ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

 こちらのニュースによると、メドヴェージェフ大統領のブレーンの一人がメドヴェージェフ氏に、来たるプーチン政権で首相に就任することを取り止めるよう、進言したとのことである。

 記事によると、「現代発展研究所」のイーゴリ・ユルゲンス所長は過去4年間、メドヴェージェフ大統領の知恵袋の役割を務めてきた。そのユルゲンス所長が今般、Bloomberg通信とのインタビューで、メドヴェージェフ氏はプーチン大統領の下で首相に就任すべきではないとの見解を示した。ユルゲンスによれば、クドリンの方が専門家としての定評があり、またプーチンにも信頼されているので、過渡期の首相としては理想的である。

 ユルゲンスの進言は、少なくとも3つの意味で衝撃的である。第1に、首相ポストはプーチンにより、統一ロシアの党大会で提示された。プーチンはそれ以来、一度も立場を変えておらず、メドヴェージェフも実質的に「拡大政府」での活動を始めている。今から首相職を断るとすれば、プーチンへの対応として不適切だし、メドヴェージェフが拡大政府に招いた人々に至ってはなおさらである。効率政治基金のG.パヴロフスキー所長は、メドヴェージェフは公の場で首相職を約束されたのであり、もしもそのポストを断ったら、メドヴェージェフに対する圧迫が強まり、職務をこなせなくなると指摘している。第2に、国家権力体系で首相に匹敵するポストはなく、仮に首相に就かないとなると、では何の仕事をするのかという問題が生じる。第3に、ユルゲンスはメドヴェージェフが首相職をクドリンに譲ることを提案しているが、両者の関係は2011年9月に損なわれ、それ以来悪化を続けている。

 ユルゲンスによれば、問題は首相としての能力ではなく、メドヴェージェフが大統領から退任したあとの、今後の政治的キャリアである。ユルゲンスはこれまでも、メドヴェージェフの大統領再選を支持する旨公言しており、メドヴェージェフが自立した政治家としてとどまるためには、プーチンによって任命されるのではなく国民に選出される必要があると訴えていた。ユルゲンスにとって決定的だったのは、プーチンが新聞紙上で発表している政策論文であり、これらはメドヴェージェフの立場と合致せず、メドヴェージェフが首相になったらロゴジン、セーチン、スルコフらの起草したこれらのプログラムを実施しなければならないことだったという。

 ただし、ユルゲンスが現在の政府の顔ぶれを問題視していることは、説得力が乏しい。2008年に大統領選に勝利したメドヴェージェフが、首相に就任するプーチンと、政府・大統領府の人事について双方納得行くように調整したように、現在も同じような調整が可能なわけで、メドヴェージェフが首相職を拒否したらむしろ人事に関与できなくなる。

 あるいは、政治家のB.ナジェジンが指摘しているように、現在は誰が首相に就いても不人気な政策を実施せざるをえず、ユルゲンスはそのことを問題視しているのかもしれない。評論家のYe.ミンチェンコも、メドヴェージェフは国民の支持率が下がることが請け合いの首相ではなく、別の形で政界に戻ってくるかもしれないと指摘している。一方、ヤブロコのS.イヴァネンコは、すべての指令は遂行される、あるのは1つのチームであり、現政権に多様な理念潮流があるというような幻想を抱くべきではない、3週間後には明らかになるように、メドヴェージェフはきっと首相になる、と述べている。

 UEFAチャンピオンズリーグ2011/2012シーズンの決勝トーナメントが始まり、CSKAモスクワは2月21日、ホームにレアル・マドリッドを迎えた。結果は1対1のドロー。得点源のヴァグネル・ラヴが抜けて得点力低下が懸念され、また長いウィンターブレークで試合勘が鈍っていることが心配されたたCSKAだったが、見た感じ、良い準備ができているようだった。ただ、相手陣までボールを運ぶことはできても、アタッキングサードに入るとレアルの強固な守備に跳ね返され、試合を通じて決定的なチャンスはほとんど作れなかった。対するレアルは、氷点下の人工芝の上で(大寒波が続いていたモスクワだったが、この夜はマイナス5℃くらいだったらしい)、本領を発揮するには程遠かったものの、スイッチが入った時の攻撃の鋭さは、やはりCSKAの比ではないなという印象だ。

 レアルが前半に挙げた1点を守りきるかと思われたが、後半23分に本田が投入されるとCSKAにビルドアップのリズムが生まれ、サイドからの攻撃がレアルを脅かし始める。結局、ロスタイムのラストプレーでCSKAに劇的な同点ゴールが生まれ、試合はドローに終わった。

 レアルにとっては、試合終了間際に同点弾を喫したのは精神的にショックだろうが、客観的に考えれば、アウェーゴール1つを奪っての引き分けは、2レグに向けて圧倒的に有利な状況。正直、スルツキー監督のチームに、これ以上の伸び代はなく、マドリッドではレアルが本領を発揮して完勝する可能性が高い。CSKAが波乱を起こせるとすれば、これは日本人としての贔屓目で言うのではなく、本田が完全復調して大活躍するようなケースに限られるだろう。

 テレビで観ていて、印象に残ったのは、モスクワのサポたちが随分行儀良くしているなということ。グループステージではロケット花火をピッチに向けて打ち込むような愚か者もいたが、UEFAから相当強力な指導が入ったのではないか。この日は、ルジニキ・スタジアムがほぼ満員の7万人の観衆で埋まったが、こちらのニュースによると、治安維持のために3,000人の警官隊が投入され、試合中に秩序を乱した観客が70人以上拘束されたということだ。

 こちらのニュースによると、(信任状奉呈でベラルーシを訪れたのだろうか?)日本の駐ロシア大使で駐ベラルーシ大使も兼務する原田親仁大使が2月20日ベラルーシのV.セマシコ第一副首相と会談を行ったということである。

 記事によると、セマシコ第一副首相は、概略以下のように述べたとのこと。すなわち、両国間では石油化学の協力が有望である。ベラルーシは石油をロシアから輸入していることは事実だが、優遇的な条件であり、ロシア側の輸出関税なしで、量の制限もない。両国はエネルギー、とりわけ再生可能エネルギーの分野でも協力可能で、これは両国にとって差し迫った課題だ。医薬品、ハイテクの分野でも協力の可能性を探りたい。自動車生産の共同プロジェクトも可能であり、また日本に食料品を輸出したい。日本がチェルノブイリ被害の克服に真っ先に手を差し伸べてくれた国であることからも、ベラルーシとしても日本のフクシマの被害克服に協力したい。ベラルーシがロシアおよびカザフスタンとの関税同盟、共通経済空間を形成していることからも、日本との協力の可能性は増大する。

