ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

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 ロシアの主力産地であるヤマル半島と、中国市場を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設構想が、しばらく前から取り沙汰されていながら、中国側が最終合意を渋っており、結局今般の習近平訪ロの際もそれが正式に発表されるには至らなかった。プーチンとしては、「我が国は欧州市場なしでもやって行けるのだ」と、ど派手に花火をぶち上げたかったはずだが、またしても寸止めを食らった。

 そのあたりの背景につき、こちらの記事の中で、ロシア政府付属金融大学エキスパートのI.ユシコフ氏が語っているので、少々認識が甘い感じもするが、以下発言要旨を整理しておく。

 パイプラインのルート、輸送量、技術的仕様などはだいぶ前に合意している。これだけ長くかかっている、最大の要因は、価格ということになる。中国側は、ガスプロムが欧州市場で苦戦している分、我が国にとって有利であり、好条件の契約を取り付けるべきだと考えている。それにロシアが難色を示すという構図である。

 今般の習近平訪ロを経ても、いまだに契約が調印されていないのには、原因が2つ考えられる。

 第1に、中国はまだ、より有利な価格条件を求め、粘る時間があると考えていること。

 第2に、中国は新契約をプーチン訪中の際に結びたいと考えていること。中国にとっては、中国側がガスを求めてロシア詣でするのではなく、逆であることが重要。実際、シベリアの力1が2014年に調印されたのも、北京においてだった。

 シベリアの力1は2014年に調印され、2019年12月に稼働したが、2は稼働までにそこまで時間がかからないのではないか。2は資源基盤がすでにあるので、1の時のように産地を一から開発する必要がなく、パイプラインを敷設するだけでいいからである。

 鋼管はロシア国内で生産できる。唯一の問題は、ガスコンプレッサーステーションに設置するガスタービン「ラドガ」の生産であり、タービン自体は国内生産できるものの、一部の部品が輸入であり制裁に引っかかる恐れがある。それでも、おそらくマックスの500億立米が一気に稼働するのではなく、毎年100億立米くらいずつキャパシティを拡大していくことになると思われるので、コンプレッサーステーションも段階的に増強すればよく、解決できるのではないか。

 確かに、2021年までは欧州市場に年間1,600億立米を供給していたわけで、シベリアの力2の500億立米が完成しても、全面的なアジアシフトはできない。それでも、本件は欧州からアジアへの初の転換に成功した例となり、意義は大きい(シベリアの力1は既存の欧州向けをアジアに転換したわけではなく、極東・東シベリアのガス田を新規開発して中国に供給するプロジェクトだった)。


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20230328a

 HP更新しました。マンスリーエッセイ「2.24問わず語り ―誰も訊いてくれないので自分で語る」です。よかったらご笑覧ください。


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rcm

 昨日の話の続きになる。開戦後、ロシアは貿易統計の発表を全面的に取り止めていたが、今般、大づかみな商品分類のみではあるが、税関局が2022年の輸出入動向のデータを発表した。なお、税関局は今後毎月、同様のデータを発表するということであり、すでに2023年1月のデータも出ている。こうなると問題は、日本からはロシア税関局のウェブサイトにアクセスできないことだが、まあそれは何らかの方法で根性閲覧するしかない。

 ちなみに、関連の情報を収集していて、こちらの記事が目に留まった。これによると、昨年、ロシア当局が貿易統計の発表を止めたあと、ロシア税関局の現職および元職員たちが、通関統計データを違法に売買する動きが広がったという。道理で、西側の情報筋が、「ロシアの通関統計によれば」などと称して、機微な品目の取引について論じたりしていたわけだ。

 さて、ロシア税関局だけでなく、ロシア中央銀行も、商品輸出入データをこのほど発表した。そこで、最新の2023年1月分までを反映した形で、上図を作成した。ロシア中銀は、2022年の商品+サービス輸出入額は以前にも発表していたが、晴れて商品に絞ったデータも得られることになったわけである。税関局の統計では、2022年の月別輸出入額が不明だったので、その意味で重宝する。なお、税関局発表の通関統計ベースの輸出入額と、中銀発表の国際収支ベースの輸出入額とは、微妙に齟齬がある(魚介類の洋上取引など、通関統計にはすべての輸出入が記録されるわけではないので、それを補正して国際収支ベースの輸出入額が算出される)。

 上図を見て気付くのは、2022年12月5日にEUのロシア産原油禁輸とG7主導の価格上限制が発効したが、12月の輸出額は季節的要因ゆえかむしろ大きく膨らんでおり、1月になって急減したという事実である。


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 当ブログでは何度も指摘してきたとおり、昨年2月以来、ロシアが貿易統計を一切発表しなくなり、個人的にはあの手この手で断片的な情報をかき集め、ロシアの貿易動向を推察するという作業を続けてきた。そうしたところ、先日プーチンが演説の中で本件に触れる場面があり、「プーチンが2022年の輸出入額に言及した」としてお伝えした。

 しかし、その後気付いたのだが、その時点ですでに、ロシア税関局より、割と詳しい数字が発表されていたのだ。情報をキャッチするのが遅れ、お恥ずかしい限りである。そこで、改めて本件につきお伝えしたい。

 今回税関局が発表したのは、HSコードの2桁レベル「類」による2022年の商品別輸出入額である。ただし、農産物・食料品の第01~24類については、その合計額を示すのみで、類ごとの額は出していない。農産物・食料品がそれほど機微な分野とも思えず、不可解である(あるいは、昨今、ロシア当局が穀物輸出で国際社会に揺さぶりをかけていることに関係しているのか?)。

 また、第88類:航空機と、第93類:武器・弾薬は、未発表となっている。これらはモロに戦争に関係するので、ロシアが数字を出さないのは道理ではある。ただ、もともと第93類:武器・弾薬の輸出入規模はごくわずかで、それにより統計が損なわれ輸出入の全体像が見えにくくなるのはあまりにも惜しい。そこで私は個人的に、2022年にロシアは武器・弾薬を必要としたがゆえにその輸出を半減させ、輸入を倍増させたと仮定して推計することにした。そうすることで、第88類:航空機の輸出入額を推計することも可能になる。

