ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

202007

 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2020年7月号の中身を、どこよりも早くご紹介。7月号は、「コロナ危機に負けない」という特集号となっております。

 しばらく前から、月報に掲載する記事で新型コロナウイルスの問題に言及するケースが増えてはいましたが、ついにそれを正面に掲げる特集と相成りました。今年の初め頃には、まさかこんなに気の滅入るテーマの号を作る羽目になるとは、想像だにしませんでした。ただ、単に「感染が増えて大変だ」という話だけでなく、いかにして危機を乗り切り、本来の経済・社会活動を取り戻していくかという視点にこだわったつもりです。

 服部自身は、「ロシア財政・金融政策に変更はあるか」、「ウクライナ労働移民の流れは変わらず」、「奮闘を続ける『ミンスクの台所』」と、短いものを書いただけです。むしろ、月報は今回より印刷の方式が変わるので、それへの対応の方が大変でした。

 6月20日発行予定。


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524

 キルギスとカザフスタンの国境では、5月の末からカザフ側が国境管理を厳格化し、その結果、貨物を積んでユーラシア経済連合市場に向かうキルギス側のトラック300台ほどが、国境を通貨できずに列をなして停止している状態が続いている。

 こちらの記事によれば、キルギスはこれに反発し、ユーラシア経済連合に派遣している自国代表者の償還、さらには連合の活動のボイコットも辞さない構えだという。キルギス議会の外交委員会の席で、S.ムカンベトフ経済相が表明した。大臣によれば、現在、連合のルールの枠内で問題解決を図っているところだという。


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523

 久し振りに、ロシアの株価のグラフを更新してみた。クリック・タップで拡大する。

 今般のコロナ危機の特徴として、世界的に、3月頃に株価が暴落したけれど、割とすぐに回復に転じたという点がある。ロシアも同じであり、3月半ばを底として、それ以降はほぼ一貫して回復軌道を描いている。ルーブル建てのMOEXは、今年後半にかけて、過去最高値を試す展開も考えられるのではないか(株の予想屋のようなことを言う)。


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0113

 GLOBE+に、「ロシア銀行界の巨人ズベルバンク ほぼ太陽の沈まない帝国」を寄稿しました。

 これまでは健全で慎重な財政・金融政策を続けてきたロシア当局も、コロナ危機に直面し、財政拡大や金融緩和に踏み出そうとしています。そうした中で改めて役割がクローズアップされるのが、ロシア最大の商業銀行であるズベルバンクです。実は、ズベルバンクでは最近、筆頭株主がロシア中央銀行からロシア政府へと変わるという動きがありました。そこで今回は、この組織変更の話題も含め、ズベルバンクについて語ってみました。


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 ロシア統計局より、4月の経済概況が発表されたので、それを眺めているところである。

 そもそも、企業からの報告が滞っていることなどから、統計の作成自体が困難になっているという指摘もあり、もしかしたら統計の精度が落ちているかもしれない。ただ、GDPは出るのが遅いので、差し当たり最も総合的な指標ということになる「経済基礎部門商品・サービス生産高」というデータを見ると、2020年4月のそれは前年同月比マイナス9.9%ということになっている。まあ、だいたい想定の範囲内か。

 鉱工業生産指数は、それよりも落ち込みが若干軽微であり、前年同月比マイナス6.6%ということになっている。主な部門の指数をグラフにまとめたのが、上図である。プーチン大統領の指令で、基本的に4月は企業は休業、ただし生産の一時停止が難しいような業種は除く、とされていた。操業停止が難しいのは、具体的には、油田・ガス田、製鉄所、化学プラントといった分野だろう。それに対し、労働集約的な工場などは、コロナ対策上、閉めざるをえない。まあ、ただ、上のグラフを眺めると、4月が丸々休日に指定されたわりには、各分野とも、意外と落ち込みは軽微だったかという印象を受ける。


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 2020年のロシア財政は、当初の計画では余裕しゃくしゃくのはずだったのだけど、周知のようなコロナ危機に石油安が重なり、歳入減と歳出増のダブルパンチに見舞われることは必定だ。具体的に、どうなるか? このほど、アルファバンクのニュースレター(AlfaBank Macro Insights, June 2, 2020)で、その見通しが示されていたので、ざっと紹介してみたい。