 これに対し原田大使は、概略以下のように応じた。すなわち、ベラルーシがフクシマの被害除去に協力する姿勢を示してくれていることに感謝する。日本はベラルーシの政府および国民から支援を受け、そのことにつき非常に感謝している。両国間には経済協力を拡大する可能性がある。関税同盟および共通経済空間創設にも関連して、日本企業のベラルーシへの関心は高まっている。

 驚いたことに、こちらのリリースによると、ロシアの航空会社S7が、ロシア極東のウラジオストクおよびハバロフスクと東京とを結ぶ定期航路を開設するとのことだ。3月の下旬に就航し、それぞれ週に2便が設けられるという。スケジュールは下記のとおり機材はエアバスのA320であり、定員158名とのことだが、そんなに需要があるのかという疑問も。

No.出発到着曜日機材
ウラジオストク→東京S7-56514:2514:40_2___6_A320
東京→ウラジオストクS7-56615:4020:15_2___6_A320
ハバロフスク→東京S7-56714:00
17:00
14:40
17:40
1______
____5__
A320
東京→ハバロフスクS7-56815:30
18:30
20:05
23:05
1______
____5__
A320

 こちらのサイトに、大統領選を前にしたばらまき公約が、ロシア財政を圧迫する危険を指摘した『ジェーニギ』誌の記事が掲載されているので、その要旨を以下のとおり簡単に紹介しておく。

 先日ロシア軍参謀本部のN.マカロフ将軍が、国防省はもう5年間も新たな火砲を調達していないという不満を語ると、D.ロゴジン副首相がその援護射撃をして、早速翌日プーチン首相がお得意の調停者の役割を果たすべく乗り出すという一幕があった。首相は、セルジュコフ国防相および(有力な軍需企業の)ウラル鉄道車両工場のO.シエンコ社長と面談したのである。

 ばらまきは国防だけでなく、医療、教育、インフラ、年金、税制などで乱発されており、相互に整合しない数字が飛び交い、タガが外れた状態である。付加価値税の税率およびフラット制の維持を今日唱えていたかと思えば、翌日には引き上げや累進課税を語ったりする。優先分野は高等教育であると今日言っておきながら、翌日には宇宙、その翌日にはサッカーと言い始める。選挙戦がたけなわで、大衆迎合主義が頂点に達しているのだろうが、多くの公約は財政の現実の可能性と合致せず、財政過程を麻痺させかねない。

 首相から歳出拡大の約束を取り付けていない省庁は一つもないといった事態に、もうすぐなりそうである。ロビイストたちの陳情をすべて満たしてあげるような芸当は、クドリン前副首相・蔵相にすら不可能だろう。ただ、クドリンは最低限の財政規律を保持できるという点で、プーチンの信頼を得ていた。その点、シルアノフ現蔵相には荷が重く、現在の真空状態に対処するのは容易ではあるまい。

 よしんば、財源が足りたとしても、それを獲得する方法が腐敗的なものにならざるをえないというのが問題だ。昨年の国防発注にしても配分メカニズムの不備に加えて、古臭いドグマにもとづくものだった。同じことは経済に関しても言え、サッカーから自動車産業に至るまでいっぺんにあらゆる分野に資源を投入しようとしており、これは今日の国際分業にマッチしていない。ただ、特定の成長分野に特化しようとすると、国民向けに難しい説明を迫られることになり、それは今日のロシアの権力者のスタイルではなく、選挙前となればなおさらである。

 すべての公約を実行するのは不可能だが、ポピュリズムと財政的統合失調症はますます強まるだろう。選挙公約を実施するうえでの基盤となるのは来年に向けた予算教書だが、その策定は頓挫した状況にあるという。結果として、財政・税制が立ち行かなくなり、一つの公約を実施しようとするとその他の公約が全部損なわれ、それでなくとも危うい政権とビジネスの関係、中央と地域の関係が崩れてしまうことになりかねない。

 私などが申し上げるまでもなく、グーグルの翻訳機能を利用している方は、多いであろう。実を言うと、私自身はこれまで使ったことがなかった。ただ、前のエントリーに書いたとおり、今般「ウクライナの電力事情と新エネルギー」というレポートを執筆し、その際にどうしてもウクライナ語でしか読めない資料というものがあった。最初は分からない単語を調べたりしながらウクライナ語のままで根性読みしていたのだが、あまりにももどかしいので、そう言えばグーグルで翻訳ができるらしいなということを思い出し、初めてこれを使ってみたのだった。

 結果は大正解。たとえば、英語やロシア語をグーグルで日本語に翻訳しようとしても、構文その他もろもろが違いすぎるので、あまり芳しい結果は得られない。ところが、グーグルでウクライナ語をロシア語に翻訳すると、両者は語彙ではほぼ一対一の対応関係にあるし、構文なんかもほとんど同じだから、ほぼ完ぺきな翻訳結果が得られるのである。まるで狐につままれたような思いであった。

 2年位前に、ウクライナ語を習得するという目標を立てたものの、その後忙しくて着手できないでいる。そうしたなか、今回グーグルの自動翻訳の威力を見せ付けられたら、ウクライナ語習得の決意がだいぶ揺らいでしまった。

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 私が担当を編集している『ロシアNIS調査月報』2012年3月号が発行されました。「新時代を模索するロシア・NISの電力産業」という特集号になっています。私は「ウクライナの電力事情と新エネルギー」というレポートを執筆しました。また、特集の枠外では、「大統領候補プーチンの動き」というレポートも書いています。

  調査月報では、2007年1月号で「ロシア・NIS諸国の電力部門」と題する特集をお届けしたことがありましたが、それ以来の電力特集号となりました。ただ、2010年7月号では、「ロシア・NISの原子力ルネサンス」と題し、原子力にフォーカスした特集を組んだことがありました。今にして思えば、問題意識が未熟なままで当該の特集を出してしまったという後悔もあります。そこで、今回の電力特集では、ポスト・フクシマ的な観点もなるべく取り入れ、原子力や新エネルギーの諸問題も視野に入れた形での特集を試みた次第です。

 こちらのニュースによると、ロシアのメドヴェージェフ大統領は2月15日、既成政党の代表らを自らの公邸に招き、政治改革に向けた意見交換を行った。その結果、ヴャチェスラフ・ヴォロジン大統領府第一副長官を座長とする作業グループを設置することが決まった。

 しかし、政治改革以上に注目すべきは、メドヴェージェフが将来の大統領返り咲きに意欲を見せたことである。会合に出席した公正ロシアのN.レヴィチェフによれば、会合の締め括りの発言のなかでメドヴェージェフ大統領は、「私は去るつもりはないし、大統領に立候補することを考えている。大統領選の選挙戦の一環として、皆さんと喜んでお会いしたい」と述べたとのことである。メドヴェージェフは以前にも一度、モスクワ大学のジャーナリスト学部の学生らとの対話の席で、自らの将来的な大統領選出馬がありうるとの立場を示していたが、それを改めて表明した形となった。