 そうした作業も経ながら、まずロシアの輸出動向を大分類にまとめたのが、下表となる。グレーの網掛けの部分が、上述のような私の推計を含んだ数字となる。

7a

 次に、輸入動向が下表のとおりとなる。

7b

 というようなことを中心に、『ロシアNIS調査月報』5月号に渾身のレポートを執筆予定なので、お楽しみに。


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26

 これは、あまりにマニアックで、多くの皆さんの関心事にはならないかもしれない。こちらに見るとおり、ロシア政府は昨年12月7日付の政府決定で、ちょいと気になる措置を導入した。シャンプー、歯磨き粉、石鹸、香水、洗剤等を、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランドから輸入する際の関税率を、35%に引き上げたのである。2023年末までの時限的措置であるとされている。

 それだけであれば、最近よくある欧米との揉め事であり、驚きもしないが、問題は、ロシアはユーラシア経済連合(EAEU)の加盟国であり、原則的に、対外的な関税は同連合の共通関税率と決まっており、単独で勝手に決めてはいけないことである。

 当然そのことはロシアも承知であり、くだんの政府決定の中には、「ユーラシア経済連合条約第40条第2項にもとづいて」との文言がある。そこで第40号を引用しておくと、

Статья 40 Ответные меры в отношении третьей стороны
1. В случае если в соответствии с международным договором Союза с третьей стороной и (или) государств-членов с третьими сторонами предусмотрена возможность применения ответных мер, решения о введении ответных мер на таможенной территории Союза принимаются Комиссией, в том числе путем повышения уровня ставок ввозных таможенных пошлин, введения количественных ограничений, временного приостановления предоставления преференций или принятия в рамках компетенции Комиссии иных мер, оказывающих влияние на результаты внешней торговли с соответствующим государством.
2. В случаях, предусмотренных международными договорами государств-членов с третьими сторонами, заключенными до 1 января 2015 года, государства-члены вправе в одностороннем порядке применять в качестве ответных мер повышенные по сравнению с Единым таможенным тарифом Евразийского экономического союза ставки ввозных таможенных пошлин, а также в одностороннем порядке приостанавливать предоставление тарифных преференций при условии, что механизмы администрирования таких ответных мер не нарушают положений настоящего Договора.

第40条 第三国への報復措置
1. EAEUと第三国および(または)加盟国と第三国との国際条約が、報復措置の可能性を規定している場合、EAEUの関税領域において報復措置を導入する決定は、輸入関税率の水準の引き上げ、数量制限の導入、特恵付与の一時的停止、その他ユーラシア経済委員会の権限内で関係国との対外貿易結果に影響を与える措置を含めて、ユーラシア経済委員会が行うものとする。
2. 2015年1月1日以前に締結された加盟国の第三国との国際条約に規定されている場合、加盟国は、当該報復措置の管理メカニズムが本条約の規定に違反しない限り、EAEU共通関税率よりも高い輸入関税率を報復措置として単独で適用し、また、関税の優遇措置を一方的に停止する権利を有する。

 要するに、EAEUが発足する2015年1月1日以前にロシアが米国などと結んでいた条約に、報復措置に関する規定があれば、ロシアはEAEUとは関係なく単独で関税引き上げ等の報復措置を導入することが法的に可能ということらしい。

 ただ、今回の政府決定では、非友好国からの輸入全体でなく、一部の国だけが対象になったことが不可解である。また、欧米に対する報復としては、ややスケールに欠ける。

 こちらの記事によると、くだんのシャンプー・洗剤等の輸入の約60%はEUからであり、今回対象の6ヵ国のシェアは品目ごとに8~15%にすぎず、一部の高級品に限られるということである。同諸国からの輸入よりも国内生産の方が規模は大きく、シャンプーでは6倍、歯磨き粉では8倍、洗剤では62倍であるという。

 つまり、欧米への報復、国内生産への切替策として、化粧品・洗剤等の輸入関税率を上げることにしたが、輸入規模の大きいEU全体を対象にすると影響が大きすぎるので、とりわけロシアと折り合いの悪い国をまず対象にした、といったところか。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 今週、見事1位に輝いたのが、Laurieレーベルが送り出した黒人ガールグループ、Chiffons - He’s So Fineだった。後に、ビートルズ脱退後にジョージ・ハリスンが作った My Sweet Lord が、この曲のパクリだとして大問題になる、いわくつきの作品として知られる。

その頃ソ連では
1963年3月23日:ソ連映画委員会が設置される。

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 こちらの記事が、2022年のロシアにおけるネットショッピングの結果につき伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 Data Insightの調査によると、2022年のロシアにおけるネットショッピングは5.7兆ルーブルに達し、前年比38%増であった。注文数の伸びはさらに大きく、28億回の注文があり、前年比65%増であった。

 ただし、2022年に伸び率は鈍化した。2021年の伸び率は、金額ベースで52%増、注文回数ベースで104%増であった。

 伸び率が鈍化したのは、外国企業、とくにプレミアム企業が撤退したからである。そうした中、ロシア企業は2019~2022年に倉庫、ロジなどに多額の投資を行い、それが実って対面販売からネット販売へのシフトが生じて、それによりネット販売の市場規模が拡大した。そうした企業、とくにマーケットプレイスが、外国企業撤退の受益者となった。

 2022年の販売増を支えたのは大手の総合マーケットプレイスであり、総注文数に占めるそのシェアは2022年下半期には73%に達した。2023年には、WildberriesおよびOzonという2強が、金額の53%、注文数の77%を占めることになると予想される。ただ、ヤンデックスも含めた3強のシェアは2022年時点で39.4%にすぎないとするデータもある。


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 間際の告知になってしまいましたが、スラブ・ユーラシア研究センターで3月27日(月)16:00-17:30に、松澤祐介さん(西武文理大学)による「EU加盟20年目のスロバキア経済」と題する特別セミナーを開催いたします。対面とZoomのハイブリッドでの開催で、もちろん無料です。参加をご希望の方は、こちらまでお申し込みください。


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 習近平訪ロや岸田訪ウで埋没してしまったが、こちらのページに見るとおり、3月20日にモスクワで国際議会会合「多極世界におけるロシアとアフリカ」と称するものが開催された。プーチン大統領が出席し、15分程度の演説を行っている。20日は、午後にこの国際会議があり、夜に習近平国家主席とのサシ会談があるという慌ただしい一日だった。アフリカ、中国と焦点がぼやけてしまうことにもなり、そういうことから考えても、やはり習近平訪ロはわりと急に決まったのではないかなどと想像する次第である。