 上の表に見るように、2020年の連邦財政の歳入は、当初の予算では20.4兆ルーブルだったものが、実際には18.1兆ルーブルに落ち込むと見られる。逆に、歳出は、19.5兆ルーブルが、20.5兆ルーブルに膨らむ。財政収支は、0.9兆ルーブルの黒字のはずだったものが、2.4兆ルーブルの赤字となる。国民福祉基金は、2.3兆ルーブルの積み増しを見込んでいたものが、0.3兆ルーブル減となる見通しである。


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19600606

 60年前のアメリカヒットチャートを振り返ってみようのシリーズ。画像は、クリックまたはタップで拡大します。

 さて、60年前のヒットチャート、1960年6月6日と、やたら6が並んだ。そこで、今週6位の曲に注目してみようか。それが、ANITA BRYANTのPaper Rosesだ。調べてみると、自分のライブラリの中には一応入っているのだけれど、それほど印象に残っていない曲だった。カールトン・レコード所属か。


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 「ちょっと用事があってこんな図表を作ってみましたシリーズ」で、今回お目にかけるのはウクライナの鉄鉱石輸出の相手地域・国別状況。価格は結構変動があるので、数量で見ることにする。

 ウクライナでは、ドンバス紛争などで国内の鉄鋼産業が落ち込み、結果的に鉄鉱石輸出余力が増して、2014~2015年頃に鉄鉱石輸出が拡大する動きがあった。しかし、2016年以降は、その動きは止んだ(2019年こそ輸出が多少伸びたが)。

 輸出相手地域・国を見ると、EUと中国が双璧となっている。かつてはEU向けが大部分だった時期もあったが、2000年代の中盤から中国が台頭し、EUと中国という2大市場向けが拮抗するようになった。2014年の政変後の欧州接近が作用してか、2016~2018年にはEU向けの方が上回っていたが、2019年には中国も盛り返した。今回こうやって見てみると、ウクライナのEU向け鉄鉱石輸出は、かなり中東欧に偏重しているということが分かった。

 日本への輸出も、概ね安定的に伸びてきている。2019年の時点で、ウクライナの鉄鉱石輸出の3.3%を占めた。

 旧ソ連のCIS・ジョージアは、ウクライナの鉄鉱石輸出相手として重要ではないが、私の個人的な関心から加えた。それにしても、ベラルーシには高炉がないのに、ウクライナから鉄鉱石を輸入して、どう使っているのだろうか?


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 ロシアの「発展センター」というシンクタンクでは、主要機関による経済予測を平均した「コンセンサス予測」というのを定期的に発表している。今般チェックしてみたところ、5月6~12日に実施したアンケートにもとづく最新のコンセンサス予測が出ていたので、それを紹介してみたい。

 上の表に見るのが、年ベースのコンセンサス予測。前回調査は4月6~7日にかけてアンケートが行われたものだったが、その時は2020年の成長率が▲2.0%と予測されていた。それに比べて、今回のアンケートでは、マイナス成長がより深く、長期化する方向に予測が修正されている。

 ただし、依然として、それほど大きなマイナス成長を見込んでいるわけではなく、個人的にも、これくらいで収まってくれれば御の字ではないかという気がしている。

 下の表は、より細かく、四半期ベースのコンセンサス予測を示したものである。

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 ロシアにメチェルという中堅鉄鋼・石炭グループがあるが、長らく赤字経営に苦しんでいる(その結果、こちらが伝えるとおり、今般最大の資産であるエリガ炭田の売却を余儀なくされた)。同社はかつてウクライナのドネツク電気冶金工場というアセットを買収したものの、経営は上手く行かず、しかも周知のようなドンバス情勢となり、完全に不良資産と化している。

 メチェルはドネツク電気冶金工場の売却を試みたのだが、買い手が見付からなかった。あの件がどうなったかと思い、久し振りに情報を検索して見たところ、昨年10月のこちらの記事が見付かったので、以下要旨をまとめておく。

