ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 こちらの記事が、プーチン新大統領の下で形成されるであろう内閣の陣容についての動きと観測を掲げているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。

 それによれば、D.コザク副首相を中心とする作業グループが大統領選後の政府の構造についての素案作成作業を今週終え、クレムリン(つまりメドヴェージェフ・サイドということか?)に提出した。来週には人事も話し合われるという。この案につきもしもクレムリンの承諾が得られれば、政府からは経済部門別の副首相たちはいなくなる。また、経済分野では、投資誘致省という省が新設される。国税局も、独立の省になることを狙っている。ただし、政府の構造に関してはいくつかの案があり、5月にならないと具体的なことは分からないという。

 今回の案による最大の変更は、副首相の数を8人から5人に削減することであり、これはプーチン首相以前の政府に戻ることを実質的に意味する。2008年にプーチンが首相に就任した際に、副首相が5人から7人に増員され、2010年にA.フロポニン大統領全権代表も副首相に加わった経緯がある。

 プーチン内閣ではA.クドリンが副首相と蔵相を兼務していたが、副首相と省の大臣の兼務というやり方は上手く行かなかった。大統領府では、新政府では主要分野を担当する第一副首相を数人置くことを検討している。

 コザク案でほぼ現状のまま残るのは経済発展省(新しい機能を加える可能性はある)と財務省で、経済分野ではこれに投資誘致省が加わることになっている。ただ、これはA.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官が推しているものだが、権限が狭すぎて実現しそうもないという指摘もある。国税局も独自の省になることを目指しているが、これは一連の案の中には示されておらず、おそらく国税側が国のトップたちに直訴する形になりそう。

 地域発展省、運輸省、通信省は現状維持のままとなりそうとのことである。地域発展省を民族問題省と建設省に分割するという案も以前にあったが、承認されなかった。一方、政府に近い情報筋によれば、地域発展省はやはり分割される可能性があるという。地域発展省はコザク大臣の時代に建設行政、住宅・公営事業、地域政策、民族問題、在外同胞支援と分野を広げすぎ、仕事をこなしきれなくなっていたので、建設と住宅・公営事業をそれぞれ管轄する省または連邦庁が新設される可能性があるという。

 経済部門別の副首相を廃止して機能別の副首相だけの体制にするということが提案されているが、これについて政治工学センターのI.ブーニン所長は、そのアイディアは以前からあるが、結局は部門別になってしまう、と指摘している。ブーニンによれば、もう一つのポイントは、メドヴェージェフとセーチンの関係であり、メドヴェージェフはセーチンを部門(エネルギー)担当の副首相にしたくないから部門別の体制を廃しようとしているのだという。

 ペテルブルグ政治財団のM.ヴィノグラドフ理事長が指摘しているとおり、副首相の数の削減というのは、新政府が形成されるたびに叫ばれる。2004年には、各大臣が副首相に匹敵する政治的存在になると想定されたので、副首相そのものは1人だけになった。しかし、人事異動があるたびに、副首相を設けて問題を解決しようとするので、その分、大臣の地位が侵食される。副首相というステータスに相当する人物が他機関からどれだけ内閣に入るか、そしてその人物たちと新首相の関係がどのようなものなのかによって、決まってくるだろうと、ヴィノグラドフは指摘した。

 こちらのサイトで、タチヤナ・マニョーノクというベラルーシ人の専門家が、ベラルーシの側から見た関税同盟/共通経済空間とWTOの問題、両者の整合性につき論じているので、抄訳しておく。

 ロシアのWTO加盟は、その面で大きく遅れをとっているベラルーシにとって、深刻な問題を引き起こす。ロシアのWTO加盟が、中長期的に多くの品目での関税障壁を低めることは明らかである。ロシアが加盟に際して関税障壁の一定の水準に合意した以上、今後ベラルーシは自らの関税率をロシアのそれに合わせ、引き下げなければならない。つまりベラルーシは、WTOに加盟していないうちから、向こう7年間の間に、関税率を10.7%から8%まで引き下げなければいけないのである。

 ベラルーシ外務省の試算によれば、ロシアが負った義務は、1,000以上の品目に関し、関税同盟の現行の関税率よりも7~15%低く、うち50以上の品目がベラルーシにとってセンシティブである。具体的には、オフロードで使用するセミトラクター、ダンプカーなどの機械製品であり、また乳製品等の食品、一部の染料・ラッカー、電話機、テレビである。さらに、1,500の品目に関しては、ロシアの負った義務が関税同盟の現行の関税率よりも4~6.5%低く、うち160品目がベラルーシにとってセンシティブである。具体的には、ある種の合成糸、フェルト、ロープ、織物、繊維製品、1リットル以下の瓶、グラスファイバー、洗濯機、変圧器、電子レンジなどである。これらの品目が、現在よりも自由に関税同盟の市場に入ってくるわけである。農機の関税率も、現行の平均15%からほとんどの品目で5~10%まで引き下げられるので、ベラルーシの農機メーカーは試練に直面する。ミンスク・トラクター工場やゴムセリマシといったベラルーシの農機メーカーはロシア市場に依存するだけに、事態は深刻である。

 ベラルーシは抵抗を示すかもしれないが、時すでに遅し。2011年にロシア・ベラルーシ・カザフスタンが多国間通商体制の枠内での関税同盟の機能に関する条約を批准したのは、まさに関税同盟加盟国がWTOに加盟した生じうる矛盾の解決を念頭に置いたものだった。この条約により、関税同盟の機能にかかわるWTOのルールは、すべて関税同盟の法体系の一部となる。肝心なことには、関税同盟の義務よりもWTOのそれの方が優越するということである。

 これですべて明白であり、ベラルーシとカザフスタンはロシアのWTO加盟で負ったすべての条件を受け入れなければならないはずだが、ベラルーシの高官の中にはそう認識していない者もいる。たとえば、ベラルーシ国家関税委員会のS.ボリシューク副委員長は、この問題に1月にコメントした際に、ロシアのWTO加盟にもかかわらず、関税同盟の関税率の修正はユーラシア経済委員会で採択されるので、ロシアの関税が上がるか下がるかを語るのは尚早だと発言した。

 ベラルーシは関税同盟の中でも最もWTO加盟作業が立ち遅れており、ゆえに他の国よりも、自国市場の保護を望んでいる。これが共通経済空間の深刻な障害になる可能性があり、そのためロシアはベラルーシのWTO加盟を支援することを約束し、12月19日に当該の覚書が結ばれた。そのメモランダムには、ベラルーシ側の主張を聞き入れたかのような文言もあるが、いずれにしても優越するのは覚書ではなく2011年に関税同盟3国で結んだ条約であり、そのことはロシアのメドヴェージェフ大統領が覚書調印の12月19日に改めて明言している。

 たが、新しいルールが実際にどのように機能するかは、まったく定かでない。もしもロシアとWTOの合意が共通経済空間を規定するなら、3国は袋小路の状況となる。ユーラシア経済委員会に関する協定を起草する中で、意思決定の方式を、全会一致とするか、特定多数決とするかで、論争があった。ベラルーシとカザフスタンが参加する条件として、一国一票の原則が採用され、ロシアも協定がなるべく早く調印されるように妥協をしたのである。決定事項は、参与会で決まらなかった議題は評議会に、評議会でも決まらなければ首脳会議に持ち込まれる。ということは、もっとも頭の痛い、センシティブな問題ほど首脳会議に諮られることになり、ベラルーシ経済が世界の通商体制への統合が最も遅れていることを考えれば、そうした頭の痛い問題はおそらくベラルーシが持ち込むことになる。ベラルーシがWTOの加盟国でなく、熱意すら示していないことから考えて、3国による合意形成の難問は長く続くことになりそうだ。