 プーチン・ロシアは昨年来、食料および肥料を武器に、グローバルサウスを取り込もうとする路線を強めている。ウクライナの食料はせっかく輸出を再開させてやったのに豊かなEUに向かっており、その点ロシアは、アフリカ、最貧国に穀物・肥料を無償で提供する用意もあるという立場を、今回の会議でも改めてプーチンは示した。非常に恣意的な発言振りであるが、個人的に今、調べているテーマなので、20日のプーチン演説の中から気になった箇所を以下のとおり抜粋しておく。

 ロシアの援助により、アフリカでは多くの工業企業が建設され、産業が創出され、重要なインフラや社会施設が建設されている。と同時に、ロシアはアフリカ諸国が負っていた200億ドル以上の債務を免除している。

 ロシア・アフリカ貿易は年々増加しており、2022年には180億ドル近くに達した。まだポテンシャルは大きい。金融決済における自国通貨への移行がより精力的に行われ、新しい輸送・物流チェーンが確立されることが、さらなる貿易の活発化に寄与する。

 2021年に始まったアフリカ自由貿易圏の設立は、最終的にGDPの合計が3兆ドルを超える汎大陸市場となるもので、さらなる機会を提供している。ロシアは、ユーラシア経済連合を通じても、また国レベルでも、この新しい連合との関係を積極的に構築したい。

 ロスネフチ、ガスプロムネフチ、ルスギドロ、アルロサ、ルクオイルなどにより、投資プロジェクトが実施されている。原子力も有望で、ロスアトムはすでにエジプトで原発を建設している。アンゴラではロシアの支援で衛星通信・テレビ放送システムが構築されている。ヤンデックスはアフリカ諸国で積極的にITサービスを展開している。

 ロシアは、食料、肥料、燃料、その他の重要商品をアフリカ諸国に供給する義務をすべて良心的に果たし、それによって食料およびエネルギーの安全保障に貢献していることを強調したい。肥料を含め、現在欧州で滞貨しているロシア貨物があるが、それを無償で提供する用意があり、すでに最初の貨物は発送された。だが、残念なことに、この面でもロシアは妨害を受けている。

 主にアフリカのニーズに応えるため、ロシアは最近、ウクライナの食料を黒海ルートで輸出し、同時にロシアの農産物と肥料の輸出ブロックを解除するイスタンブール協定を、60日間延長することに合意した。

 その際に、ロシアはこの取引が一体のものであることを主張している。主にアフリカやその他の発展途上国が大量の食料を必要としていることを考慮し、ロシアの主な主張が完全に遵守されるべきことを主張する。それはまず何より、穀物と肥料は飽和状態の欧州ではなく、困っているアフリカ諸国に送るべきという点である。

 ロシアの立場が考慮されてこそ、黒海穀物合意の公正かつ包括的な実施が確保される。ロシアが今後この取引に参加するかどうかは、それによって決まることを強調しておく。

 ウクライナから輸出された穀物の総量のうち、45%が欧州に行き、アフリカにはわずか3%しか向かっていない。2022年8月1日から2023年3月20日までに、827隻の船がウクライナを出港し、そのうちアフリカに送られた農産物は300万t、アフリカ最貧国には130万tにすぎなかった。アフリカ諸国を守る必要があるという名目で合意がなされたにもかかわらず、45%が飽和状態の欧州に送られたのだ。

 それに対し、同じ時期に、ロシアの穀物の輸出にあらゆる制限や制約があったにもかかわらず、ロシアからアフリカに1,200万t近くが輸送されたことを指摘したい。

 もし仮に、60日後に、黒海穀物合意を延長しないと決めたとする。その場合ロシアは、これまでアフリカの最貧諸国に供給していたのと同量の穀物を、全量無償で供給する用意がある。

 第1回ロシア・アフリカサミットを2019年10月にソチで開催したが、今年7月にサンクトペテルブルグで第2回を開催することを計画している。


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 こちらの記事によると、ロシア当局は、一方的に編入を宣言したウクライナ東部・南部の4地域を、自由経済区に指定する計画ということである。私は編入自体を認めるつもりがないが、これまでの自分の研究分野に、ロシアの地域経済開発、その手段としての経済特区というものがあったので、こういう話題が出ると取り上げざるをえない。

 記事によると、ロシア建設・住宅公営事業省は10月に、「新領土」4地域を対象に自由経済区を創設する構想を示していたが、このほどそれに向けた具体的な法案を取りまとめ、3月20日の関係会議で了承された。

 自由経済区は、4地域の中の一部ではなく、全域を対象に創設される。同様にクリミア共和国およびセヴァストーポリ特別市を対象に創設された自由経済区の期限は2039年末だったが、今回の4地域では2050年末までとなる。

 新たな4地域の社会・経済発展に責任を負うのは建設省なので、自由経済区についても建設省が管轄省となる。

 自由経済区の入居企業と認定されるためには、4地域に登記されるか、支店を有する必要がある。特典は、特別税制、低利融資、通関の特別制度および輸入関税免除などとなる。

 法律は2024年1月1日に発効予定。


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 習近平訪ロを前にして、3月19日付でプーチンが『人民日報』に、20日付で習近平が『ロシア新聞』に、それぞれ二国間関係に関する論文を掲載するというエールの交換があった。プーチンは、オリジナルはこちらのはずだが、中国語はダルいので、クレムリンHPに出たロシア語訳を参照した。一方、習近平寄稿はこちらのサイトで読むことができる。初めて知ったが、人民日報にはロシア語版もあり、こちらのページにくだんの習近平論文が出ていた。

 全体的な印象としては、習近平の方が一般論を淡々と述べるだけという感じであるのに対し、プーチンはやはり先方が頼みの綱ということで、より具体的で踏み込んだ書き振りとなっている。

 私は経済のことを調べているので、その関連が気になるわけだが、両国は2024年までに往復で2,000億ドルの貿易額を達成するということを目標に掲げている。今回の習近平論文では2022年の実績は1,900億ドルだったとされているのに対し、プーチン論文では1,850億ドルだったとされている。これは、それぞれが自国の貿易統計にもとづいて言っているのだろう。ただ、細かすぎる話だが、2,000億ドルを達成したか否かを判断する際に、どちらの統計を使うのかというのは、ちょっと気になった。