 I.ジュミン氏の保有するメチェルはD.コザク副首相に、同社がドネツク電気冶金工場に投資した資金の50%を取り戻すことを支援してほしいとの書簡を送った。この資産はウクライナ東部の軍事紛争で失われてしまったと訴えている。また、同社は債務のリスケも要請している。書簡は2019年夏に送付されたものであるという。

 メチェルがドネツク工場の経営権を取得したのが2009年、5.4億ドルで買収したのが2011年だった。2011~2018年にかけて毎月分割で支払うはずだった。工場はその時点で年産100万tだった。メチェルは工場の近代化に10億ルーブルを投資し、ほぼ100%の稼働を達成していた。しかし、原料となる鉄スクラップの不足により、生産がペイしなくなり、2012年に操業が停止された。そこへ、2014年4月に紛争が発生し、事業を継続できなくなった。2016年夏には、経営権を自称ドネツク人民共和国の当局に剥奪された。こうした状況にもかかわらず、メチェルはアルファバンクに対する融資の返済を続け、2019年2月に完済した。

 こうしたことから、ジュミンはコザク副首相に対し、工場に投資した180億ルーブルの50%の返還を手助けしてほしいと要請し、それをロシアの一連の国営銀行に対する支払いに充てたいとしている。また、それらに対する債務3,400億ルーブルのリスケを希望している。

 なお、ドンバス占領地においては、2016年6月にドネツク電気冶金工場がドネツク人民共和国によって勝手に国有化され、「ユーゾフカ冶金工場」に社名変更されるという動きがあった(ユーゾフカはドネツクの旧名)。こちらが、その公式HPである。こちらの記事によると、同工場では、発注がないことから、2019年10月より生産が停止しているが、この春になり生産再開に向けた準備を始めているという情報もあったということである。

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 GLOBE+に、「新型コロナでざわつくロシアの喫煙者 加熱式や電子たばこにも規制の動き」を寄稿しました。

 5月31日は、世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」でした。また、日本政府は、世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」(5月31日~6月6日)と定め、様々な普及啓発事業を実施しています。今回は、その機会を捉え、ロシアの喫煙事情、禁煙政策について語ってみました。


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 しばらく、鉄鋼業に関連したエントリーが多くなるかもしれない。「何か事情があるのだろうな」とお察しいただければ幸いである。

 さて、世界鉄鋼協会の発表しているデータにもとづき、主要国の粗鋼生産量の推移を示すと、上図のようになる。クリックすると拡大。まあ、とにかく、世界の鉄鋼生産の半分を中国一国で生み出すという時代となっており(2019年のシェアは53%)、私のような日本のロシア・ウクライナ研究者にとっては、グラフを作っていて虚しいというか、もはやグラフとして成り立たなくなってきた感すらある。

 ロシアの場合は、生産規模を維持はしているので、マシな方かもしれない。なお、ウクライナは私の研究対象国だからこのグラフに加えてあるが、世界8位という意味ではなく、ウクライナの上にあるトルコ、ブラジル、台湾といった国々をグラフでは省略しているだけであり、2018年の場合はウクライナは世界13位だった。


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 本日も時間がなくブログのネタに窮しているのだが、時々更新しているこのグラフをお目にかけたい。全ロシア世論調査センターが毎週実施している、国民の主な政治家への信頼度のデータの中から、プーチンの数字を抜き出したものである。

 そもそもが、諸外国と比べて、国民一般のプーチンへの信頼度は高いレベルで安定しており、極端な変動は生じにくい。ただ、今年に入ってからの細かい動きに関して言えば、改憲提案と内閣交代でやや上昇、任期初期化の問題でやや低下、コロナ休業でやや上昇、しかしコロナ感染の拡大続きやや低下、戦勝記念日を境にやや上昇、といった意味合いを読み取れる。

 他方、私がプーチン政権の求心力を測るために参照しているもう一つの指標が、レヴァダ・センターの調査による国民のプーチンへの信認度というものである。こちらに関し気になるのは、上昇・低下というよりも、下に見るように3月で更新が止まってしまっていることである。コロナ問題で技術的に調査や集計ができなくなってしまったのか、はたまた政権当局から圧力でもあったのか、気になっているところである。