 HPのロシアコーナーで累次お伝えしているとおり、大統領選に立候補しているロシアのプーチン首相は、自らの選挙綱領に相当する論文を、主要紙に五月雨式に発表している。2月27日付の『モスクワ・ニュース』紙に、その第7弾が出た。今回は外交政策がテーマで、「ロシアと変わりゆく世界」と題されている。論文のテキストは、こちらで読むことができる。

 残念ながら、論文そのものを熟読している余裕はないので、こちらのサイトに掲載された外交評論家のP.ドゥトケヴィチ教授の論文寸評を要約しておく。教授いわく、この論文はオープンで、アクチュアルで、国際関係のすべての要素を取り上げているという意味で、プーチンの古典的なスタイルだ。プーチンは、国際機構が国際関係の調整役というしかるべき機能を果たしていないので、それゆえに我々はデリケートで激変し予想のつかない世界の時代に入りつつある、と指摘している。ただ、この論文のなかでプーチンはそのデリケートさにどのように対処すべきか、具体策を示していない。この論文から見えてくるのは、ロシアはアジア、とりわけ中国との関係に傾斜していくということで、これは世界の経済的・政治的重心がアジアに移りつつあることを改めて示している。この論文のなかで新味があるのは、いわゆる「ソフトパワー」についての言及が何箇所か見られること。この論文が立脚している主権というものについての概念は、19世紀型の古臭いもので、ロシアが国際場裏でこのような形の主権を行使することはもはや困難であろう。EUと米国に対しては、交渉の座について、あらゆることにつき合意し、質的に新たなレベルに移行しようということを提案しているが、現在先方にはロシアと何としてでも合意しようというような政治的熱意ななく、したがって論文のこの部分も実施可能な具体的提案とは言えない。ロシアを中心としたユーラシア統合に関しては、この論文では満足な言及がなく、中央アジアを舞台に、ロシア、中央アジア、中国が協力し合えることを考えれば、これは驚くべきこと。以上がドゥトケヴィチ教授の寸評であった。

 教授も指摘しているように、論文では中国を中心とするアジア・太平洋地域を重視する姿勢が示されているのだが、残念ながら、日本への直接の言及は見られない。プーチンが論文のなかで直接言及している国や地域は、地図に見るとおりである。



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 こちらの記事によれば、「ペテルブルグ政治財団」というシンクタンクが、「2012年5月の内閣の顔触れ」と題し、現在の閣僚のうち来たる新プーチン政権で生き残れるのは誰かを占った報告書を作成したとのことである。

 これによれば、まず退任が確実なのはA.アヴデエフ文化相で、同氏の場合は自らが退任の意向を示しているうえに、一連の文化関係機関との対立もある。すでに内閣文化・教育局長のD.モルチャノフ、モスフィルムのK.シャフナザロフ、大統領顧問のYu.ラプチェフなど、後任候補の名前も挙がっている。

 次に退任の可能性が高いのは、V.バサルギン地域発展相だ。彼は再三大統領から激しく批判されており、もう何年も解任が語られてきた。彼がモスクワ州知事またはスヴェルドロフスク州知事に転身するという噂も聞かれる。ただし、本紙が得た情報によれば、モスクワ州知事の候補はB.グルィズロフ前下院議長、I.レヴィチン運輸相の2人ということだが。なお、レヴィチン運輸相に関し、ペテルブルグ政治財団では退任の可能性を中程度としている。仮に地域発展省が地域、建設、民族問題など2~3の機能に分割されるようなことがあれば、本紙の情報によると、前カリーニングラード州知事のG.ボースがそのうちの1つの大臣になる可能性があるという(現在ボースは、「公開政府」創設のための大統領府作業グループで、権力の分権化の問題を担当している)。

 もう一人、財団が「退任確実」としているのが、Ye.スクルィンニク農相。同女史は長らく、省の執行規律、2013~2020年の農業発展国家プログラムの準備状況の悪さなどで、V.ズプコフ第一副首相から批判を受けているうえに、大臣の座を狙う他派閥も多い。

 S.シマトコ・エネルギー相も、やはり「退任確実」とされている。ガソリン危機と、電力部門で相次いでいる事故がその原因。

 庁や連邦局のレベルでは、消費市場監督局のG.オニシチェンコ長官が退任確実という。もっとも、その原因は、省庁間の対立や、外資大手の不満(ネスレ、ペプシコ、ヴァリオなどがI.シュヴァロフ第一副首相に不満を訴えていた)ゆえというよりは、同局を廃止しその権限を他のところに移す計画があるから、ということである(権限を地域レベルに移すか、あるいは関税同盟またはユーラシア連合という超国家機構に移す)。もう一人、退任が確実視されているのがV.ヤケメンコ青年庁長官で、同市はV.スルコフが大統領府を後にしてから退任が取りざたされていた。

 次のグループが、「退任の可能性がかなり高い」というカテゴリーで、こちらの方が数が多い。具体的には、T.ゴリコヴァ保健相、A.フルセンコ教育相、Yu.トルトネフ天然資源省、S.ショイグ非常事態相、R.ヌルガリエフ内相、A.セルジュコフ国防相らが該当する。トルトネフは大統領府への移動、ショイグは東シベリア・極東開発公社への転身が想定されている。一方、ゴリコヴァ、フルセンコらの立場は危うい。セルジュコフ国防相も失敗続きで、ロゴジン副首相からも批判されている。

 その他の大臣に関しては、財団は「退任の可能性が中程度」「小さい程度」「最小の程度」に区分している。この報告ではE.ナビウリナ経済発展相が中程度とされているが、その他の専門家はその可能性は高くないとみている。ただ、財団の報告書では、小程度または最小程度とされているのは、庁および連邦局のトップだけである。

 財団のM.ヴィノグラドフ理事長によれば、すべての大臣に退任のリスクがあることは、9月のタンデムによる表明からも確認でき、このように政府が全面的に入れ替えられる可能性は1991年秋以来なかったことで、ゆえに多くの政府高官は職探しの必要に迫られているが、もっともプーチンは政府の刷新が上手くいかなかった場合への予防線を張るために、12月5日に現チームの骨格は保持すると述べた、ということである。

 財団の報告は副首相レベルには触れておらず、I.セーチンおよびD.コザクに関しては留任論が出てくる可能性があると指摘するにとどまっている。本誌の情報によれば、I.シュヴァロフ第一副首相、N.パトルシェフ安全保障会議書記の退任の可能性もある。安全保障会議の権限が強化される可能性もある。プーチンが2月6日に評論家らに表明したように、大統領選の投票前に政権幹部の顔ぶれが発表される可能性も否定できない。

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 最近買ったCDの中で、一番良かったのが、このThe Everly Brothers, The Complete Cadence Recordings 1957-1960という2枚組。50年代後期のロカビリーを代表する兄弟デュオの、黄金時代に当たるケイデンス・レコードでの全作品を収録したもの。これまでエヴァリー・ブラザーズのCDは80年代に買った音が劣悪で曲数も少ないものしか持っていなかったので、今回のCDでようやくその魅力の全貌に触れることができた。

 今まで聴いたことがあったシングル曲では、無邪気なティーンエイジ・ポップという印象を受けていたが、シングルになっていないアルバム曲では、伴奏がアコースティックギターだけのものが多く、また結構無頼っぽい歌詞があったりして、抱いていたイメージ以上にアダルトおよびルーツ寄りだった。ただ、All I Have to Is Dreamや、Let It Be Meといったお馴染みのバラード曲の魅力は、やはり抗いがたい。