 ただし、今回の発言につき、政治工学センターのマカルキン副首長は、「メドヴェージェフは、自分が政界に残るということを誇示しようとしているだけで、本件につき本格的な合意がなされてはいるとは思えない。現在メドヴェージェフは、自分が政界で一目置かれないようになってしまったことを気にかけており、それを何とかしたいと思ったのだ」と指摘した。

PUT250 大統領選に立候補しているプーチン首相が五月雨式に発表している政策論文シリーズの第6弾が出た。今度は国家安全保障をテーマとしており、2月20日付の『ロシア新聞』に掲載されたようだ。こちらのサイトでそのテキストを読むことができる。これまでの5つの論文は民間の新聞に掲載されていたが、第6弾にして初めて、政府機関紙である『ロシア新聞』が媒体として選ばれた形。

 余力があれば、追って内容にも踏み込んでみたいが、取り急ぎ。

 ロシアの「世論基金」のA.オスロン会長が、『アガニョーク』誌のインタビューに応じているので、その発言要旨を以下のとおりまとめておく。

 2011年にプーチンの支持率が落ち込んだのは、急激というよりも段階的に進んだ。最初は、年初にすべてのロシア国民にかかわる物価の値上げという出来事が起こり、その結果プーチン=メドヴェージェフのタンデムおよび与党への支持率が下がった。こうした大きな出来事は、世界経済危機の影響を受けた2009年以来のことだったが、2009年当時は危機は国外から到来したもので政権は悪くないと受け止められ、この脅威に対処できるのはタンデムだけだと考えられた。その次に世論に多くな影響を及ぼしたのは、秋にタンデムの大統領と首相の「入れ替わり」が明らかになり、メドヴェージェフが二番手の役割に後退することになり、このことが一部ロシア国民の期待に反していた。

 これまでプーチンが成功してきた最大の原因は、彼が常に世論の求める声と共鳴していたことである。2000年には、カオス・崩壊を克服するというものだった。2003~2004年には、国民は自らの物質的な生活を豊かにしたいと願っていた。プーチンは、資産、外貨準備、予備基金について語るビジネスマンに身軽に変身してみせ、国民の期待に応えた。2007年末~2008年初頭には、新生ロシアが最も幸福だった時期で、道が外車で渋滞するようになったり、国民が普通にトルコやエジプトに保養に出かけたりできるようになったのもその頃で、当時は誰もが安定を望んでいた。

 ロシア国民が、安定志向から、急に改革を渇望するようになったというような、急転換が生じたわけではない。ロシアでは安定というものについての理解が、最初から不正確だった。安定とは、停滞の同義語ではない。世論基金では、国民の安定というものについての態度を評価したが、ロシア国民は物事が常に良くなり続けることを安定だと思っているということが分かった。タンデムの出現は国民に歓迎され、プーチンは安定した中心で経済を取り仕切り、メドヴェージェフは未来について語り、青少年に語りかけ、当時支持率は急増した。社会には刷新に対する期待が高まり、すべての社会グループが新しいものを求めた(グループによって求める新しいものは違ったが)。

 「入れ替わり」により、皆が失望したというわけではない。今回の大統領選の特徴は、社会が積極派と消極派にくっきりと二分されていること。積極派は15~20%、消極派は85~80%程度。入れ替わりに失望したのは積極派。積極派とは、職業的な野心を持った人々であり、すべての地域にいるが、大都市に多い。ゆえにモスクワにおけるプーチンの支持率はせいぜい35%で、他方で農村では少なくとも55%。一頃、これらの積極派がメドヴェージェフを支持していた時期があったが、メドヴェージェフが脇役になってしまったことで、彼らは自分たちの代表が政権にいないと感じるようになった。それにより社会的不満が鬱積するようになり、それが「誠実な選挙を求めて」という集会となって表れた。選挙の不正に対する抗議は、不満を表明するためのきっかけにすぎなかった。国民の最大の不満の種は、ロシアで勢いを増すばかりの無法状態。他のビジネスマンからカネをかすめ取ろうとする役人=ビジネスマンが、増殖しており、司法もそれとつるんでいる。こうした状況に、積極派の国民は愛想を尽かしている。むろん、積極派が全員ビジネスマンとは限らず、腐った連中の下で働くことを余儀なくされている芸術家や公務員もいるが。一方、反政府集会には貧困層の国民も見られるが、彼らは貧しさゆえに常に不満を表明したい気持ちがあり、たまたま現在反政府運動が盛り上がっているから参加したというだけ。これに対し、消極派の国民は、上述のような問題に直面しておらず、積極派が何に不満を抱いているのか理解できない。これは損得の問題ではなく、生活様式の違いによるものなので、理解不能。

 プーチンの支持率が12月の末から上昇していることは事実で、現在49.5%。有権者が、誰に入れようかと考え始めるところで、まずプーチンのことを思い浮かべるのだから、これは当然予想されたこと。ジュガノフとジリノフスキーに新味はなく、ミロノフとプロホロフは泡沫のまま。プロホロフは一時期、不満票を集めるかに見えたが、右派政党での失敗と、言っていることが本気なのかどうか分からない散漫なキャンペーンのせいで失速しつつある。したがって、プーチンの勝利は疑いないが、それでも政権側は反政府集会のことを大いに意識しており、現在、どのように新しい社会の要請に応えようかと苦慮しているところ。政権側は、自らがどのように応じるかで、自分たち自身にとっても、ロシアにとっても、大きく左右されるということを理解している。

 こちらのニュースによると、中国の家電メーカー「ハイアール・グループ(海爾集団/Haier Group)」は、ロシア・スヴェルドロフスク州のニジニタギルに合弁企業を設立してそこで家電生産を行うことを検討している。スヴェルドロフスク州行政府の広報部が2月15日明らかにした。

 ハイアールのロシア・CIS市場担当者は、「スヴェルドロフスク州はヨーロッパとアジアを結ぶ有利な地理的条件を占め、交通網も発達している。しかも近隣地域には他に家電メーカーはない。我が社はロシアでの生産現地化を望んでいる。ハイアールは環境面に対応した生産を行う」などと発言した。

 工場の建設地につき、ミシャリン・スヴェルドロフスク州知事は、ニジニタギルを推しており、ニジニタギルは鉄鋼業の企業城下町であり、そこに新たな工場を建てることは、市の経済の多様化に資する、と述べている。