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 ウクライナにはかつてドニプロシナというタイヤ・メーカーがあったのだが、2013年に操業を停止しており、それ以降はキエフ州ビラツェルクヴァ市にあるロサヴァ社が唯一のメーカーとなっている。ロサヴァは鉄鉱石で有名なオリガルヒのK.ジェヴァホ氏が保有する企業だった。どういう秘訣があったのかは良く分からないが、ウクライナの製造企業としては例外的に堅調な輸出実績を誇り、ロシアをはじめとするCIS市場だけでなく、EUへの輸出も手掛けていた。

 ところが、そのロサヴァでは負債が膨らみ、2018年暮れに破産申請を行ったということである。こちらの記事によると、ロサヴァとしては民事再生を図りたいのだが、債券を安く買い取ったインヴェストヒルス・ヴェスタ(Инвестохиллс Веста)という投資会社がそれを妨害しているという。この記事は、おそらくロサヴァ側の言い分にもとづいて書かれたものなので、鵜呑みにしてはいけないが、記事によればインヴェストヒルスはロサヴァを清算し、工場を解体して手っ取り早く屑鉄として売り払おうとしているのだという。

 記事によると、ロサヴァにとって打撃となったのは、原料の80%を輸入に依存しそのコストが増大していること(ゴムからスチールコードまで輸入)。ウクライナ政府が製造業を支援してくれないこと、一連の諸外国がアンチダンピング措置を講じたこと、ロシアとの対立で同国の市場を失ったこと、直近ではコロナ危機が加わったこと、だという。そうした中でも、ロサヴァ社は3,000人の雇用を維持して給与を支払い、納税も続けているのだという(普通なら有利子負債の返済を優先するのではないかという気もしないでもないが)。

 私は、ロサヴァがしぶとく生き残っている秘訣は、国内で原料を調達できるからではないかと推測していたのだが、現実には80%輸入依存ということであり、違ったようだ。なお、記事ではロサヴァがロシア市場を失ったと書かれているが、下の表に見るとおり、それは事実に反しており、苦戦している様子はあるが、ロシア市場への輸出も続けられている。ウソはいかんよ。

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 60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返ってみようのシリーズ。画像はクリックまたはタップで拡大します。

 今週は、Ricky NelsonのYoung Emotionsをピックアップしてみたい。この週の12位が最高位だったから、特大ヒットというわけでもない。しかし、個人的には、御多分に漏れずヤマタツのサウンドストリートでオールディーズを学んだクチであり、リッキー・ネルソンが亡くなった時にヤマタツが追悼特集をして、確か最後にかけたのがこの曲だった。個人的には、そういう思い入れがある。


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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「『専門家』を疑え」です。よかったらご笑覧ください。

 コロナ危機で、自宅待機を余儀なくされる人が増え、流行ったものの一つに、「ブックカバーチャレンジ」というものがありました。ただ、私は友達がいないせいか(笑)、誰からもオファーを受けませんでした。そこで、誰にも頼まれてもいないのに、勝手に一冊紹介してみたいと思います。永井陽之助『現代と戦略』(文藝春秋、1985年)です。この名著から、新型コロナウイルス拡大防止策への教訓を引き出してみたいと思います。


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 ロシア・ヤマル半島の天然ガス産地から、ベラルーシ、ポーランドを経由して欧州市場に至る「ヤマル~欧州天然ガスパイプライン」というものがある。稼働したのは1999年だった。ただ、通過国のポーランドとロシアの政治関係は緊張をはらんでおり、そのあたりについてこちらの記事が論じているので、以下要点を整理しておく。

 ガスのトランジット輸送に関するガスプロムとポーランドの歴史的な25年契約が、5月17日に満了した。今後も同パイプラインを通じた輸送は続けられるが、それを取り巻く環境は変容している。