 こちらの記事によると、このほどロシア戦略研究所の主催でモスクワにおいて「ユーラシア経済連合:統合の新たな地平への道」と題する国際会議が開かれた。その会議にモルドバからの分離独立を唱える沿ドニエストル共和国のYe.シェフチューク大統領が出席し、同共和国は「ユーラシア経済共同体」「ロシア・ベラルーシ・カザフスタン関税同盟」に参加することに関心を抱いており、「共通経済空間」の枠内で活動し「ユーラシア連合」の形成に参加する用意があると述べた。

 これによれば、シェフチューク大統領は概略以下のように述べた。沿ドニエストル共和国にはそれらの統合に参加するために必要な法的基盤が形成されている。ソ連崩壊後の20余年ずっと、沿ドニエストルを団結させてきた最大の理念は、将来的にロシア・ウクライナ・ベラルーシと単一の経済・社会・文化・政治空間に有機的に組み込まれることが可能となるよう、自らの土地において文化・歴史的な独自性を保持するということだった。我々は、政治的な事情により、ロシア、ウクライナおよびその他のCIS諸国が沿ドニエストルの独立を承認できないということを理解している。沿ドニエストルの人々は、未承認による重荷を背負ってきた。沿ドニエストルにとって「ユーラシア経済連合」への統合は、発展、大多数の経済問題の解決、モルドバ・沿ドニエストルの関係を沿ドニエストル・モルドバ・ウクライナ・ロシア諸国民の利益に沿って平和裏に政治的に解決する条件を作ることを可能とすることである。「ユーラシア連合」の創設、効果的な統合は、参加国が21世紀の困難な経済情勢下でしかるべき地位を占めるための道である。共同で対処してこそ、我々諸国はグローバル成長と文明進歩のリーダーの仲間入りをし、成功と繁栄を手にできる。CIS諸国の経済的ポテンシャルを結集することによってのみ、21世紀の経済的不安定の新たなリスクに的確に対応できる。シェフチューク大統領は以上のように述べた。

 こちらのニュースによると、ロシアのM.ズラボフ駐ウクライナ大使は、ロシアとウクライナの両国は、近いうちにCIS自由貿易圏に関する協定を同時に批准することになると発言した。大使によれば、現在両国の政府、議会、外交は協定の同時批准に向けて準備を進めており、向こう数週間で実現するだろう、とのことである。

 一方、こちらのニュースによれば、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領は、ウクライナがロシア・ベラルーシ・カザフスタン3国関税同盟との関係で提案している3+1の枠組みは、やはり関税同盟との協力関係を模索している大多数の他のCIS諸国にとっても、現実的で興味深いモデルとなるだろう、と発言した。

 珍しく文化の話題である。HPロシア・コーナーのNo.0132の記事で見たとおり、2011年のロシア文化の最大の話題と言えば、ボリショイ劇場の改装工事が完了し、11月にそのこけら落としが行われたことだった。その演目には、バレエ「眠れる森の美女」が選ばれ、11月16日と20日に公演が行われた。今般、NHKのBSプレミアムでその模様が放送されたので、観てみた次第だ。

 個人的に、ロシア圏の仕事をしていながら、バレエはまったく不案内。恥ずかしい話、毎年何回かモスクワに出かけるのに、ボリショイ劇場に足を踏み入れたことはこれまで一度もない。ただ、以前ブログにちらりと書いたとおり、昨年12月にウクライナのリヴィウでバレエを鑑賞する機会があり、それが思いのほか楽しかったので、ようやく多少興味を抱いたところだった。そうしたなか、NHKがボリショイの新装開店公演を放送してくれるというので、たまにはロシアの文化的な側面も見ておかなければなるまいと思い、鑑賞した次第だ。5.1サラウンドで放送されたので、久し振りにサブウーファーまで使って自宅のホームシアターを稼働させた。なお、番組を制作したのは、ロシアではなくフランスのテレビ局のようだった。

 何しろ、予備知識がまったくないので、出し物自体へのコメントは差し控えておく。「赤い衣装を着た森の精(?)の踊りが、がきデカみたいだった」とか言うと、育ちの悪さがバレてしまうので…。私がロシア研究者として注目したのは、ボリショイ・バレエ団が初めて外国人をプリンシパルとして招聘し、今回のこけら落としでも主演を務めていたという点である。しかも、それが米国人だという。これは日本で言えば大相撲の横綱の座に初めて外国人が就くようなものではないかと想像され、個人的にその背景やロシア国内での反応に興味が湧いた。

 まあ、あんまり詳しく調べているヒマはないが、問題の人物は、アメリカ・バレー・シアター出身のデーヴィッド・ホールバーグという。ホールバーグのインタビュー記事が、こちらのサイトに出ている。この記事によれば、ボリショイが外国人をプリンシパルとして招くのは、19世紀末以来なかったことだという。ホールバーグ自身、芸術監督のセルゲイ・フィリンが米国人である私を招聘したのは、とても勇気のいる行為だったはずと発言している。インタビューでホールバーグは、米国でのキャリアには満足しているが新しい挑戦のためにボリショイに来た、自分はロシア文化の一部となるつもりで当然のことながらロシア語も勉強するつもりである、などと述べている。

 テレビの画面で観る限り、ロシアの観客がホールバーグを拒絶しているような雰囲気はなく、暖かく迎えている印象を受けた。


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 ロシアの有名な政治評論家で、「政治情報センター」の所長であるA.ムーヒン氏が、こちらのサイトで、3月の大統領選を経てプーチン政権の支配体制がどのように変容していくかについての分析を示しているので、以下のとおり抄訳しておく。

 メドヴェージェフはすでに政治の中心にはおらず、そのため彼の側近は意識的に話題作りに励んでいる。とくに、メドヴェージェフが副大統領に就任かといった観測が語られていることは、メドヴェージェフが実際に首相ポストを与えられるのかという点に関して、本人だけでなく、側近も心配に思い始めたということを、物語っている。

 2007年にプーチンはセルゲイ・イヴァノフに大統領選に出馬しないよう頼み、メドヴェージェフに白羽の矢を立てた。そして、今回はメドヴェージェフの番である。もしかしたら、プーチンは大統領当選後、同じような依頼をメドヴェージェフにするかもしれない。たとえば、現在の状況にかんがみて、現体制のために、つまりバランスを回復し政治情勢を安定させるために、首相のポストを自発的に断念する、といった具合である。2011年9月に「統一ロシア」の名簿の筆頭に立ち、一部の国民に強い不満を招いたのは、他ならぬメドヴェージェフであった。メドヴェージェフがこれを拒むことはあるまい。

 この間プーチンは、メドヴェージェフが始めた政策的なイニシアティブの取り下げを表明し始めた。たと冬時間への復帰などであり、今後は乗用車ドライバーを戸惑わせたメドヴェージェフ提案が対象となる。全体として、国民には、メドヴェージェフがわざと不人気な政策を導入して、その後プーチンがそれを成功裏に廃止するようにしているのではないかという印象が生じている。