 本件はロシア連邦経済発展省も支援しており、連邦政府のクラスター戦略の一環としてその候補地を選定するうえでパイロット・プロジェクトに指定する用意があることを示している、ということである。

 以上がニュースの概要である。ただ、ハイアール側がスヴェルドロフスク州を候補地域の一つとして検討していることは事実だろうが、まだそれほど突っ込んだ話ではないようだ。特に、ニジニタギルというのは、スヴェルドロフスク州側が勧めているというだけで、ロシアの産業・地域政策上の都合で出てきた話だろう。以前HPのエッセイで書いたことがあるが、私が実際にニジニタギルを訪問した際の印象から言うと、同地はかなり奥地にあり交通の利便性は良くないというのが、私の率直な意見だ。

 こちらのニュースによると、2月17日に世銀とウクライナによる2012~2016年のパートナーシップ戦略が調印されたが、その中で世銀が、IMFとウクライナのスタンドバイクレジットによる協力関係が決裂の危機に直面していることを警告している。

 スタンドバイ・プログラムは151.5億ドルのクレジットをうたっており、すでに2回のトランシュで34億ドルが融資されているが、2010年12月を最後に停止されている。IMF側は家庭向けのガス価格の引き上げを主張しているが、ウクライナ政府が難色を示している。ウクライナは以前のクレジットの返済をIMFに対して行わなければならず、2012年には37億ドルの支払が必要。このままでは債務リスケを迫られるリスクが高まると、世銀は警告している。

 世銀では、本年に議会選挙を控えているなかで、家庭および公営事業向けのエネルギー価格を引き上げられるかどうかが、政府の本気度を示すことになると指摘。また、成長率の鈍化や欧州不況などで、ウクライナ経済の見通しは長期にわたって暗く、欧州の銀行に対する債務規模は大きすぎ、欧州における銀行危機がウクライナの金融不安定化につながりかねないと指摘している。

 「こっそりブログ」の代から続けてきた12月のウクライナ出張の土産話も、最終回となった。

 12月の出張では、西ウクライナのリヴィウを訪問し、リヴィウ→キエフ→モスクワ→東京と乗り継いで帰国するという旅程だった。しかし、リヴィウの飛行機が2時間半くらい遅れて、その後の便に乗り継げなかったため、予定外にキエフに一泊するハメになった。係員の口頭の説明を聞く限り、キエフから来てリヴィウに着陸するはずの飛行機が、リヴィウ空港の条件不良のため、隣接したイヴァノフランキウシク空港にいったん降りてしまったらしい。リヴィウの空港の整備が完了するのを待って、改めてリヴィウに飛んできたので、それでその機材を使用するリヴィウ→キエフ便も遅れが生じたそうだ。前日にかなり雪が降って、リヴィウ空港の滑走路がアイスバーン状態になってしまったらしい。しかし、この程度の雪はウクライナでは全然珍しくないはずであり、こんなんでいちいち空港がストップしていてはダメだろう。地方空港とはいえ、脆弱すぎるのでは。

 まあ、飛行機の遅延などは不可抗力だから仕方がないにしても、空港の情報提供の体制が稚拙だった。電光掲示板なし、案内所なし、アナウンスはほぼウクライナ語のみという具合で、外国人としては非常に不安が募る。便に遅れが出ているのに、係員は悪びれた様子もなく、ノロノロ動いていた。

 リヴィウ空港では、ユーロ2012に向けて、ものすごく立派な新ターミナルが完成間近の様子だった。下に見る写真の上が旧ターミナル、下が新ターミナルである。しかし、どんなに立派な箱を作っても、結局それを動かすのは人間である。「仏作って魂入れず」になんてことにならず、ユーロという大イベントをちゃんと乗り切ってくれることを祈りたい。


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 ロシアの『コメルサント』紙が、大統領選の候補者のプロフィールを順次掲載するシリーズを始めたようだ。そこで、2月16日付の同紙に掲載されたミハイル・プロホロフ氏の回を、以下のとおり抄訳しておく

 大統領選の候補者5人のうち、初出馬はプロホロフだけ。専門家は、彼が最大で10%を得票できると見ており、選挙後は政党を結成するか、または政府に入るかのいずれかになると予想している。プロホロフ本人は前者の意向と述べている。

 プロホロフの選挙マニフェストは、「本物の未来」と題されており、リベラル政治家らしい内容になっている。ロシアの未来について、本物の政治を取り戻すことが必要で、そのためには大統領および知事は生涯に2期を最大とし、任期は4年に制限するとしている。選挙法・政党法を改革し、下院選の政党足切りラインは3%に引き下げ、立候補者は公職から辞任する、などとしている。

 本人は、自分のプログラムの眼目は、改革のスピードと質としている。ロシアが現在進んでいるスピードはあまりにも遅く、ゆえに世界的な競争に負けており、私は最後尾ではなく世界をリードするロシアに住みたい、としている。

 プロホロフの公約には、以下のようなものがある。経済犯の恩赦、国家発注法の廃止、すべてのガス生産者にパイプラインと輸出への平等なアクセスを、ガスプロムの分割、国有企業の本業以外の資産の売却、年金赤字を埋めるための国有企業の民営化、税制・財政改革。

 国民自由党のネムツォフは、プロホロフのマニフェストは最も進歩的で、リベラルかつヨーロッパ的で、深甚な改革を想定しているが、問題はそれが宣伝なのか本気なのかということだと指摘、プロホロフはどのような状況で、またプーチンとどのような話をしたうえで大統領選に出たのかについて真実を語っていないので、彼が本気かどうか疑わしいと指摘している。政治評論家のミンチェンコは、このマニフェストは誰も実施したくないような形で書かれており、馬鹿げて有害な思い付きが含まれており、リベラルな主張が国家主義的なそれと同居していると、批判している。なお、来週にはマニフェストのフルバージョンが発表されることになっており、ロシア経済スクールのソニン教授がその作業を仕切っているという。

 ミンチェンコの指摘によれば、プロホロフの選挙キャンペーンはプーチン陣営と歩調を合わせており、たとえばプロホロフはノリリスクニッケルの元社長としてクラスノヤルスク地方で評判が良いにもかかわらず、地方でのプーチン票を奪わないように、大々的なキャンペーンは自粛しているという。目立った動きと言えば、妹のイリーナがプーチン陣営のミハルコフとテレビ討論した程度だった。

 政界や専門家筋では、3月4日にプロホロフが10%得票したら大成功であるとしている。ネムツォフは、プロホロフの成功はキャンペーンにどれだけカネを費やすかにかかっていると指摘。統一ロシアのチェスナコフは、プロホロフはミロノフと4位争いをしており、4位につけて右派と同盟を組めば、今後の政治的活路が開けると指摘。ミンチェンコは、5%なら駄目だが、10%なら政党結成に向かうことが可能と分析。プロホロフ本人は、選挙戦の流れで、下から自然発生的に自分を支持する政党が成立することを思い描いているようだ。