 経済分野でも、やはりプーチンの方が具体的なプロジェクトにも言及していて、力が入っている。プーチンによれば、露中貿易は額が増えているだけでなく人民元およびルーブルで決裁される比率が増えてより「主権的」になっており、ガスパイプライン「シベリアの力」は掛け値無く「世紀の契約」であり、石油や石炭の供給も増えており、ロシアが参加して中国で原子炉が建設中で、中国企業はロシアのLNGプロジェクトに積極的に参加し、鉱工業・農業の協業が強化され、宇宙開発や新技術の協力もあり、アムール川を越えて建設された2つの橋は文字通りの架け橋で、一帯一路とユーラシア経済連合のコーディネートもなされている、といった具合である。

 それに比べると、習近平も一帯一路とユーラシア経済連合のコーディネートといったことには触れているが、やはり全体としてあっさりしている。


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1411

 今朝のNHKのニュースで、英国筋の情報として、ロシアの占領当局がこのほどザポロジエ州(ウクライナ語読みではザポリージャ州)の州都をメリトポリに指定し、これは本来の州都であるザポロジエ市の攻略が困難なので事実上断念したことを意味するということを伝えていた。ロシア軍は州都のザポロジエを占領できたことは一度もなく、昨年9月の併合宣言以来、実質的にメリトポリを暫定的な行政の中心としていたわけだが、それを公式に制定したということのようである。

 ただ、この情報を他のソースで確認しようとしたところ、どうもそれらしい情報が見当たらない。ロシア側のザポロジエ州行政府HPや、メリトポリ市行政府HPを見ても、トップページから当該の情報を見付けることはできなかった。

 余談ながら、ウクライナ側には当然、正統なザポリージャ州行政府HPが存在する。

 ただ、その後色々と調べたところ、3月3日付でYe.バリツキー・ザポロジエ州知事代行が署名した知事令「ザポロジエ州の行政・地区構造について」という文書を確認することができた。これによれば、ザポロジエ州の行政的・政治的中心はメリトポリ市であるということが、確かに明記されている。

 ちなみに、その後バリツキー知事代行が語ったところによると、ザポロジエ市を「解放」した後も、同市が戦線から近すぎることなどを考慮して、メリトポリ市が州都に留まる可能性もあるということである。

 以上、個人的にロシアによる占領支配を認めるつもりはまったくないが、地理オタクの性で、反応せざるをえない動きだった。


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1408

 当ブログでは紹介済みのとおり、先日Wedge ONLINEに、「経済制裁してもロシア人の生活に影響が少ないのはなぜ? 穀物生産国に見えて実は不安定なロシアの食料安全保障」と題する論考を寄稿した。幸い、PVも伸びているようだし、内容についても好意的な評価をいただいたりして、力を入れて書いた甲斐があったと思っていたところだった。

 ところが、思わぬ事態となった。ロシア国営RIA Novostiに、「Японский профессор восхитился гениальностью россиян в условиях санкций(日本の教授が制裁下におけるロシア国民の天才性に感銘を受けた)」として、拙稿を都合良く切り取った記事が出てしまったのである。この内容は、いくつかのメディアによって拡散されたようだ。

 私の元々の論考を読んでいただければ分かるとおり、そもそも「ロシア人は抜け道を考える天才です」というのは、私自身の言葉ではなく、ロシア在住日本人ジャーナリストの徳山あすかさんの発言を引用したものだった。構成上、この部分は「つかみ」のようなもので、いわば譲歩節であり、一見ロシアの消費生活は平穏無事だが、食料安全保障という観点から見ても、思わぬ死角があることを論じている。ロシアメディアの伝え方は、そうした部分は切り捨て、私がロシア国民の創意工夫や制裁への耐性をひたすら称賛したかのような、恣意的な切り取りとなっている。だいたいハットリ・リンスケって誰やねん。

 まあ、別に怒っているわけでなく、珍事件だったなと、そんな気分だ。


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1407

 フランスのTechnip Energiesは、世界的な石油・ガスサービス会社である。こちらの記事によるとこのほど同社は、ロシアLNG事業からの撤退に伴い、2023年の売上が減収になると発表した。

 記事によると、Technip Energiesは昨年10月、2023年上半期のうちにロシアのアルクチクLNG2プロジェクトから撤退する旨の契約に調印した。2021年12月末時点で、同社の受注残高に占めるロシア・プロジェクトの比率は23%だった。アルクチクからの撤退は、2022年の業績には直接の影響を及ぼさない。しかし、2023年については、売上見通しは当初見込まれていた62億~65億ユーロから、57億~62億ユーロへと下方修正される、といいうことである。


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cola

 ロシアのウクライナへの全面軍事侵攻開始を受け、コカ・コーラがロシア市場からの撤退を表明してから、1年が経った。だが、こちらの記事によると、ロシアのコーラ飲料市場で、コカ・コーラは依然、14.1%のシェアがあるということである。«Продажи.рф»の調査にもとづき、2023年1~2月のシェアを前年同期のそれと比べた上図を参照されたい。

 記事によると、2023年1~2月に最大シェアだったのはドーブルィ・コーラで、それらの製品は、かつてコカ・コーラHBCロシアに属し、現在はMulton Partners傘下に入ったロシアの諸工場で生産されている。

 それに次ぐシェアをいまだに占めているのがコカ・コーラである。コカ・コーラのロシア工場では2022年3月にはロシアでの生産停止の判断を下し、コーラの原液が入荷しなくなった。8月にコカ・コーラは、在庫がなくなり次第コカ・コーラの販売は取り止め、今後はドーブルィ、リッチ、マヤ・セミヤといったジュースの販売に特化していくと発表した。7月末にコカ・コーラのロシア現地法人はMulton Partnersに社名を変更し、ドーブルィ・コーラを生産し始めたという経緯である。