 その関連で、プーチンが政権のチームを改造する決意を示すために、行政府および大統領府の大掛かりな人事が、3月4日の大統領選を待たずに始められると考えるべきだろう。

 プーチンが、来たる大統領職を政治的に単独で務めなければならないということを感じ始めているのは、明らかである。おそらくは3月4日が後戻りのできない日になるだろう。指導部を、入れ替えるか、ねじ伏せるか、どちらかが必要であり、それによって水平の関係は困難になる。水平は質的に異なる垂直に変容し、そこにはプーチンに忠誠を誓う人材がこれみよがしに配置されることになる可能性がある。このような権力構造は、「国民戦線」を軸とする大衆的な支持基盤を必要とする。

 かくして、プーチンの権力を保持するためには、権力構造の大幅な再構築が必要であり、現指導部の50%が生き残れれば良い方であろう。おそらく、エネルギー部門および鉱工業の仕切り役であるI.セーチンは残るはずで、首相の可能性も取り沙汰されている。ただし、首相候補はすでに他にも多いが。セーチンの権力強化は、すでに形成されたロシアおよび外国の投資家との関係メカニズムの保持を可能にするわけで、選挙の論理やプーチンの気分で変更が加えられることはあるまい。

 A.フルセンコ教育相の代わりに、A.ドヴォルコヴィチが起用されるという説がある。ドヴォルコヴィチが経済発展相にということも言われているが、それは考えられず、E.ナビウリナの留任の可能性が高い。I.レヴィチンがモスクワ州知事に転身するという噂があるが、以前にはB.グルィズロフがモスクワ州知事の候補とも言われていた。A.セルジュコフ国防相が退任し、代わりに現在関税局長官を務めているA.ベリヤニコフが後任の国防相になるともささやかれている。

 下院の状況も複雑であり、下院議長に就任したS.ナルィシキンはこれまでB.グルィズロフが上手く務めていた代理人的な役割に満足するつもりはなく、プーチンの構想を下院で実現する全権を自らの手中に収めようとしているようである。これまで下院事務局長というポストはあまり注目されなかったが、先日これにD.ポルィエヴァが就任しており、まさに彼女がV.スルコフに代わって議員団との関係を取り持ち、ナルィシキンの野心を支えることが意図されている。

 そのスルコフは、新任の副首相としてようやく活動に本腰を入れ始め、ロゴジンとともに、「イノベーション諜報」のプロジェクトの実現に着手し始めたと言われている(その基礎には合法的な産業スパイのコンセプトがある)。

 興味深いのはセルゲイ・イヴァノフが、メドヴェージェフが大統領から退任するための仕事に据えられたことである。すなわち、「拡大政府」の諸問題に関する作業グループが設けられ、イヴァノフがその長になったのである。その副長には、A.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官、M.アブィゾフ大統領顧問が就き、後者がプロジェクトの調整役で、メドヴェージェフに進捗状況を報告することになっている。この副長の顔ぶれからして、メドヴェージェフが首相になったら行政府の多くのメンバーが失職するはずで、メドヴェージェフの首相就任への抵抗は近いうちに高まってくるだろう。

 以前も書いたように、私のHP(http://www.hattorimichitaka.com/)をスマホ(iOSおよびアンドロイド)で見ようとすると、いったん表示されるものの、すぐに「URLが存在しません」みたいな画面に切り替わってしまっていた。これではまずいと思い、iOSおよびアンドロイドからアクセスしたら、ブログ版(http://blog.livedoor.jp/httrmchtk/)の方に飛ぶように設定したわけである。

 ただ、その際に思案のしどころだったのは、iPadからの閲覧者をどう扱うかということ。iPadもiOSだから、iPhoneおよびiPodなどと同じくブログ版に誘導してしまってもいいのだけれど、ただiPadはそれなりの画面サイズがあるから、iPadユーザーは、普通にPC向けのフルバージョンのHPをご覧になりたいと思うのではないか。そのように理解していたので、私はとりあえず、「iOSからアクセスしたらライブドアのブログ版に飛ぶ、ただしiPadは除く」という具合に設定をしたのだった。しかしながら、iPadで私のHP(http://www.hattorimichitaka.com/)がきちんと表示されているのだろうかというのは、気になっていた(手元にiPadがないので簡単には調べられない)。

 昨日、家電屋のiPad売り場に出向き、初めてiPadで自分のHPを表示してみた。そしたら、恐ろしく崩壊した格好で、我がHPが表示されていた。見た感じ、どうもやはりフレーム割が悪いのではないかと思う。やっぱり、CSSでレイアウトしないと駄目なのか。でも、面倒臭いんだよなあ。とりあえず、iPadで閲覧した場合も、ブログ版に飛ぶように設定して、応急処置をしておくか。そう言えば、アンドロイド系のタブレットではどうなのかなあ?

 まあ、大して人気もないウェブサイトだから、どうでもいいと言えばいいんだけど。

 2012年2月9日付の『ヴェードモスチ』紙に、Synovate Comconという機関の調査によるロシアのネットにおける最新のソーシャルメディアの勢力図が掲載された。これは、2011年第4四半期に、ロシアの人口10万人以上の都市において、10歳以上のインターネット・ユーザー7,000人を対象に行った調査の結果であり、全ユーザーのうち1週間の間に当該ソーシャルメディアを利用したユーザーのパーセンテージを示したものである。

 その結果が下図であり、最大手のVK.comはネット・ユーザーの51%が利用しており、首位の座を確保している。ロシア市場の特徴は何と言っても、VK.com、Одноклассники(アドノクラスニキ、「同級生」の意味)という2大ローカル勢力が、凌ぎを削っている点であろう。ちなみに、ユーザー数でVK.comに抜かれたОдноклассникиが、最近また追い上げており、両者の差が再び縮まっているという。世界では王者のフェイスブックも、ロシアでは内容がよく似たVK.comに圧迫され、完全に劣勢となっている。先日、フェイスブックがIPOを行った際に、フェイスブックの進出が遅れ今後巻き返さなければならない市場として、日本などとならんで、ロシアの名前も挙がっていた。Google+は、登場して間もないのに、斬新な内容とアンドロイド端末の普及が奏功し、早くもロシア市場で4位に躍り出た(ただし、調査によってはもっと低い数字の場合もある)。一方、日本で人気のツイッターはプアなユーザー・インターフェイスが災いしてか、当国での浸透度は今一つ。

 ちなみに、2011年10月の調査によれば、ネット・ユーザーがソーシャルメディアを利用する平均時間という指標で、ロシアはアルゼンチン、イスラエルに次いで世界で3番目に長いという。


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 こちらの記事が、ロシア・ウクライナの新たな天然ガス紛争について報じているので、以下のとおり抄訳しておく。

 ロシアとウクライナは新たなガス対立に突入した。今回は、寒波の時期に、ロシアがヨーロッパに輸出しようとしていたガスが「不達」となってしまったことが原因である。ロシアのガスプロムは、ウクライナのナフトガス社がヨーロッパ向けのトランジットガスを無許可で抜き取ったと非難しており、「サウスストリーム」の稼働後はウクライナ経由のトランジットを完全にやめると表明している。サウスストリームの稼働は早くて2015年だが、「ノルドストリーム」が開通したことで、ウクライナは一部をすでに失っている。

 2月22日、ガスプロムのミレル社長がメドヴェージェフ大統領と面談し、2月の寒波の時期にガスプロムがヨーロッパ向けに輸出しようとしていたトランジットガスをウクライナが無許可で抜き取ったということを報告した。ミレルによれば、一部の日では、1日当たり4,000万立米に達した。合計でどれだけに上ったかは述べなかったが、前日に非公式で、2月最初の2週間で4億3,800万立米という数字を挙げていた。ウクライナは、2012年分のガス輸入を削減したいと表明していたにもかかわらず、割当分よりも多いガスを抜いてしまったことになる。