 ミンチェンコによれば、プロホロフには前倒しの議会選をめざすという道もあるが、政党を形成するためには地域との協力が必要で、現在はウラルに1人仲間がいるだけで、現在プロホロフは表舞台の政治家になりえていないし、右派政党での失敗の経緯を見ても組織者としても資質を示していない。評論家のチェスナコフも、プロホロフが政治家として続けていくためには、一匹狼から、チームrのリーダーに脱皮しなければならず、クドリンのような無個性な同志ではなく、より快活な仲間が必要と指摘。プロホロフ本人は大統領選の得票が10%以上なら自らが主導する政党を作り、それ以下なら誰かと連合を組むとしており、陣営ではクドリンをパートナーとして有望視している。

 もう一つのシナリオは、プロホロフが政府入りすること。ミンチェンコは、プロホロフは現政権と歩調を合わせており、プーチンがそのことに感謝して副首相に据える可能性があるとしている。ただし、不人気な改革担当の副首相となり、その場合、大統領選で3位に着けながら副首相に就任して不人気な改革を担当したウクライナのチヒプコ氏と同じように、人気が急落するだろう、とのこと。ただし、プロホロフの陣営では、同氏は他人ではなく自分の政策を実現したいのだとして、プーチンの下で首相に就任する可能性は否定している。

 大統領選後に政治から離れる可能性については、プロホロフ本人が明確に否定しており、本人は選挙後には政治・社会活動に長期的に専念すると明言している。

たまにはiPodから更新してみるか。
スマホから本HPにアクセスしたら、スマホ向けに最適化された画面で繋がるように設定はしてあるものの、手元にアンドロイド端末がないので、アンドロイドでちゃんと表示されているのか、やや心配。そこで、スマホ機種の物色も兼ねて、時々携帯ショップに出かけて、自分のHPというかブログの動作確認をしたりしている。
なんか、アンドロイド端末だと、あまり見栄えが良くないような……。ていうか、iOSおよびサファリが綺麗すぎ?

 こちらの記事によると、このほど国際知的財産権同盟(IIPA)が発表した年次報告書で、トレントを用いたコンテンツの違法コピーの件数において、ロシアは世界第4位の国という評価を受けた。前年の10位から、順位が上がってしまった形。しかもロシアの捜査当局による取り締まりは弱まっているという。

 ロシアは1997年から特別監視国リストに掲載されているが、報告書は2012年にもロシアをリストに含めることを勧告。同リストは前年の13ヵ国から、今回は10ヵ国まで削減され、ロシアの他にはカナダ、インド、ウクライナなどが名を連ねている。

 報告書が指摘するところによると、ロシアで状況が好転しているのは、オフィス向けのソフトの分野だけで、同分野では違法複製ソフトの比率が2004年の87%から2010年の65%に低下している。にもかかわらず、ロシアで違法コンテンツに対して起訴された事例は、前年の78から、2011年の63に低下、しかも有罪は41から19に低下した。2011年の組織改編により、取締り体制が弱体化したという。

 トレントを用いたコンテンツの違法コピー件数で、ロシアは前年の10位から、4位に順位を上げてしまった。主なハリウッド映画だけで、3,100万件の違法コピーが行われた。また、ロシアには世界で最も悪質な劇場用の映画の違法コピー・グループが存在し、2011年には77の違法コピーが作成され、しかもそれはきわめて高質で高い人気を得ている。このビジネスに対する取り締まりは事実上行われておらず、2011年には映画館で32件の逮捕がなされたものの、刑事訴追されたのは1件だけで、すぐに起訴猶予となった。

 ロシアではインターネットのブロードバンド加入1件当たりの音楽の合法ダウンロード金額は年間11.1ドルにすぎず、50~100ドルに達する欧米よりもはずかに小さい。産業を引き続き脅かしているのは、無料ないし安価な違法コンテンツであり、とりわけソーシャルネットワーク「フコンタクチェ」を用いた配信である。IIPAではフコンタクチェを、ロシア最大の、そして世界でも有数の違法音楽配信媒体と名指ししている。IIPAも認めているとおり、フコンタクチェも権利者から要請があった場合には違法コンテンツを削除はしているものの、対応が追い付いていない。

 IIPAでは、ロシアはWTO加盟が完了するまでに、海賊版対策を強化しなければならないと指摘、とりわけロシアの独禁当局が本件に関与することを勧告している。また、ロシアで隣接権料の徴収を担当している全ロシア知的財産権機関に対し、透明性を確保するとともに、外国のオブザーバーの参加を認めるよう、要請している。

 このところのロシア政官界の動きを見ていると、プーチンが新聞で論文を発表したり演説したりするたびに、それに機敏に反応し、それを政策として肉付けし前倒しで実行していこうとする動きが目立つ。何やら、もう新政権が発足したみたいであり、政府・与党一体となって「プーチン公約すぐやる隊」として動いているかのようだ。HPロシア・コーナーのNo.0171で紹介したニュースなども、その一環であろう。

 No.0166で整理したように、プーチンは政策論文シリーズの第5弾として、「公正の確立。ロシアの社会政策」という論文を2月13日に発表したわけだが、社会問題は国民の直接的な関心事であるだけに、プーチン公約の推進がとりわけ急がれているのではないかと推察される。こちらのニュースによれば、シルアノフ蔵相は記者団に対し、プーチン氏が社会問題論文で主張した政策を実施しても、他の財政歳出をカットすれば、財政バランスを崩してしまうほどの歳出の大幅な増大につながらないという認識を示した。また、こちらのニュースによれば、シルアノフ蔵相はプーチンが提唱している「贅沢税」につき、おそらくそれは不動産に対する課税になり、高級車については車両税の馬力当たりの税率を引き上げることによって対処することになる旨発言した。

 ずっと気になっていたテーマであるが、良い機会なので、ここでまとめておく。このところ躍進著しいロシア・ダゲスタン共和国のサッカークラブ「アンジ・マハチカラ」が、かねてから噂されていたとおり、名将として知られ、ロシア代表を指揮したこともあるフース・ヒディンク氏を、監督として迎えることが決まった。本件に関しては日本語でも、こちらの記事などで情報を得ることができるので、私としては側面的な情報を補足したい。

