.9%に留まるということである。


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 こちらのページに見るとおり、このほどロシア財務省が2024年上半期の連邦財政執行状況を発表した。日本からはVPNを通じないとアクセスできず、困っている方もいるかもしれないので、お目にかける次第。

 2024年1~6月の連邦財政は、歳入が17.1兆ルーブル(うち石油・ガス歳入が5.7兆ルーブル、非石油・ガス歳入が11.4兆ルーブル)、歳出が18.0兆ルーブル、財政収支は0.9兆ルーブルで対GDP比-0.5%だった。

 下図は私が定番で作成している月別の図で、こうやって見てもロシア財政動向に大きな乱れは見られない。

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