 メドヴェージェフ大統領はミレル社長に対し、契約と協定の枠内でウクライナ側と事態を精査することと、また黒海海底を経てEU市場に至る「サウスストリーム」の建設を急ぐよう指示した。その際に大統領は、サウスストリームの技術的設計はまだ最終版は完成していないものの、その最大の輸送能力である630億立米を念頭に計画する必要があると指摘した。会談後ミレルは、サウスストリーム開通後には、ロシアのガスの欧州向け供給地図から、ウクライナは完全に消えることになり、同国は年間30億ドルの収入を失うと明言した。

 サウスストリームの開通は2015年になるが、2011年秋にはバルト海海底を通ってEUに至る「ノルドストリーム」が稼働しており、それによりウクライナはより早い時期にトランジットの多くを失う可能性がある。ここ1週間、ガスプロムがノルドストリームおよびベラルーシ領のヤマル~ヨーロッパPLを優先的に稼働させているため、ウクライナのトランジットは1月のレベルに比べて17%低下していると伝えられる。

 ウクライナ側は抜き取りの疑惑を真っ向から否定しており、さらには、アザロフ首相は寒波の時期にはヨーロッパ向けの予定供給量を満たすためにウクライナが自ら貯蔵所のガスを供出したと述べている。ウクライナ・エネルギー省では、2月6日から17日にかけてウクライナは、トルコおよびポーランド向けの供給を1日当たり5,200万立米から7,000万立米に増やすために、自らの貯蔵所のガスを供出したので、ガスプロムに1日当たり2,500万立米の貸しを作った、としている。

 今回のロシア・ウクライナのガス紛争は、週の初めにナルィシキン・ロシア下院議長がウクライナを訪問したことを受けて発生した。これまで彼がガス交渉に関与したことはなかったが、今回彼は文書を携えて来たとされ、本人はそれが両国の新たなガス契約の新提案だとしていた。その準備に携わったロシア側の関係者は、これは契約などではなく、ウクライナ側に今後の対話を求める招待にすぎなかったとしている。ウクライナ側は、文書は中身が空っぽで、論じるに値しないとしている。ざっくり言えば、ガスプロムがウクライナのガス輸送網を単独でコントロールすること(ウクライナ側はそれにEUも加わることを主張している)、ウクライナが2012年の購入量を引き下げない代わりにガスプロムがウクライナに欧州向けの標準値引き10%を適用する、ということを提案しているようだ。

 ガスプロムとナフトガスの契約によれば、紛争が生じた場合にはストックホルム調停裁判所に持ち込むことになっているが、専門家によれば、今回はそこまでの事態にはならないであろうという。仮に無許可の抜き取りがあったとしても、ガスは関税なしでウクライナに輸出されており、値段も高いので、ガスプロムは損失を被らない。ガスプロムの収入に比べれば、4億3,800万立米という量は微々たるものである。今回のガスプロムのアピールはむしろ政治的なもので、ウクライナ向けの圧力に加えて、寒波でガス不足に直面しているヨーロッパに向け、サウスストリームを支持することの必要性を悟らせる狙いがあると、専門家は指摘している。

 前回のプロホロフに引き続き、『コメルサント』紙に連載されたロシア大統領選の候補者のプロフィールのうち、今回はセルゲイ・ミロノフ氏の回を取り上げ、以下のとおりその要旨を整理しておく。

 ミロノフが大統領選に出馬するのは、2004年以来のことである。彼は決選投票への進出を目標としており、「公正ロシア」の党内ではその可能性があると確信しているが、専門家は疑問視する。専門家によれば、現在「公正ロシア」は上昇気流に乗っており、たとえミロノフが大統領選で芳しい結果を得られなくても、彼のキャリアが損なわれることはないという。

 長くなるので、ブログ版では以下省略。詳しくはPCサイトをご利用ください

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 パナソニックモバイルコミュニケーションズが、欧州市場に向けに防水・防塵機能を備えたAndroidスマートフォン「ELUGA」(エルーガ)を4月に投入するということが、話題となっている。注目すべきことに、こちらのサイトによると、パナソニックはロシアでもエルーガ・ブランドのスマホを展開する予定とのことである。パナソニック欧州市場の幹部がハンブルグで開かれた年次コンベンションで明らかにした。ただ、ロシア市場での発売時期は未定の由。

 ロシアでも、スマホやタブレットの市場が、アップルとサムスンの2強に席巻され、ガラパゴス日本勢は見る影もないのは同じ。その意味でも、今回のニュースは心強い。ただし、ロシア人に「エルーガ」と言ったら、たぶんチョウザメ(ベルーガ)のことを連想するのではないか。

 アップル社のクラウドサービス「iCloud」と言えば、最近は「iTunes in the Cloud」が話題。要するに、1台のPCやモバイル端末のiTunesにある楽曲をダウンロードすれば、特別な同期の作業をしなくても、自分のすべてのPC・端末でその楽曲が楽しめる、というサービスのようである。

 で、今般私もiCloudをちょっと始めてみたのだけれど、iTunes in the Cloudの利用は考えていない。私の個人的な趣味から言うと、むしろ自動的に同期してほしくないのである。では、私がiCloudを何に使うかというと、iPod Touchで撮った写真をPCに自動的に転送するためである。私の理解している限りでは、iPod Touchで写真を撮っても、それをメールに添付して送付したり、ブログにアップしたりすることはできない。iPod Touchで撮った写真は、USBケーブルでPCに接続しない限り、ディバイスから外部に取り出すことはできないようなのだ。まあ、実のところそんなにiPod Touchで写真をたくさん撮っているわけでもないのだが、ディバイスの中にとどまったままというのもなんかこう心地が悪いので、iCloudでクラウド化することにしたという次第。今のところ、iCloudの使い道は、これだけ。

 こちらのニュースによると、ロシア下院のS.ナルィシキン議長はこのほど、「ユーラシア連合」創設に向けた統合を強化するために、「ユーラシア議会」を創設する必要があるとの見解を示した。

 これによれば、ナルィシキンは概要以下のように語った。近年、移民、関税同盟、共通経済空間など、様々な動きが見られる。我々はユーラシア連合の建設に向け原則的に重要は措置をとった。我々には透明で分かりやすい共通の経済法令が必要だ。すでにユーラシアの超国家機関が形成されつつある。ユーラシア経済委員会ができ、その他の機構も整備されている。ただ、これらの期間は議会の役割を果たすことはできない。ユーラシア議会の創設が、今後の課題となる。統合の議会にかかわる部分がこれほど重要性を増したのは過去20年なかったことであり、共通の課題の解決を進めるためにベラルーシおよびカザフスタンの代表と討議することがきわめて重要である。

 こちらのニュースによると、ウクライナで2月22日、V.ホロシコウシキー氏が第一副首相に任命された。ホロシコウシキー氏は1月18日に保安局長官から蔵相に転身したばかりだったが、22日付の大統領令で蔵相職を解かれ、新たに第一副首相に任命されたもの。2月14日にクリュエフ第一副首相が国家安全保障・国防評議会の議長に転身してから、第一副首相のポストが空席となっており、この座に就く者がアザロフ首相の後継候補になるとして、注目を集めていた。