 11~12月には、一部で完全に模造品のコカ・コーラが出回ったこともあった。

 現在、ロシア市場に出回っているコカ・コーラは、ドイツ、ポーランド、英国、アルバニア、ベラルーシ、イランなどからの輸入品である。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 1963年3月22日、ビートルズがファーストアルバム「Please Please Me」(正確にはそのモノラル盤)を発表するという、世界のポップス史上重要な出来事があった。ただし、そんなものがすぐに米HOT 100に反映されるはずはなく、まだ米チャートは嵐の前の静けさといったところ。

 そんな中、今週トップに立ったのが、ボーカルグループ、Ruby & the Romanticsのデビューヒット、Our Day Will Comeだった。女性ボーカルをフィーチャーしたボサノバもの。色んな人が取り上げているスタンダード的な曲だけど、正直言うとこのRuby & the Romanticsがオリジナルだとは知らなんだ。これもつい先日取り上げたばかりのJohnny Cymbal - Mr. Bass Manと同じKAPPレーベルか、すごい勢いだな。

その頃ソ連では
1963年3月21日:ソ連が人工衛星「コスモス13号」を打ち上げ。

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 開戦後、ロシアが貿易統計を発表しなくなり、個人的に断片的な情報をかき集めてロシアの貿易動向を推計するという作業を続けている。先日は、シンポジウムにおいて、“Analyzing Russia’s Foreign Trade Performance with No Russian Official Statistics Available”なんて報告をしたものだった。

 そうしたところ、昨日開かれたロシア産業家・企業家同盟の総会において、プーチン大統領が2022年の貿易額に言及する場面があった。ただし、プーチンは輸出額・輸入額を直接述べているわけではなく、輸出入合計が8.1%増で8,500億ドル、輸出は19.9%増、輸入は11.7%減、貿易黒字は3,320億ドルで70%増という形で、断片的に数字を挙げるに留まった。

 というわけで、プーチン発言をもとに、正式に発表されていた2021年の輸出入額と照らし合わせ、服部が上掲のような表にまとめてみたので、お目にかける。

 なお、ロシアの輸出入額の数字には、税関局および統計局が発表していた通関統計と、中央銀行が発表していた国際収支統計とがあり、両者には微妙なズレがある。プーチンは、どちらベースの数字なのか明言していないが、私が確かめてみたところ、通関統計ベースの方が数字が整合したので、プーチンが挙げたのはその数字だったと判断した。唯一、貿易黒字の伸び率は66.4%ではないかと思うのだが、ロシア人は急に数字がアバウトになることがよくあるので、プーチン発言は成果を強調する意味合いもあり「貿易黒字は70%近く伸びた」という意味だと解釈することにする。

 以前もお目にかけたが、私は断片的な情報をもとに、2022年の輸出入動向を下図のように推計していた。まあ、だいたい近かったか。

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pg

 ワグネルの創始者として有名なYe.プリゴジン氏、個人的にはこれまで大した知識もなかったのだけれど、先日出演したテレビ番組で訊かれることになったので、自分なりに調べてみた。なお、プリゴジン氏、1961年6月1日生まれの61歳という、実に覚えやすい生年月日であることを知った(61歳なのはあと2ヵ月半ほどだが)。

 収拾した情報の中では、T.スタノヴァヤ氏によるこちらの論考が一番良くまとまっていたので、以下で骨子を整理しておく。

 プーチンのプリゴジンとの協力関係は、他の仲間との関係と同様である。プーチンは、特定の分野におけるある種のプロジェクトを仲間に任せることがあり、たとえば石油のI.セーチン、ガスのA.ミレル、軍需のS.チェメゾフなどである。ただ、この面でプリゴジンは不遇であり、プーチンとそれほど近くないので、国家的規模の役割は任されなかった。プリゴジンは、仕事面でもプライベート面でも、プーチンを感心させる機会がなかった。

 プリゴジンにチャンスが到来したのは、クリミア併合、欧米との対立、ドンバス紛争、シリア紛争後に、隠密の地政学的手段の必要が生じてからである。プリゴジンはロシアにとって新たな非公式的影響力の手段を駆使するようになり、民間軍事会社およびメディア工作という秘密裡の役割を果たすようになった。国家機関が課題を上手く解決できない時に、疑似国家機関がそれを補助するという方式を、プーチンは気に入った。対ウクライナ戦争でも出番が回ってきた。

 ただし、プリゴジンの位置付けはあくまでも非公式であり、プーチンは国家機能をアウトソーシングすることには同意したものの、プリゴジン自身を法的に認めることはしなかった。プーチンはプリゴジンを軍や特務機関に代わるものとしたり、シラビキを抑えるために使ったりはしなかった。そのような行為は、プーチンの国家権力観にまったく反することである。プーチンはプリゴジンに賭けたのではなく、前線の崩壊をどんな手段を使ってでも立て直す必要があったにすぎない。プーチンの世界観の中では、民間軍事会社は国家の強化のために使うものであり、それを乱すようなことがあってはならないのだ。

 プリゴジンは公式的なステータスを持たないだけでなく、プーチンとの関係においても、自立した存在ではない。大統領の友人たち、政権高官の仲介を必要としている。とりわけ、プリゴジンとプーチンの関係を取り持つ存在と長らく考えられてきたのが、コヴァリチューク兄弟であった。兄弟の助けにより、プリゴジンは情報を上げることができ、それにより政権からの非公式な支援が得られるのである。

 シリア戦争に参加したことで、プリゴジンはロシア連邦軍参謀本部情報総局幹部とのコネができ、実質的に参謀本部の請負機関として働いたので、国防省との関係は悪化した。アフリカでの活動で、各国のロシア大使館と特別な関係を築き、これは外務省を苛立たせた。囚人をリクルートしたことは、連邦刑執行庁、司法省、検察、連邦保安局などの強い不満を招いた。

 こうした状況下で、プリゴジンの可能性は他に依存し、限られたものとなっている。プリゴジンがプーチンから是認されているプロジェクトは、漠然としたものが多く、資金および組織面で、当局からの全面的な支持を約束されているわけではない。

 いきおい、プリゴジンは主に自前で仕事をしなければならない。これは優位点でもあり弱点でもある。ウクライナとの戦争でも一定の自主権を獲得し、軍上層部のV.ゲラシモフ、S.ショイグなどと対立した。数ヵ月が経ち、彼らはプーチンに、ワグネルの勝手な動きはロシア軍の妨げになっていると訴え、プーチンはそれを聞き入れてゲラシモフを特別軍事作戦の指揮官に任命した。