 ダゲスタン共和国というのは、ロシアの北カフカス地域に所在する一連の民族共和国のなかでも、とりわけ人口が多く、また複雑な民族事情を抱えたところである。そもそも「ダゲスタン人」という単一の民族があるわけではなく、「ダゲスタン諸民族」と呼ばれる少数民族の集合体によって住民が形成されている。アンジ・マハチカラというサッカークラブの歴史は比較的新しく、ソ連末期の1991年に設立されたそうである。個人的に「アンジ」という言葉の意味が気になっていたが(どうしてもストーンズの歌を連想してしまう)、今回調べたところ、クムク語(ダゲスタン諸民族の一つであるクムク人の言葉)で「真珠」という意味であり、マハチカラ市の地がかつてクムク語でそう呼ばれていたことから付けられたということである。アンジ・マハチカラはその後ロシア・プロサッカーリーグの1部および2部をさまよっていたが、近年急速に力を付け、2009年に1部で優勝し、2010年シーズンからロシア・プレミアリーグに参戦している。

 そして、2011年1月に、大富豪として知られ、ダゲスタン共和国の古都デルベントの出身であるスレイマン・ケリモフ氏がアンジ・マハチカラのオーナーとなった。ケリモフ氏の人物像に関し、日本語で得られる情報でおそらく一番優れているのは、私が編集している雑誌に掲載した坂口泉「不死身の大富豪スレイマン・ケリモフ」『ロシアNIS調査月報』(2007年8月号)だと思うので、機会があったら参照していただきたい。私のHPでも先日、ロシア・コーナーのNo.0167で関連情報をお伝えした。ただし、ロシア紙に掲載された情報によると、正確に言うとケリモフはアンジを買収したのではなく、クラブの維持費およびインフラ整備費を負担することと引き換えに、アンジの株100%を無償で譲渡されたのだという。それまで、アンジの株の49.9%をダグネフチェプロドゥクト社(マゴメドフ・ダゲスタン共和国大統領が当時のオーナー)が、別の49.9%を家電量販チェーン「エルドラド」の共同オーナーの1人ヤコヴレフが保有していたが、100%をケリモフが無償で取得することになった。その代りケリモフは、選手のサラリーや新規獲得などに毎年3,000万~5,000万ドルを、さらにインフラ整備に2億ドルを投資することを約束したという。アンジは4万人収容のFIFA基準を満たす新スタジアムの建設を計画している。

 20120218hiddink

 ベラルーシという国についてはしばしば、「なぜあんな酷い独裁者なのに、国民が立ち上がらないのか?」という疑問が外部から呈される。ベラルーシの民間シンクタンク「独立社会・経済・政治研究所(IISEPS)」から、最新の2011年12月の世論調査結果を盛り込んだニュースレターが届いたので、そのあたりのところを改めてつらつらと考えている。

 2011年はベラルーシにとって、経済危機の年だった。IISEPSの調査でも、「2011年はベラルーシにとって前の年よりも困難だった」と答えた回答者が74.7%に上っており、これはリーマンショックの時期よりもはるかに高い比率である。

 その結果、2010年12月の大統領選の時点では53%あった国民のルカシェンコ大統領に対する支持率は、2011年9月には20.5%へと急落した。これは、これまでで最も低い支持率である。ただ、外貨交換の制限措置を解除したことなどで、国民の生活が多少安定に向かい、支持率も2011年12月には24.9%まで持ち直している。

 さて、今回、私が注目したのが、IISEPSの世論調査のなかにある「貴方は自分のことを現政権に対する反対派(opposition)だと思うか?」という設問である。その回答を時系列的に跡付けてみると、下図のようになる。ルカシェンコの支持率が底に下がった2011年9月ですら、現政権に対して自覚的に反対している向きは、3割弱にすぎなかった。自分を「反対派」だと自覚するということは、ルカシェンコ政権のあり方やその政策路線に対し原則的に同意していないということを意味していると考えていいだろう。逆に言えば、経済危機で市民の生活が悪化すれば、当然多くの国民は不満を抱き、ルカシェンコの支持率が下がったりはするが、そうした批判の声は原則的というよりも流動的なものであり、社会・経済状況が改善すればルカシェンコの支持率もある程度持ち直すし、増してや多くの国民がルカシェンコ体制の打倒のために自ら立ち上がるようなことは考えにくい、ということにならざるをえない。

 もう一つ特徴的なのは、現政権への支持が低下しても、それが野党への支持にはまったく結び付かないという事実である。大統領を信頼するという回答者は、2010年12月の55.0%から、2011年の9月には24.5%に落ち込んだ。しかし、野党を信頼するという回答者は同じ時期に、16.3%から12.3%へと、こちらも落ち込んでいるのである。というわけで、現時点では、現体制に取って代わる受け皿が存在しないなかで、時々の社会・経済情勢に応じて、現政権の支持率が単に上がったり下がったりしているだけという状況である。
20120217belarus

 ウクライナで重要な閣僚人事があったので、まとめておく。

 こちらのニュースによると、2月14日、ヤヌコーヴィチ大統領はクリュエフ第一副首相兼経済発展・商業相をその職から解き、国家安全保障・防衛評議会の書記に任命した。なお、クリュエフ氏はこれまで、EUとの連合協定および自由貿易協定の締結交渉も担当していた。また、これまで国家安全保障・防衛評議会の書記を務めてきたR.ボハティリオヴァ女史を、新たに副首相・保健相に起用した。この人事につきヤヌコーヴィチ大統領は18日、クリュエフには書記としてウクライナの安全保障強化という重要な課題が課せられる、重要課題の一つはエネルギー安全所掌、省エネ、有利な価格での、少なくとも欧州向け並みの価格でのエネルギー確保であると述べた。他方、ボハティリオヴァ女史に関しては、医療改革、社会政策戦略の策定に取り組むことになると述べた。

 一方、こちらの記事は、誰がクリュエフの後任の第一副首相になったとしても、その人物がアザロフに取って代わる首相候補の一番手になるとしている。記事によると、アザロフにとってみれば、クリュエフは首相就任の野心こそあったものの、それを急ごうとはせず、ナンバー2として都合の良い存在であった。しかし、誰がクリュエフの後任になったとしても、後継の首相候補の一番手となる。「いつ、誰が」というのが、現下ウクライナ政治の最大の焦点となっている。6月に地域党の党大会があり、そこで議会選挙の候補者名簿が決まるはずなので、新しい第一副首相がその名簿を率いることになろう。時間が限られているので、すでに有力な政治家でなければならず、しかも改革者というイメージが必要。現実的な候補となるのは3人しかおらず、絶対的な本命はいない。

 まず、最近蔵相に就任したV.ホロシコウシキーがおり、同氏がややリードしている。最近、「大統領の側近」というイメージができており、リオーヴォチキン大統領府長官も現在は同氏を押している。かつてヤヌコーヴィチ内閣でアザロフが第一副首相・蔵相として働いたように、蔵相が第一副首相になるというのは座りが良い。ホロシコウシキーは地域党での仕事を望んでいないのは事実だが、それはこれからの4ヵ月で何とかなる。ただ、ホロシコウシキーが蔵相になって1ヵ月にすぎず、まだ実績を示すには至っていないのがマイナスで、それゆえに第一副首相が4月まで決まらないということもありうる。