 こちらのニュースによると、イテラ社によるミンスクの新都心開発が行き詰まり、ベラルーシ側は契約を破棄する構えであるという。これによれば、ロシアの石油・ガス会社「イテラ」は2007年、ミンスク市と、318haの新都心「ミンスク・シティー」を建設する契約に調印した。2020年までに50億ドルを投資し、350万平米の住宅、ホテル、オフィス、商業施設を建設するという予定だった。なお、イテラはベラルーシの他にも、トルクメニスタンでも不動産開発の実績がある。しかし、ミンスク・シティーの建設作業は遅れ、2011年9月にもルカシェンコ大統領が遅延につきイテラを批判する場面もあった。そして、2月16日、N.ラドゥチコ・ミンスク市執行委員会議長(市長)がルカシェンコ大統領と面談したあと、同契約を破棄する必要がある旨公表した。なお、ラドゥチコ議長は、イテラ以外にも本プロジェクトに関心を示している投資家は存在し、それらと新たなコンソーシアムを組むことも検討している旨述べた。

 こちらのニュースによると、メドヴェージェフ大統領のブレーンの一人がメドヴェージェフ氏に、来たるプーチン政権で首相に就任することを取り止めるよう、進言したとのことである。

 記事によると、「現代発展研究所」のイーゴリ・ユルゲンス所長は過去4年間、メドヴェージェフ大統領の知恵袋の役割を務めてきた。そのユルゲンス所長が今般、Bloomberg通信とのインタビューで、メドヴェージェフ氏はプーチン大統領の下で首相に就任すべきではないとの見解を示した。ユルゲンスによれば、クドリンの方が専門家としての定評があり、またプーチンにも信頼されているので、過渡期の首相としては理想的である。

 ユルゲンスの進言は、少なくとも3つの意味で衝撃的である。第1に、首相ポストはプーチンにより、統一ロシアの党大会で提示された。プーチンはそれ以来、一度も立場を変えておらず、メドヴェージェフも実質的に「拡大政府」での活動を始めている。今から首相職を断るとすれば、プーチンへの対応として不適切だし、メドヴェージェフが拡大政府に招いた人々に至ってはなおさらである。効率政治基金のG.パヴロフスキー所長は、メドヴェージェフは公の場で首相職を約束されたのであり、もしもそのポストを断ったら、メドヴェージェフに対する圧迫が強まり、職務をこなせなくなると指摘している。第2に、国家権力体系で首相に匹敵するポストはなく、仮に首相に就かないとなると、では何の仕事をするのかという問題が生じる。第3に、ユルゲンスはメドヴェージェフが首相職をクドリンに譲ることを提案しているが、両者の関係は2011年9月に損なわれ、それ以来悪化を続けている。

 ユルゲンスによれば、問題は首相としての能力ではなく、メドヴェージェフが大統領から退任したあとの、今後の政治的キャリアである。ユルゲンスはこれまでも、メドヴェージェフの大統領再選を支持する旨公言しており、メドヴェージェフが自立した政治家としてとどまるためには、プーチンによって任命されるのではなく国民に選出される必要があると訴えていた。ユルゲンスにとって決定的だったのは、プーチンが新聞紙上で発表している政策論文であり、これらはメドヴェージェフの立場と合致せず、メドヴェージェフが首相になったらロゴジン、セーチン、スルコフらの起草したこれらのプログラムを実施しなければならないことだったという。

 ただし、ユルゲンスが現在の政府の顔ぶれを問題視していることは、説得力が乏しい。2008年に大統領選に勝利したメドヴェージェフが、首相に就任するプーチンと、政府・大統領府の人事について双方納得行くように調整したように、現在も同じような調整が可能なわけで、メドヴェージェフが首相職を拒否したらむしろ人事に関与できなくなる。

 あるいは、政治家のB.ナジェジンが指摘しているように、現在は誰が首相に就いても不人気な政策を実施せざるをえず、ユルゲンスはそのことを問題視しているのかもしれない。評論家のYe.ミンチェンコも、メドヴェージェフは国民の支持率が下がることが請け合いの首相ではなく、別の形で政界に戻ってくるかもしれないと指摘している。一方、ヤブロコのS.イヴァネンコは、すべての指令は遂行される、あるのは1つのチームであり、現政権に多様な理念潮流があるというような幻想を抱くべきではない、3週間後には明らかになるように、メドヴェージェフはきっと首相になる、と述べている。

 UEFAチャンピオンズリーグ2011/2012シーズンの決勝トーナメントが始まり、CSKAモスクワは2月21日、ホームにレアル・マドリッドを迎えた。結果は1対1のドロー。得点源のヴァグネル・ラヴが抜けて得点力低下が懸念され、また長いウィンターブレークで試合勘が鈍っていることが心配されたたCSKAだったが、見た感じ、良い準備ができているようだった。ただ、相手陣までボールを運ぶことはできても、アタッキングサードに入るとレアルの強固な守備に跳ね返され、試合を通じて決定的なチャンスはほとんど作れなかった。対するレアルは、氷点下の人工芝の上で(大寒波が続いていたモスクワだったが、この夜はマイナス5℃くらいだったらしい)、本領を発揮するには程遠かったものの、スイッチが入った時の攻撃の鋭さは、やはりCSKAの比ではないなという印象だ。

 レアルが前半に挙げた1点を守りきるかと思われたが、後半23分に本田が投入されるとCSKAにビルドアップのリズムが生まれ、サイドからの攻撃がレアルを脅かし始める。結局、ロスタイムのラストプレーでCSKAに劇的な同点ゴールが生まれ、試合はドローに終わった。

 レアルにとっては、試合終了間際に同点弾を喫したのは精神的にショックだろうが、客観的に考えれば、アウェーゴール1つを奪っての引き分けは、2レグに向けて圧倒的に有利な状況。正直、スルツキー監督のチームに、これ以上の伸び代はなく、マドリッドではレアルが本領を発揮して完勝する可能性が高い。CSKAが波乱を起こせるとすれば、これは日本人としての贔屓目で言うのではなく、本田が完全復調して大活躍するようなケースに限られるだろう。

 テレビで観ていて、印象に残ったのは、モスクワのサポたちが随分行儀良くしているなということ。グループステージではロケット花火をピッチに向けて打ち込むような愚か者もいたが、UEFAから相当強力な指導が入ったのではないか。この日は、ルジニキ・スタジアムがほぼ満員の7万人の観衆で埋まったが、こちらのニュースによると、治安維持のために3,000人の警官隊が投入され、試合中に秩序を乱した観客が70人以上拘束されたということだ。

 こちらのニュースによると、(信任状奉呈でベラルーシを訪れたのだろうか?)日本の駐ロシア大使で駐ベラルーシ大使も兼務する原田親仁大使が2月20日ベラルーシのV.セマシコ第一副首相と会談を行ったということである。

 記事によると、セマシコ第一副首相は、概略以下のように述べたとのこと。すなわち、両国間では石油化学の協力が有望である。ベラルーシは石油をロシアから輸入していることは事実だが、優遇的な条件であり、ロシア側の輸出関税なしで、量の制限もない。両国はエネルギー、とりわけ再生可能エネルギーの分野でも協力可能で、これは両国にとって差し迫った課題だ。医薬品、ハイテクの分野でも協力の可能性を探りたい。自動車生産の共同プロジェクトも可能であり、また日本に食料品を輸出したい。日本がチェルノブイリ被害の克服に真っ先に手を差し伸べてくれた国であることからも、ベラルーシとしても日本のフクシマの被害克服に協力したい。ベラルーシがロシアおよびカザフスタンとの関税同盟、共通経済空間を形成していることからも、日本との協力の可能性は増大する。