 パイプラインのロシアおよびベラルーシ領部分の所有者はガスプロム、ポーランド部分はEuRoPol Gaz、ドイツ部分はWINGASである。輸送能力は年間329億立米で、トルコストリームのそれに匹敵する。建設当時は唯一のウクライナ迂回ルートであり、それゆえにポーランドを含むすべての当事国が建設に利益を見出した。オレンジ革命後のウクライナの立ち位置もあり、パイプラインはスケジュール通りに建設された。2009年のロシア・ウクライナガス戦争の際も、被害を受けた中東欧諸国と比べ、ドイツやポーランドはヤマル~欧州PL経由で通常通りの輸入を続けられた。

 しかし、2011年にはノルドストリームの1列目が完成し、550億立米の輸送能力が加わったことで、ウクライナやポーランドの「半独占者」としての地位は失われた。ノルド1の能力が充分ではなかったことから、その2国、特にウクライナは一定の意義を保ったが、低減したことは間違いない。トルコストリームも完成した。ポーランドは、政治的影響力の低下が生じると懸念し、ノルドの建設には真っ向から反対したし、現在もノルド2に反対することに全力を傾注している。

 ウクライナと異なり、ポーランドがヤマル~欧州PLのトランジットから得ている収入は少額であり、年間2,100万ズロチを超えることはない。ただし、その代りポーランドにはパイプライン会社の株式の52%が与えられた。1996年の契約で、ポーランドは2022年までガスプロムから年間100億立米を購入する義務を負った。2012年には追加契約が結ばれ、ガス価格の10%引き下げが取り決められた。だが、2016年2月にポーランドはストックホルム仲裁裁判所にガスプロムを訴え、欧州価格に見合った価格の導入を求めた。2018年6月にポーランドPGNiGは暫定的な勝訴を発表し、2020年3月には最終的な勝訴を発表した。ポーランド側は、従来の価格は非市場的なもので、今後は西欧市場に見合った新たな価格に移行するとともに、2014年以降の差額15億ドルを返還すべきとしている。ただし、ガスプロムはその2つとも今のところ履行していない。

 こうした背景を考えると、ガスプロムとPGNiGがヤマル契約を更新するとは考えにくく、両者とも契約延長の意向はなく、交渉も行われていないという。ガスプロムとしてはノルド2、トルコストリームの開通をにらんでおり、2019年末にウクライナ・ナフトガスとの契約も結ばれたので、ポーランドとの新たな長期契約は不要である。ポーランド側は政治的な動機であり、その他の供給源からのガス調達比率を増やして、ロシアからのエネルギー独立の路線をとっている。多様化の手段としては、米、カタール、ノルウェーからのLNG購入増や、デンマークからのガスパイプラインを建設しノルウェー産ガスを購入する計画もある。

 なお、トランジット契約満了後は、ポーランド領パイプラインの利用は、利用予約をオークションで販売する形で行われる。一方、ポーランドがロシア産ガスの購入を完全にやめることはないだろう。その他の供給源からの調達可能性を手にしたら、今後は商業的な観点を重視するようになり、条件が有利ならガスプロムからの購入を続けるということになるだろう。


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 ベラルーシはEUと無協定状態が続いており、形式論から言えば旧ソ連諸国の中でEUと最も疎遠な国の一つということになる。しかし、現時点で関係がきわめて険悪かというと、そういうわけでもなく、むしろ実務的には粛々と協力しているという印象が強い。そして、2020年1月8日には、ビザ制度の簡素化に関する協定がベラルーシ・EU間で調印されるという注目すべき進展があった。

 こちらの記事によると、欧州連合理事会は5月27日、ベラルーシとのビザ簡素化協定を批准する決定を下した。ベラルーシ側はすでに批准を済ませており、協定は7月1日に発効することになった。協定により、大部分のベラルーシ市民がEUの(シェンゲンの?)ビザを取得する際の手数料は80ユーロから35ユーロへの引き下げられ、ビザ発給についての決定が10日以内になされ、非商業目的の渡航に際し無料でビザが発給される理由の一覧が拡大される。一方、EU側の市民がベラルーシに滞在できる日数は、90日から180日に拡大される。