 プリゴジンはプーチンに特別に近いわけではなく、頻繁に会っているといった情報は事実に反する。

 ロシアのエリートたちは、プリゴジンがプーチンに接近するのを許さない。プリゴジンを自主権を持ち、野心的で、言いたい放題にしておくことは、政権にとってだけでなく、国家にとって危険である。プリゴジンは任せられた一定領域では自由を与えられているかもしれないが、あくまでもその範囲内である。最近ではコヴァリチューク兄弟との絆も失われつつある。大統領府、特に内政部門との間にも亀裂が生じている。

 プリゴジンの国民的人気についても、過大視する必要はない。レヴァダ・センターの調査によれば、昨年末に実施した調査で、信頼する政治家としてプリゴジンを挙げたのは、1,600人のうち3人しかいなかった。

 それでもプリゴジンがすぐに凋落するというわけではない。第1に、彼はプーチンに貴重な情報を上げることができる。第2に、プーチンはプリゴジンを本物の愛国者だと捉えている。ウクライナで苦戦が続いていることからも、プリゴジンの存在感は大きくなる。

 ただし、プリゴジンがプーチンに特に近いというわけではなく、後継者候補になるわけでもない。プーチンの評価と、プリゴジンの自意識とで、乖離が広がっている。プーチンにとり民間軍事会社はあくまでも国家の別動隊であり、もっぱら国のために働かなければならない。プリゴジンも、元々は黒子に甘んじていたのだが、最近その枠をはみ出し、革命的な価値観を掲げ、政治の表舞台に立とうとしている。

 プーチンにまだ力があるうちは、グループ間のバランスをとることができ、プリゴジンも無害であろう。しかし、プーチンが弱体化するようだと、プリゴジンが野心を強め、直接プーチンを攻撃しないまでも、体制に挑戦する可能性がある。戦争はモンスターを生み出すものである。


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 当ブログでは、しばらく前まで、欧州ビジネス協会の発表にもとづき、ロシアの乗用車市場における月ごとの販売状況を定番でお伝えしていた。2022年12月までの集計はこちら。

 しかし、欧州ビジネス協会の発表は、各メーカーが同協会に申告した数字を集計していたらしいのだが、ロシア市場が色々とグレーな世界になってきたためか、同協会に数字を申告しないメーカーが増えてきたようである。今年に入ってからは、わりと数の多かったルノーのデータなども反映されなくなり、欧州ビジネス協会の統計はほとんど使い物にならなくなってしまった。

 そこで、私としても、別の手を考えざるをえなくなった。そこで、今後はもう一つの有力な情報源であるアフトスタットの統計を参照することにする。最新の2023年2月の新車販売動向は、こちらのサイトに出ている。上表もそこから拝借したものである。最初からアフトスタットでもよかったのだが、アフトスタットは上位25ブランドの数字しか公表しておらず(有料購読すればいいのかもしれないが)、それ以下の中小ブランドの数字も得られる点にメリットがあり、昨年までは欧州ビジネス協会を使っていた次第だ。

 さて、アフトスタットによれば、2月にはロシアで56,148台の新車が販売され、これは前年同月比43.4%減だったということである。

 当然のことながら、欧米日が正式な対ロシア供給を停止し、市場はロシア・ブランド、中国ブランド優位に変わっている。なお、突如ランキングに登場したOMODAというのは、中国系Cheryの新ブランドということらしい。

 ただ、今回の表を見て、意外に日本勢の車も売れているなということを感じる。昨年までであれば、2月24日の侵攻開始以前に仕入れた在庫がメインだろうと想像していたが、ここに来てこれだけまとまった販売があるとなると、やはり相当数が並行輸入で新規入荷しているのだろうと推測できる。

 たとえば、トヨタ車に関しては、昨年暮れに出たこちらの記事で、どのような並行輸入車がロシアで購入可能かということが紹介されている。しかも、並行輸入が始まったことで逆に、従来ロシア市場には供給されていなかったモデルも入手可能になっているということである。Harrier、Sequoiaといったモデルがそれに該当する。また、北米向けのピックアップTundraも、入荷している。インドネシア工場で生産されるクロスバンのRushも然りだ。タイ工場製のCorolla Crossも新規お目見えした。以前はサンクトペテルブルグ工場から供給されていたCamryやRAV4も、今では中国製の並行輸入に置き換わった。


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 それにしても、ロシア人というのは本当に「経済フォーラム」が好きな人種だと思う。ロシア国内で開かれる経済フォーラムの中では、以下のものが8大経済フォーラムと呼ばれている

  • ペテルブルグ国際経済フォーラム
  • 東方経済フォーラム
  • クラスノヤルスク経済フォーラム
  • ロシア投資フォーラム
  • ヤルタ国際経済フォーラム
  • ロシアコーリング!
  • ロシアビジネス週間
  • ガイダル・フォーラム

 なお、この現象につき、以前「なぜロシアはビジネス大イベントが好きなのか?」というコラムで私見を披露したので、よかったらご参照いただきたい。

 さて、昨晩出演したテレビ番組の中で、ロシアのとあるオリガルヒが、ロシアの資金は来年にも尽きると警告したという情報についてのコメントを求められることになった。そこで事前に調べたところ、今般開催されたクラスノヤルスク経済フォーラムにおいて、O.デリパスカが述べたことが記事として取り上げられ、一部で話題になっている様子だった。

 デリパスカの発言動画がこちら、それを取り上げた英語版フォーブスの記事がこちら、日本語版の記事がこちらである。日本語版から、関係個所を引用させていただくと、

 ロシアのオリガルヒ(新興財閥)であるオレグ・デリパスカ(55)は2日、外国人投資家を追い払っているロシアの当局を批判し、追加の資金がなければロシアは早ければ2024年にも資金不足に陥ると警告した。ウクライナでの戦争で支出がかさみ、ロシアが赤字のままいつまで持ち堪えられるかという疑問がある中、同国のビジネス環境に警鐘を鳴らしている。

 シベリアで開催されたクラスノヤルスク経済フォーラムで、デリパスカは「国家と企業が絶えず対立していることを常に心配している」と発言。さらにロシアのウクライナでの戦争が2025年までに沈静化することはないと仮定し、あと10年間は欧米の投資家がロシアを避ける可能性を指摘した。