 これに対し原田大使は、概略以下のように応じた。すなわち、ベラルーシがフクシマの被害除去に協力する姿勢を示してくれていることに感謝する。日本はベラルーシの政府および国民から支援を受け、そのことにつき非常に感謝している。両国間には経済協力を拡大する可能性がある。関税同盟および共通経済空間創設にも関連して、日本企業のベラルーシへの関心は高まっている。

 驚いたことに、こちらのリリースによると、ロシアの航空会社S7が、ロシア極東のウラジオストクおよびハバロフスクと東京とを結ぶ定期航路を開設するとのことだ。3月の下旬に就航し、それぞれ週に2便が設けられるという。スケジュールは下記のとおり機材はエアバスのA320であり、定員158名とのことだが、そんなに需要があるのかという疑問も。

No.出発到着曜日機材
ウラジオストク→東京S7-56514:2514:40_2___6_A320
東京→ウラジオストクS7-56615:4020:15_2___6_A320
ハバロフスク→東京S7-56714:00
17:00
14:40
17:40
1______
____5__
A320
東京→ハバロフスクS7-56815:30
18:30
20:05
23:05
1______
____5__
A320

 こちらのサイトに、大統領選を前にしたばらまき公約が、ロシア財政を圧迫する危険を指摘した『ジェーニギ』誌の記事が掲載されているので、その要旨を以下のとおり簡単に紹介しておく。

 先日ロシア軍参謀本部のN.マカロフ将軍が、国防省はもう5年間も新たな火砲を調達していないという不満を語ると、D.ロゴジン副首相がその援護射撃をして、早速翌日プーチン首相がお得意の調停者の役割を果たすべく乗り出すという一幕があった。首相は、セルジュコフ国防相および(有力な軍需企業の)ウラル鉄道車両工場のO.シエンコ社長と面談したのである。

 ばらまきは国防だけでなく、医療、教育、インフラ、年金、税制などで乱発されており、相互に整合しない数字が飛び交い、タガが外れた状態である。付加価値税の税率およびフラット制の維持を今日唱えていたかと思えば、翌日には引き上げや累進課税を語ったりする。優先分野は高等教育であると今日言っておきながら、翌日には宇宙、その翌日にはサッカーと言い始める。選挙戦がたけなわで、大衆迎合主義が頂点に達しているのだろうが、多くの公約は財政の現実の可能性と合致せず、財政過程を麻痺させかねない。

 首相から歳出拡大の約束を取り付けていない省庁は一つもないといった事態に、もうすぐなりそうである。ロビイストたちの陳情をすべて満たしてあげるような芸当は、クドリン前副首相・蔵相にすら不可能だろう。ただ、クドリンは最低限の財政規律を保持できるという点で、プーチンの信頼を得ていた。その点、シルアノフ現蔵相には荷が重く、現在の真空状態に対処するのは容易ではあるまい。

 よしんば、財源が足りたとしても、それを獲得する方法が腐敗的なものにならざるをえないというのが問題だ。昨年の国防発注にしても配分メカニズムの不備に加えて、古臭いドグマにもとづくものだった。同じことは経済に関しても言え、サッカーから自動車産業に至るまでいっぺんにあらゆる分野に資源を投入しようとしており、これは今日の国際分業にマッチしていない。ただ、特定の成長分野に特化しようとすると、国民向けに難しい説明を迫られることになり、それは今日のロシアの権力者のスタイルではなく、選挙前となればなおさらである。

 すべての公約を実行するのは不可能だが、ポピュリズムと財政的統合失調症はますます強まるだろう。選挙公約を実施するうえでの基盤となるのは来年に向けた予算教書だが、その策定は頓挫した状況にあるという。結果として、財政・税制が立ち行かなくなり、一つの公約を実施しようとするとその他の公約が全部損なわれ、それでなくとも危うい政権とビジネスの関係、中央と地域の関係が崩れてしまうことになりかねない。

 私などが申し上げるまでもなく、グーグルの翻訳機能を利用している方は、多いであろう。実を言うと、私自身はこれまで使ったことがなかった。ただ、前のエントリーに書いたとおり、今般「ウクライナの電力事情と新エネルギー」というレポートを執筆し、その際にどうしてもウクライナ語でしか読めない資料というものがあった。最初は分からない単語を調べたりしながらウクライナ語のままで根性読みしていたのだが、あまりにももどかしいので、そう言えばグーグルで翻訳ができるらしいなということを思い出し、初めてこれを使ってみたのだった。

 結果は大正解。たとえば、英語やロシア語をグーグルで日本語に翻訳しようとしても、構文その他もろもろが違いすぎるので、あまり芳しい結果は得られない。ところが、グーグルでウクライナ語をロシア語に翻訳すると、両者は語彙ではほぼ一対一の対応関係にあるし、構文なんかもほとんど同じだから、ほぼ完ぺきな翻訳結果が得られるのである。まるで狐につままれたような思いであった。

 2年位前に、ウクライナ語を習得するという目標を立てたものの、その後忙しくて着手できないでいる。そうしたなか、今回グーグルの自動翻訳の威力を見せ付けられたら、ウクライナ語習得の決意がだいぶ揺らいでしまった。

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 私が担当を編集している『ロシアNIS調査月報』2012年3月号が発行されました。「新時代を模索するロシア・NISの電力産業」という特集号になっています。私は「ウクライナの電力事情と新エネルギー」というレポートを執筆しました。また、特集の枠外では、「大統領候補プーチンの動き」というレポートも書いています。

  調査月報では、2007年1月号で「ロシア・NIS諸国の電力部門」と題する特集をお届けしたことがありましたが、それ以来の電力特集号となりました。ただ、2010年7月号では、「ロシア・NISの原子力ルネサンス」と題し、原子力にフォーカスした特集を組んだことがありました。今にして思えば、問題意識が未熟なままで当該の特集を出してしまったという後悔もあります。そこで、今回の電力特集では、ポスト・フクシマ的な観点もなるべく取り入れ、原子力や新エネルギーの諸問題も視野に入れた形での特集を試みた次第です。

 こちらのニュースによると、ロシアのメドヴェージェフ大統領は2月15日、既成政党の代表らを自らの公邸に招き、政治改革に向けた意見交換を行った。その結果、ヴャチェスラフ・ヴォロジン大統領府第一副長官を座長とする作業グループを設置することが決まった。

 しかし、政治改革以上に注目すべきは、メドヴェージェフが将来の大統領返り咲きに意欲を見せたことである。会合に出席した公正ロシアのN.レヴィチェフによれば、会合の締め括りの発言のなかでメドヴェージェフ大統領は、「私は去るつもりはないし、大統領に立候補することを考えている。大統領選の選挙戦の一環として、皆さんと喜んでお会いしたい」と述べたとのことである。メドヴェージェフは以前にも一度、モスクワ大学のジャーナリスト学部の学生らとの対話の席で、自らの将来的な大統領選出馬がありうるとの立場を示していたが、それを改めて表明した形となった。

 ただし、今回の発言につき、政治工学センターのマカルキン副首長は、「メドヴェージェフは、自分が政界に残るということを誇示しようとしているだけで、本件につき本格的な合意がなされてはいるとは思えない。現在メドヴェージェフは、自分が政界で一目置かれないようになってしまったことを気にかけており、それを何とかしたいと思ったのだ」と指摘した。

PUT250 大統領選に立候補しているプーチン首相が五月雨式に発表している政策論文シリーズの第6弾が出た。今度は国家安全保障をテーマとしており、2月20日付の『ロシア新聞』に掲載されたようだ。こちらのサイトでそのテキストを読むことができる。これまでの5つの論文は民間の新聞に掲載されていたが、第6弾にして初めて、政府機関紙である『ロシア新聞』が媒体として選ばれた形。