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 忙しく、ブログのネタに困った時に、ロシアのメディアの図解資料を紹介してお茶を濁すということを、時々やる。今回は、こちらのページに、ロシア人の好きなロシア料理・嫌いなロシア料理というものが出ていたので、それを拝見してみる。

 赤っぽい色が好きという回答、青が食べたくないという回答であり、赤の比率が高い順に整理すると、以下のようになる。

  • ブリヌィ:94%
  • ペリメニ:90%
  • ピロシキ:89%
  • オクローシカ:81%
  • ラステガイ:80%
  • 黒パン:79%
  • ザワークラウト:75%
  • カツレツ:73%
  • プリャーニク:68%
  • シチー:62%
  • 肉のゼリー寄せ:39%

 うーむ、ボルシチもサリャンカもウハーもビーフストロガノフも入っていないが、どう理解したらいいのか? まさか、ボルシチはウクライナのものだと認めたのだろうか。いずれにしても、個人的には粉ものが苦手であり、ブリヌィのようなお菓子っぽいものがトップに来る感覚が、どうもピンと来ない。上に挙がっているもののなかでは、シチーなんか結構好きだが、順位はずいぶんと低い。


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512

 GLOBE+に、「ロシアは少なくともあと2年は財政破綻しない」を寄稿しました。

 ロシア経済の屋台骨を支えるのは、石油と天然ガスの輸出です。ロシアは連邦予算の歳入の半分近くを、石油・ガス関連の収入で賄っている国。2020年に入り、コロナ危機で世界的にエネルギー需要が低下し、一時期のOPEC+の減産協議不調もあり、石油価格が暴落しました。このことは当然、産油国ロシアにとって痛手であり、財政を厳しくします。

 ロシアの事情をあまり良くご存知でない論客の中には、「油価下落でロシアが破綻寸前」といった短絡的なことを述べる向きもありました。しかし、実際には、ロシアの財政には一定のバッファーがあり、今すぐにどうこうなるわけではありません。


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510

 今日もまた自動車の話で恐縮。ロシアからの乗用車輸出の詳しいデータというのは、意外とまとまったものがなく、苦労する。業界の会報であるASMホールディング資料にそれらしきデータは出ているのだが、それにはユーラシア経済連合向けの数字が含まれていないという、大問題がある。ロシアの乗用車輸出は、大部分がユーラシアのパートナーであるベラルーシやカザフスタン向けなのであって、それを除外してしまったらほとんど意味がないのだ。

 その点、ヴェードモスチのこちらの記事には、ロシアのメーカーというかブランド別の輸出台数が出ており、有益であった。なお、外資系のメーカーも含んでいる。これによると、各メーカーの2019年の輸出台数(ユーラシア経済連合域内輸出も含む)は、以下のとおりであったという。ただ、これにしても、トヨタとかヒュンダイとか見当たらないし、網羅的ではない。

  • AvtoVAZ(Lada):約50,000台
  • フォルクスワーゲン・グループ:24,600台
  • ルノー:15,785台
  • UAZ:5,720台
  • 日産:4,168台

 PS:こちらの記事によれば、ロシアからのトヨタ車の輸出は、2019年に約8,900台。

 こちらおよびこちらの記事によれば、ロシアからのヒュンダイ車の輸出は、2019年に約17,000台。


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 また、誰も興味のないようなベラルーシ自動車産業の話で恐縮である。最近でこそ、ベラルーシの乗用車生産の主軸は、中国との合弁のベルジー社となっている。しかし、それ以前から存在したユニゾン社の存在も忘れてはならない。元々は米フォードがベラルーシ政府と合弁で工場を開設したものだったが、フォードのプロジェクトが頓挫し、2000年に英国企業が買い受けて新たにユニゾン社が誕生した。一時はイラン・ホロド社のモデルを生産したりもしていたが、ここ数年は中国の浙江衆泰控股集団のZotyeというブランドの乗用車(上掲写真参照)を生産し、基本的にロシア市場に供給してきた。