 また、B.コレスニコフ副首相・インフラ相がいる。ホロシコウシキーと異なりすでに副首相であり、ユーロ2012の準備という実績もある。第一副首相・インフラ相というパターンも、役所を代えて第一副首相・経済相というパターンも、両方ありうる。マイナスは、コレスニコフがアフメトフ派であり、最近ヤヌコーヴィチ大統領が自派以外の人物を要職に据えようとしないことである。ただし、大統領がリオーヴォチキン派の影響力を削ごうと考えた場合には、コレスニコフ起用もありうる。

 最後に、S.チヒプコが考えられる。副首相・社会政策相というステータスが彼の野心にも、改革派というイメージにも見合っていないことは明らか。マイナスは、地域党のなかで外様であることだが、ヤヌコーヴィチはそのことを問題視しておらず、リオーヴォチキンもホロシコウシキー擁立が上手く行かなかった場合にはチヒプコを押すかもしれない。

 その他、第一副首相候補としては、アキモヴァ大統領府第一副長官も挙げられているが、大統領は経済問題で同女史に頼っており、内閣による経済改革も同女史の補助によりコントロールしているので、大統領としては失いたくないはず。また、アキモヴァは省や地方で働いたことはないし、他の第一副首相候補を抑えるのには相当な権威が必要。S.アルブゾフ中銀総裁などは、将来的にはありうるかもしれないが、2012年ということはない。O.ヴィルクル・ドニプロペトロウシク州知事など、州知事からの抜擢なら、ありえないこともない。、

 HPロシア・コーナーのNo.0163でお伝えしたとおり、ロシアのプーチン首相は2月9日にロシア産業・企業家同盟の総会で演説し、そのなかで90年代に国有資産が不明朗な形で民営化されたことが尾を引いていると指摘したうえで、こうした過去に終止符を打つため民営化の受益者による国庫への納付金のようなものを検討すべきという考えを示した。これを受け会計検査院のステパーシン長官が2月17日付の『ロシア新聞』のインタビューに応じ、基本的にプーチン提案に協力する用意がある旨表明している。こちらのニュースが報じている。

 これによれば、会計検査院は90年代に実施された民営化の再評価、しかるべき納付金の額の計算を行う用意がある。90年代に資産を取得した額と、その実際の価値の差額を弾き出すことは、基本的に可能だ。必要があれば、司法の場での解決もありうるし、それに会計検査院等の管理機関が関与することもできると、ステパーシンは語った。

 2003年に会計検査院はロシアの90年代の民営化を総括する調査を完了しており、大部の報告書が作成された。ステパーシンによると、会計検査院はロシアの民営化の結果を分析し、それは欧州で最悪なものの一つであったということを、正直に指摘した。他方、報告書では、大規模民営化にしても、担保オークションにしても、法的には合法であり、当時の法律や大統領令に則って行われたということも述べられている。したがって、法的な観点からは、民営化の取り消しというのは、不適切である。ステパーシンによれば、この報告書が出たあと、何人かの大実業家が納付金の支払を申し出たことがあり、今日でも「不誠実な」民営化に対する補償を行う用意のある向きが出てくる可能性はある。自主的な補償なら何の問題もなく、大いに結構なことだ。肝心なのは、90年代の民営化の問題に終止符を打つことであり、過去についての真実を語ることで、今後の民営化を適切に行うことができると、ステパーシンは指摘している。

 こちらの記事によると、このほどThe Economist誌が世界200大企業を対象に、過去10年間で最も収益を挙げた株式のランキングを発表した。その結果、米アップル社に次ぎ、ロシア最大の銀行ズベルバンクが2位の座を占めた。ズベルバンクの場合、10年前に100ドルで取得した株式が、その後3,722ドルの収益をもたらした計算になるという。アップルの当該数値は3,919ドルだった。3位のコノコフィリップスは1,400ドルであり、1位と2位が圧倒的な数値であることが分かる。

 陳腐なことを言うようだが、ロシア経済研究者の端くれとしては、「10年前に買っておけば…」と思わずにはいられない。

 図の掲載のテストも兼ねて、こちらの記事を。

 ロシアのレヴァダ・センターが2011年12月に実施したロシア国民の社会階層意識に関する調査結果が、こちらのサイトに出ている。「自分はどの社会階層に属すと思うか?」という質問に対する回答をまとめたものである。最新の調査は2011年12月6~23日にロシア全国1,511人の成人を対象に行ったもの。過去3年間の回答結果の推移を、下図にまとめた。

 日本について、「1億総中流」などと言われて久しいが(最近は逆に怪しくなっているが)、ロシアも意外に中流意識が強く、現時点で国民の85%は自らを中流と見なしているという結果になっている。ただし、日本の場合は「中の上」という意識が主流なのに対し、今日のロシアではまだ「中の中」や「中の下」が圧倒的に多いという違いがある。図には参考までに、日本において中流意識が拡大し始めた時期に当たる1958年の数字を示しており(ウィキペディアより)、今のロシアはこれに見るような昭和30年代頃の日本の状況に近いと言えるかもしれない。

20120216middle

 ウクライナとロシア間で、「チーズ戦争」が起きている。こちらの記事によると、先週ロシア消費監督局がその地域支部に対し、ウクライナの3社の製造したチーズを回収するよう、指令を出した。3社の製品は植物油を含有しているためロシアの技術基準を満たしていないというのがその理由で、具体的にはプロメテイ社(チェルニヒウ州)、ピリャティン・チーズ工場(ポルタヴァ州)、ハジャチスィル(ポルタヴァ州)の3社がその対象。2月9日にロシア消費者監督局のオニシチェンコ長官とウクライナのピリシャジニューク農相が会談し、ウクライナ側が必要な文書をすべて提出することで合意した。しかし、その後2日間で状況が変化し、10日にはアザロフ・ウクライナ首相が、本件はウクライナ製品の流入を阻むためにロシア企業が画策したものだと非難、フリシチェンコ・ウクライナ外相もロシア消費者監督局の対応を非難した。ウクライナ側は本件につきWTOに提訴も辞さない構えだが、それが効力を有するのはロシアが実際にWTOに加盟した後のことになる、という。