 余力があれば、追って内容にも踏み込んでみたいが、取り急ぎ。

 ロシアの「世論基金」のA.オスロン会長が、『アガニョーク』誌のインタビューに応じているので、その発言要旨を以下のとおりまとめておく。

 2011年にプーチンの支持率が落ち込んだのは、急激というよりも段階的に進んだ。最初は、年初にすべてのロシア国民にかかわる物価の値上げという出来事が起こり、その結果プーチン=メドヴェージェフのタンデムおよび与党への支持率が下がった。こうした大きな出来事は、世界経済危機の影響を受けた2009年以来のことだったが、2009年当時は危機は国外から到来したもので政権は悪くないと受け止められ、この脅威に対処できるのはタンデムだけだと考えられた。その次に世論に多くな影響を及ぼしたのは、秋にタンデムの大統領と首相の「入れ替わり」が明らかになり、メドヴェージェフが二番手の役割に後退することになり、このことが一部ロシア国民の期待に反していた。

 これまでプーチンが成功してきた最大の原因は、彼が常に世論の求める声と共鳴していたことである。2000年には、カオス・崩壊を克服するというものだった。2003~2004年には、国民は自らの物質的な生活を豊かにしたいと願っていた。プーチンは、資産、外貨準備、予備基金について語るビジネスマンに身軽に変身してみせ、国民の期待に応えた。2007年末~2008年初頭には、新生ロシアが最も幸福だった時期で、道が外車で渋滞するようになったり、国民が普通にトルコやエジプトに保養に出かけたりできるようになったのもその頃で、当時は誰もが安定を望んでいた。

 ロシア国民が、安定志向から、急に改革を渇望するようになったというような、急転換が生じたわけではない。ロシアでは安定というものについての理解が、最初から不正確だった。安定とは、停滞の同義語ではない。世論基金では、国民の安定というものについての態度を評価したが、ロシア国民は物事が常に良くなり続けることを安定だと思っているということが分かった。タンデムの出現は国民に歓迎され、プーチンは安定した中心で経済を取り仕切り、メドヴェージェフは未来について語り、青少年に語りかけ、当時支持率は急増した。社会には刷新に対する期待が高まり、すべての社会グループが新しいものを求めた(グループによって求める新しいものは違ったが)。

 「入れ替わり」により、皆が失望したというわけではない。今回の大統領選の特徴は、社会が積極派と消極派にくっきりと二分されていること。積極派は15~20%、消極派は85~80%程度。入れ替わりに失望したのは積極派。積極派とは、職業的な野心を持った人々であり、すべての地域にいるが、大都市に多い。ゆえにモスクワにおけるプーチンの支持率はせいぜい35%で、他方で農村では少なくとも55%。一頃、これらの積極派がメドヴェージェフを支持していた時期があったが、メドヴェージェフが脇役になってしまったことで、彼らは自分たちの代表が政権にいないと感じるようになった。それにより社会的不満が鬱積するようになり、それが「誠実な選挙を求めて」という集会となって表れた。選挙の不正に対する抗議は、不満を表明するためのきっかけにすぎなかった。国民の最大の不満の種は、ロシアで勢いを増すばかりの無法状態。他のビジネスマンからカネをかすめ取ろうとする役人=ビジネスマンが、増殖しており、司法もそれとつるんでいる。こうした状況に、積極派の国民は愛想を尽かしている。むろん、積極派が全員ビジネスマンとは限らず、腐った連中の下で働くことを余儀なくされている芸術家や公務員もいるが。一方、反政府集会には貧困層の国民も見られるが、彼らは貧しさゆえに常に不満を表明したい気持ちがあり、たまたま現在反政府運動が盛り上がっているから参加したというだけ。これに対し、消極派の国民は、上述のような問題に直面しておらず、積極派が何に不満を抱いているのか理解できない。これは損得の問題ではなく、生活様式の違いによるものなので、理解不能。

 プーチンの支持率が12月の末から上昇していることは事実で、現在49.5%。有権者が、誰に入れようかと考え始めるところで、まずプーチンのことを思い浮かべるのだから、これは当然予想されたこと。ジュガノフとジリノフスキーに新味はなく、ミロノフとプロホロフは泡沫のまま。プロホロフは一時期、不満票を集めるかに見えたが、右派政党での失敗と、言っていることが本気なのかどうか分からない散漫なキャンペーンのせいで失速しつつある。したがって、プーチンの勝利は疑いないが、それでも政権側は反政府集会のことを大いに意識しており、現在、どのように新しい社会の要請に応えようかと苦慮しているところ。政権側は、自らがどのように応じるかで、自分たち自身にとっても、ロシアにとっても、大きく左右されるということを理解している。

 こちらのニュースによると、中国の家電メーカー「ハイアール・グループ(海爾集団/Haier Group)」は、ロシア・スヴェルドロフスク州のニジニタギルに合弁企業を設立してそこで家電生産を行うことを検討している。スヴェルドロフスク州行政府の広報部が2月15日明らかにした。

 ハイアールのロシア・CIS市場担当者は、「スヴェルドロフスク州はヨーロッパとアジアを結ぶ有利な地理的条件を占め、交通網も発達している。しかも近隣地域には他に家電メーカーはない。我が社はロシアでの生産現地化を望んでいる。ハイアールは環境面に対応した生産を行う」などと発言した。

 工場の建設地につき、ミシャリン・スヴェルドロフスク州知事は、ニジニタギルを推しており、ニジニタギルは鉄鋼業の企業城下町であり、そこに新たな工場を建てることは、市の経済の多様化に資する、と述べている。

 本件はロシア連邦経済発展省も支援しており、連邦政府のクラスター戦略の一環としてその候補地を選定するうえでパイロット・プロジェクトに指定する用意があることを示している、ということである。

 以上がニュースの概要である。ただ、ハイアール側がスヴェルドロフスク州を候補地域の一つとして検討していることは事実だろうが、まだそれほど突っ込んだ話ではないようだ。特に、ニジニタギルというのは、スヴェルドロフスク州側が勧めているというだけで、ロシアの産業・地域政策上の都合で出てきた話だろう。以前HPのエッセイで書いたことがあるが、私が実際にニジニタギルを訪問した際の印象から言うと、同地はかなり奥地にあり交通の利便性は良くないというのが、私の率直な意見だ。

 こちらのニュースによると、2月17日に世銀とウクライナによる2012~2016年のパートナーシップ戦略が調印されたが、その中で世銀が、IMFとウクライナのスタンドバイクレジットによる協力関係が決裂の危機に直面していることを警告している。

 スタンドバイ・プログラムは151.5億ドルのクレジットをうたっており、すでに2回のトランシュで34億ドルが融資されているが、2010年12月を最後に停止されている。IMF側は家庭向けのガス価格の引き上げを主張しているが、ウクライナ政府が難色を示している。ウクライナは以前のクレジットの返済をIMFに対して行わなければならず、2012年には37億ドルの支払が必要。このままでは債務リスケを迫られるリスクが高まると、世銀は警告している。

 世銀では、本年に議会選挙を控えているなかで、家庭および公営事業向けのエネルギー価格を引き上げられるかどうかが、政府の本気度を示すことになると指摘。また、成長率の鈍化や欧州不況などで、ウクライナ経済の見通しは長期にわたって暗く、欧州の銀行に対する債務規模は大きすぎ、欧州における銀行危機がウクライナの金融不安定化につながりかねないと指摘している。

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