 こちらの記事が伝えているように、ユニゾンはZotye車をロシア市場に、2017年には1,088台、2018年には3,175台、2019年には1,373台供給したが、2020年4月になって今後Zotye車はベラルーシからでなく中国から供給されることとなり、ユニゾンでの生産は終了となった。これは、ユニゾンは当初はアセンブル用の部品輸入に優遇関税を適用されていたが、2018年にその措置が打ち切られ、その後も残っていた優遇措置の割当を使い切ったことにより、ロシア市場での競争力が低下したからである。

 ベルジーの場合も、ロシア市場への輸出を当て込んで、年産6万台の計画を立てていたのだが、現実にはロシアでの販売が伸びず、2019年の生産は2万台強に留まった。ロシア市場向けの生産拠点をベラルーシに設けるというビジネスプランは、一見上手く行きそうで、実際には失敗することが多い。


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 ベラルーシの乗用車(新車)販売台数については、なかなかまとまった信頼できるデータがないが、上に見るのはこちらに掲載されているベラルーシ自動車協会の発表データである。2019年は、前年ほどの急増ではなかったが、一応販売の伸びは続き、64,504台を記録したということである。ただ、これは協会加盟企業による販売のみをカウントしたものであり、どこまで網羅的なのかは判然としない。

 それで、関係者が2019年の新車販売に悪影響を及ぼした要因としてやり玉に挙げているのが、2019年4月の大統領令である。こちらに見るとおり、2019年4月10日付の大統領令第140号により、身体障害者、多子家族という社会的弱者が外国から中古車を輸入する際には、関税および税金の支払を半減するということが取り決められたのだ(4月13日発効)。しかし、「個人使用目的に限る」とされていたにもかかわらず、現実には優遇条件で輸入された中古車を転売するビジネスが発生し(容易に想像できることである)、社会的弱者を反社会的行為に巻き込むという嘆かわしい状況が発生しているという。ベラルーシ自動車協会のS.ミフネヴィチ会長はこちらの記事の中で、2019年にこのスキームで輸入された中古車は2万台に上ると指摘している。


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 60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返ってみようのシリーズ。画像はクリックまたはタップで拡大します。

 今週は何と言っても、1位にまで登り詰めたEverly BrothersのCathy's Clownを取り上げなければ、バチが当たるだろう。インディーのケイデンス・レコードから、大手のワーナーブラザーズに移籍し、第一弾シングルでしっかり結果を出すのだから、さすがはエバリー、さすがはワーナーといったところである。


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 この5月20日をもって、ウクライナのゼレンスキー大統領が、就任から1周年を迎えた。せっかく議会選挙で大勝して、自派で固めたホンチャルーク内閣を発足させたのに、わずか半年でその内閣を差し替えるハメになったのは、誤算だった。さすがに、国民のゼレンスキーへの圧倒的な支持は、薄らいできている。それでも、個人的には、思ったよりも意外に持ち堪えているという印象の方が強いかもしれない。

 こちらのサイトに、ゼレンスキー大統領の1年間の業績を数字で示した図解資料が出ていたので、紹介することにする。まず上に見るのが内政面での仕事振りであり、193の法律に署名して成立させたとか、45回の地方訪問をこなしたとか、そういったことがまとめられている。

 下に見るのは、外交面での業績である。数字は、公式訪問、会談、電話会談、現地外交団との接見といった形で、様々な国や国際機関と接触した回数を示している。日本とも8回接触と、思いのほか多い。

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 こちらの記事が伝えるところによると、カザフスタン最大のテンギス油田では、作業員の新型コロナウイルス感染の拡大で、採掘が停止される恐れがあるという。同国の医療担当高官A.エスマガンベトフがこのほど明らかにした。

 カザフスタン全体の感染確認が6,969人であるところ、テンギスでは935人の感染者が確認されている。テンギスでは現在、政府委員会が感染者数低下に向けた活動を行っているが、もしも思うように感染者が減らないと、テンギスシェヴルオイル社による採掘停止が不可避になる。すでに、同社の作業のうち不要不急に属するものについては、従事する人数を一時的に減らして対応している。テンギスシェヴルオイルでは当初、年産2,900万tだった生産能力を段階的に1,200万t高める拡張を計画していたが、油価下落を受けこの4月に3億ドル投資を来年に延期していた経緯がある。