 こちらのニュースによると、ロシア最大の銀行ズベルバンクは2月15日、オーストリアの銀行グループ「Oesterreichische Volksbanken AG (OVAG)」の東欧子会社「フォルクスバンク(VBI)」の株式を100%取得する契約に調印した。1年にわたった交渉が実り、ズベルバンクは晴れて国外市場に進出することになった。ただし、ズベルバンクがロシア国内でリテールを手掛けているのに対し、VBIはその実績は乏しく、中小企業との取引を主力としている。もっとも、東欧にはロシア企業が進出しているので、それらへのサービスという方向性が考えられる。VBIは300の支店、60万の顧客を有し、中東欧諸国のほかウクライナでも営業しており、オーストリアでの事業免許もある。総資産は6月末時点で94億ユーロ。ソ連崩壊から20年の時を経て、ズベルバンクがベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンの3子会社に加えて、東欧に強力なネットワークを有する銀行の買収に乗り出したのは興味深いと、この記事は結んでいる。

 なお、別の記事は、ズベルバンクは東欧新子会社につき、「フォルクスバンク」という名称を放棄し、「ズベルバンク」というブランドで事業を展開する意向である旨伝えている。

 こちらのニュースによると、モルドバからの分離独立を唱えている沿ドニエストル共和国のシェフチューク新大統領はこのほど、同共和国はロシアから供給される天然ガスの決済ができていない旨認めた。15日、記者団に語ったもの。

 記事によると、大統領は以下のように語ったとのことである。すなわち、沿ドニエストルは現在きわめて厳しい経済状況にあり、ガスの決済は事実上行われていない。共和国内の経済を活性化し、マクロ経済状況を精査して、当座の支払を開始できるように条件を整えなければならない。ロシア側は、旧債務と当座の支払の2つに分けて、解決策を見出そうとする姿勢をとっており、それぞれに関する作業グループが設置されている。沿ドニエストル側も自分たちの提案を出しているが、市民や企業の所得を向上させない限り、向こう2年間で本件を好転させることは不可能である。

 一部情報によれば、沿ドニエストルはガスプロムに28億ドルの債務を負っているという。

 一方、2011年末にモルドバ本国のモルドヴァガス社は、ロシア・ガスプロムと、現行の供給・トランジット契約を2012年第1四半期一杯まで延長する契約を結んでいる。モルドヴァガスは1999年に創設され、持ち株比率はガスプロムが50%、モルドバ政府が35.3%、沿ドニエストル内閣が13.44%、少数株主が1.23%となっている。

 12月のウクライナ出張の土産話も、終わりに近付いてきた。

 西ウクライナのリヴィウで、せっかくだから何か郷土料理的なものを食べたいと思い、旧市街をさまよい歩いてレストランを探してみたのだけれど、どうもあんまり良い店がなかった。結局入った店は、お城の地下室のような感じで雰囲気はあり、豚のオブジェも楽しげだが、肝心の食べ物が今一つ。写真に見る料理の、手前右側はサラダなのだけど、冷凍野菜を解凍しただけといった感じ。左側のシチュー風の肉の煮込みも、ありきたりの味だった

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 スレイマン・ケリモフ氏と言えば、ロシア、というか世界有数の富豪として知られる。2011年1月から同氏がアンジ・マハチカラというロシア・ダゲスタン共和国のサッカークラブのスポンサーになり、豊富な資金力でど派手に選手を買い集めていることが話題となり、最近日本での知名度も高まっていると思われる。同氏に関する「スレイマン・ケリモフ:秘密のオリガルヒ」と題する記事が、2月10日付の『フィナンシャル・タイムズ』に出た。ただ、私自身は、それを伝えた2月13日付の『コメルサント』紙でその内容を読んだ。以下、記事の要旨を簡単にまとめておく。

 ケリモフ本人も、その右腕のアレン・ワインも、ケリモフが米国の投資銀行の株式をどれだけ保有しているのかは明かそうとしない。いくつかのケースでは、出資比率は3%にも上るという。関係者によれば、これらの出資はしばしば、西側の銀行やヘッジファンドからオプションを通じて巨額の借入を行って実現したものだという。ケリモフの出資100に対し、80は銀行が担保として押さえているとのことだ。だが、それでもケリモフは堂々と、大口の株主として当該銀行の経営陣との会見を求めるのだという。そして、大銀行の幹部がケリモフのモスクワの自宅に招待されるまでになった。

 その際に、銀行家たちにとってケリモフはしばしば、クレムリンの延長上の存在で、政府と歩調を合わせて動いているように見えるのだという。ただ、ケリモフ自身は、自分が投資しているのは自前の資金であり、プーチンとは数年前に公式行事で一度会ったことがあるだけであると主張している。

 『フィナンシャル・タイムズ』が得た情報によれば、ケリモフは自らの西側銀行とのコネクションを活用し、クレムリンが推進しているモスクワ国際金融センター構想を後押ししようとしている。彼の助力のお蔭で、同プロジェクトはJPモーガンのジェイミー・ダイモン、Citigroupのリチャード・パーソン、Blackstoneのスティーヴン・シュヴァルツマンといった西側の大物金融家たちの支持を受けることができた。2011年10月28日に本プロジェクトに関する国際諮問会議の第1回会合が開かれ、彼ら全員が駆け付け、ケリモフがプレゼンを行った。

 HPのNo.0151、No.0148、No.0147など一連の記事で報告しているとおり、大統領選に立候補しているプーチン首相は、実質的に自らの選挙綱領に相当する一連の論文を新聞紙上で五月雨式に発表している。本コーナーではすでに第3弾の経済編までお伝えしたが、その後も「論文攻勢」は続いており、さらに2本の論文が発表されている。数が多くなってきたので、ここで改めて整理しておきたい。

●第1弾(総論・導入編)「集中するロシア ―我々が応えるべき要請―」(2012年1月16日付『イズベスチヤ』紙)。

●第2弾(民族問題)「ロシア:民族問題」(2012年1月23日付『独立新聞』)。

●第3弾(経済問題)「我々の経済的課題について」(2012年1月30日付『ヴェードモスチ』紙)。

●第4弾(政治問題)「民主主義と国家の質」(2012年2月6日付『コメルサント』紙)。

●第5弾(社会問題)「公正の確立。ロシアの社会政策」(2012年2月13日付『コムソモリスカヤ・プラウダ』紙)。

 正直、熟読している余裕はないが、関連する動きを少しだけ紹介しておく。こちらこちらのニュースによると、連邦議会の上下院が、プーチン論文第5弾の社会問題編を受けて、早くも対応に乗り出そうとしているようだ。下院の統一ロシア会派の幹部は、プーチンの社会問題論文を、下院の社会問題に関する取組のプログラムにしていく意向であると発言した。また、マトヴィエンコ上院副議長も、上院はプーチン首相が社会問題論文で示した提案を法制化していくことに労を惜しまない旨発言した。

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