 「来年には金が尽きるだろう。だからこそ、彼らはすでに我々を揺さぶり始めているのだ」とデリパスカは話し、ロシアが事業を継続するためには外国人投資家が「必要」だと付け加えた。デリパスカはロシアの複合企業Basic Element(ベーシック・エレメント)を創業し、アルミニウム生産で財を成した人物だ。

 全体として、翻訳はそれほど不正確ではない。しかし、日本語版のタイトルにあるように、「国の資金が来年尽きる可能性」と銘打たれていると、どうしても我々は、「国庫が払底して戦争を戦えなくなる」という意味だと解釈しがちである。そうではなくて、ここでデリパスカが言っているのは主に、シベリアの、ひいてはロシア全体の、経済活動を支えるための投資資金がなくなってしまうといった意味合いである。もちろん、それ自体きわめて重大なことだが、「戦費が尽きる」といったこととは別問題である。

 上掲の8大経済フォーラムには、それぞれの棲み分けがある。クラスノヤルスク経済フォーラムは、シベリアの地域発展がテーマだ。参加者の発言も、その文脈に沿ったものとなる。デリパスカは、そういう文脈で、応分の役割に則った発言をしている。

 ロシアでは、プーチン体制をイデオロギー的に批判したりしたら弾圧されるが、実務家が純粋に経済的に窮状を訴えたりするすることは、許容される傾向にある。今回のデリパスカ発言も、「戦争だけでなく、少しは経済のことも考えてよ」というアピールではある。しかし、デリパスカのような人物は、分をわきまえており、一線を越えた政権批判などはしないものである。


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 このほど、Wedge ONLINEに、「経済制裁してもロシア人の生活に影響が少ないのはなぜ? 穀物生産国に見えて実は不安定なロシアの食料安全保障」と題する論考を寄稿した。かなり力を入れて書いたものなので、ぜひご一読いただければ幸いです。

 このレポートでは、物価統計についての考察がキモになっている。私自身、普段はロシアの消費者物価指数という、大きなくくりの指標にしか目を向けていなかった。それを、今回初の試みとして、食品・非食品・サービスという内訳を示し、なおかつそれらの主な品目の価格動向を図示することで、ロシアの物価に潜む様々なニュアンスにつき気付きを得ることができた。ロシアの物価における季節要因についても、改めて考えさせられた。

 なお、文中で記しているように、サービスの中でも、暖房費、電力料金は階段状の変動を示している(上図参照)。これは、政府により統制されているからである。政府は物価全般に合わせて、原則的に半年に一度、公共料金の見直しを行っている。2022年12月の引き上げで、暖房費は侵攻開始前から13.9%増に、電力料金は13.5%増になった。

 そして、ロシア政府は現行料金で1年半据え置き、次の値上げは2024年7月になるとしている。これはどう考えても、露骨な大統領選対策であろう。つまり、光熱費をしばらく据え置いて、2024年3月の大統領選を乗り切り、ほとぼりが冷めたところで、満を持しまた値上げするということなのだろう。


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 アップルはロシアから撤退したが、ロシア市場からiPhoneが完全に消えてなくなったわけではない。こちらの記事が、最近のロシアiPhone事情につき伝えている。

 記事によると、ここに来てロシアには、アクティベーション(初期設定)済みのiPhoneが流入するようになっている。それは、ロシアと取引してきた欧米企業が、米国の制裁の対象になること、アップルとの関係が切れてしまうのを恐れ、ロシアへの並行輸入に協力しなくなっているからである。米国は300ドルを超えるスマホの対露輸出を禁止している。

 いったん外国で初期設定が完了すれば、それ以降の行方については、アップルは特に頓着しない。初期設定済iPhoneのロシア流入は、今後どんどん増えていくと見られる。

 ロシアの消費者にとっては、こうしたデバイスの難点は、アップルのグローバル保証を受けられず、ロシアの販売業者の1年間の保証だけになってしまうことである(注:日本などの諸外国でもiPhoneの保証期間は1年だと思うのだが…)。

 販売業者がiPhoneを仕入れる際に、100台くらいまでの少量であれば、マーケットプレイスで、初期設定されていない、まっさらなiPhoneを入手することも可能だが、高くつく。それ以上に大量に調達するとなると、初期設定済みを選ぶしかなく、その方が割安でもある。


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 昨年の夏くらいだったか、メディアで「ロシア国民のプーチン支持、軍事作戦支持は揺るがないのか?」という質問を受けた際に、私は、ロシア国民は自分に身近な生活の問題で判断するので、年金の未払いや公務員賃金の遅配などが起きれば雰囲気が一変するだろうというようなことをお答えした。

 そうしたところ、今般まさにこちらの記事が、ロシアで公務員賃金の大規模な未払いが始まったということを伝えた。

 ただ、記事を読んだところ、今のところ「大規模な」未払いとまで言えるかどうかは、微妙という気がした。モスクワタイムズは、プーチン体制の危機を強調する傾向があるので、差し引いて読むべきかと思われる。

 ともあれ、記事によると、ロシアの各地域では公務員賃金の未払いが広がっており、3月1日現在でその総額は1億5,200万ルーブルに達している。年初の時点ではゼロだったので、大変な急増である。遅配の対象者は、1万8,900人に上っており、特に教員がその影響を受けている、という。


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 昨日、ロシア統計局より、2月のインフレ率(消費者物価上昇率)が発表されたので、恒例により図を更新してお目にかける。

 2月のインフレ率が3月10日モスクワ時間19:00に出るということは、以前から予告されていた。個人的には、「そんなにもったいぶらずに、集計が終わったら、即座に発表すればいいのに」などと思っていた。しかし、考えてみれば、これが米国であれば、雇用統計やら物価統計やら、そういうのが投資の判断材料になったりするわけで、公平性を保つためにも、何日何時何分に発表というのは、あらかじめちゃんと決まっているはずである。ロシアは、今は投資市場は壊滅状態だが、各種の指標を経済活動に活用してもらうために、発表日時をちゃんと決めておくというのは、重要なのだろう。