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 先日、「ロシア乗用車輸出 ユーラシア向けが大部分だが、統合の効果は?」というエントリーをお届けした。せっかくだから、乗用車(HS8703)だけじゃなく、貨物自動車(HS8704)輸出のグラフも作ることにした。

 貨物自動車の輸出も全体像は乗用車とだいたい似通っており、ユーラシア経済連合域内市場を中心とした輸出となっている。ただ、乗用車と違い、貨物自動車ではベラルーシも一大輸出国なので、両者間の利害はより一層複雑なものとなる。乗用車と異なり、貨物自動車では、ユーラシア経済連合発足後、キルギスやアルメニアへの輸出にも一定の伸びが見られる。乗用車と異なり、貨物自動車では、EUへの輸出実績はほとんどなく、その代り「その他世界」への輸出が少なくない。ただ、その中には一定量、新興国・途上国向けの軍用車両も含まれているはずである。なので、相手国によっては単価が不自然に高いケースが出てくる。たとえば、2019年にザンビア向けの貨物自動車輸出が急増しているが(特に金額面で)、これなどは明らかに軍需であろう。


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0110

 GLOBE+に、「巣ごもりの味方フードデリバリーがロシアでも急成長」を寄稿しました。

 コロナ危機で、長い巣ごもり生活を強いられているロシアの人々。そんな彼らにとって、強い味方となっているのが、フードデリバリーサービスです。出来上がった食事を自宅や職場に届けてくれるフードデリバリーサービスは、諸外国と同じように、ロシアでも数年前から成長していました。それが、今般のコロナ危機で、さらに加速しているようです。4月に入り、休業を余儀なくされた多くの外食店が、デリバリーに参入。市民のデリバリーサービス利用も、危機前と比べて数十%増えているようです。


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495

 時々、当ブログに載せるこのデータ。しばらく、全ロシア世論調査センターによるデータ更新が滞り、「クレムリンからクレームがつき更新できなくなったのか?」などと邪推したが、このほど一気に3週間分のデータが掲載されたので、更新したグラフをお目にかける。

 政府のハードな対策にもかかわらず、一向にコロナ感染者が減らないということで、4月に国民のプーチンへの信頼度は低下する方向にあったが、最新の5月10日の調査では、プーチン支持が少しだけ持ち直したように見える。思い当たる要因は一つだけであり、大規模式典が延期されたとはいえ、5月9日の対独戦勝記念日でプーチンが献花した様子などを見て、国民がプーチン好感度をわずかながら高めた、といったところではないか。


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469

 「ちょっと用事があってこんな図表を作ってみた」シリーズで、今回は、ロシアの乗用車輸出相手国・地域を跡付けたグラフである。

 この数年間で、なかなかドラマチックに変化している。ポイントを整理すれば、こんなところか。

  • ロシアの乗用車輸出(ロシアブランド、外国ブランド、両方ある)は、ユーラシア経済連合のパートナーであるベラルーシとカザフスタン向けが圧倒的な割合を占める。しかし、ベラルーシ向けは順調に拡大しているものの、カザフスタン向けはユーラシア経済連合が成立した2015年以降、かえって縮小している。これは、カザフスタンが2015年11月30日にWTOに加盟した結果、カザフの乗用車輸入関税がユーラシア共通関税率の25%から、WTO加盟条件の15%に引き下げられ、カザフ市場でロシア生産車がその他の国からの輸入品とのより厳しい競争を迫られるようになったからだろう。
  • ユーラシア経済連合には、その他にもキルギス、アルメニアという加盟国があるが、小国で購買力も低いので、ロシアからの乗用車輸出は微々たる量。
  • かつては「その他CIS」も重要な輸出先だったが、その最大の市場はウクライナであり、政治関係の対立から2014年以降激減した。
  • 2015~2016年頃から、EUをはじめとするCIS域外への輸出もそれなりの規模になっている。これは、ロシアの経済危機、油価下落などを受けロシア・ルーブルが下落し、ロシア生産車がCIS域外でも一定の価格競争力を持つようになったからである。

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