 さて、2月のロシアの消費者物価は、前月比0.46%増、前年末比1.30%増、前年同月比11.38%増だった。消費者物価上昇率は、5ヵ月連続で前の月よりも上昇していたが、2月にそのプロセスに歯止めがかかった(月が短いという要因も多少あるかもしれないが)。だいたい、年率10%くらいのインフレの世界に着地しつつあるといったところか。

 寒冷地のロシアゆえ、冬場は野菜・果物を自給できずに輸入に頼るため、2月も青果物の値上がりが続いた。特にタマネギは前の月に比べて34.2%も上がっている。輸出国の中国、エジプト、中央アジアなどはホクホクであろう。このほか、トマトの15.2%増、ブドウの13.7%増、バナナの11.5%増も目立っている。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、チャート的にはこのあともうちょっと上がるのだが、今週37位に位置していたのが、Johnny Cymbalの有名曲、Mr. Bass Manだった。改めて見ると、この曲、ジョニー・シンバルの自作曲だったのか。音楽的才能のある人だったんだな。また、KAPPというレーベルも初めて知った。

その頃ソ連では
1963年3月13日:1923~1932年に存在したソ連最高国民経済会議が再び創設される。議長にはD.ウスチノフ。

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 先日、「ロシア市場からの外国タイヤメーカー撤退の動き」と題するエントリーの中で、ロシアに進出した外資系タイヤメーカーの中で、独系コンチネンタルは、8月に操業を再開して現在に至るということをお伝えした。しかし、今般伝えられたこちらの記事によると、やはり同社も最終的にはロシアから撤退する方針だが、その撤退を「円満に」行おうとしているということである。

 記事によると、コンチネンタルではロシア市場からの円満な撤退に向け努力を重ねていると、このほど同社トップが公式HP上で表明した。

 開戦後、原料、エネルギー、輸送などのコストが上昇し、コンチネンタルはロシアで8.5億ユーロの損失を被った。制裁により、ロシアに保有していた8,700万ユーロの資産が無価値化した。

 コンチネンタルのロシアでの生産も開戦直後に停止した。従業員は一時帰休となり、その間は3分の2の給与を受け取った。その後、新たな輸送路、サプライヤーを開拓し、8月1日に再開にこぎ着けた。

 コンチネンタル・カルーガの生産能力は年産400万本。Continental、Gislaved、Matadorというブランド名でタイヤを販売している。タタルスタン共和国チストポリに所在する商用車用タコグラフ生産合弁にも出資している。1,300人を雇用している。


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 こちらの記事によると、ロシアのA.ノヴァク副首相がLNG生産発展に関する政府幹部および業界関係者の会合を主宰し、LNG生産拡大の目標を掲げたということである。

 この席でノヴァク副首相が述べたところによると、現時点で稼働しているLNGプラント(大規模なものはサハリン2とヤマルLNG)による生産量は、年間3,300万tとなっている。現在建設中のプロジェクト、すなわちウスチルガ、アルクチクLNGが加われば、ロシアのLNG生産は近年中に年間6,600万tとなる。戦略的課題は、1億t以上の生産を達成することである。

 1億t達成のために、年間3,400万tを生産するプロジェクトのための追加的な資源基盤を見つけること、当局と企業の包括的な交流を組織すること、LNG産業用の大型・中型設備の国産化を確実にすること、行政上の障壁を減らすための対策を講じることが必要であると、ノヴァク副首相は述べた。

 会議にはサンクトペテルブルグ鉱山大学のV.リトヴィネンコも出席し、LNG部門にとっての最大の問題は人材であり、現状では人材の供給が需要を大きく下回っていると指摘、人材育成が急務であると主張した。

 副首相の指示により、エネルギー省と産業・商業省が共同で、LNG生産設備・技術の国産化プロジェクトのロードマップを作成することになり、80%の国産化比率達成が盛り込まれることとなった。


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 ロシアのシンクタンク「発展センター」というところが発表しているロシア経済に関するコンセンサス予測は、個人的に以前はよく取り上げていたのだが、ウクライナ侵攻開始後、情報が更新されなくなったりして、しばらくご無沙汰だった。今般HPをチェックしてみたら、2023年2月14~20日に実施されたアンケート調査を集計したコンセンサス予測が出ていたので、それを紹介する。コンセンサス予測というのは、様々な機関による予測を平均したものであり、いわば最大公約数的な見立てと位置付けられるので、その意味で参照する価値があると思われる。

 まず、年ベースのコンセンサス予測が、上表のとおりとなっている。2023年の実質成長率がマイナス1.8%、2024年がプラス1.4%ということになっている。不振ではあるが、破局的ではない、といったところか。

 次に、四半期ベースのコンセンサス予測が、下表のようになっている。前年同期のベースが異なる分、2023年第1四半期の落ち込みが5.4%と最も大きいという予測となっている。

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 相変わらず、さえわたる作図技術! というわけで、こちらのサイトに見るとおり、ロシア財務省から、2月のロシア連邦予算の執行状況が発表されたので、最近定番で作っているグラフを、上掲のとおり更新してみた。拡大表示してご利用ください。

 ただし、今回ロシア財務省が発表したのは、1~2月の数字である。上図の2月の数字は、今回発表された1~2月の数字から、以前に出た1月の数字を引いて、私が算出したものであることをお断りしておく。

 さて、2月のロシア連邦財政では、石油・ガス歳入、非石油・ガス歳入とも前月からは拡大し、一方で歳出は前月から縮小したため、結果として単月の赤字幅は前月よりも改善した。しかし、大幅な財政赤字の基調が根本的に好転するには至っていない。

 1~2月の合計では、歳入が前年同期比24.8%減となる一方で(特に石油・ガス歳入は46.4%減)、歳出は51.5%も拡大している。


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 ロシアの石油輸出に関しては、ウラル原油の輸出動向やその価格が注目されることが多いが、太平洋パイプラインでアジア市場に運ばれるESPOは、ウラルとは異なる動きを示している。こちらの記事がそのあたりを論じているので、以下要旨をまとめておく。

 2022年12月のEU禁輸発効と価格上限制の始動により、ウラル原油のブレントに対する値引き幅は拡大した。ウラルはロシアの欧州部港湾から輸出され、従来は欧州に向かっていたものが、現在は約1ヵ月もかけてアジアに向かっている。

 ESPOは、ウラルとは異なり、ブレントに対する値引き幅が小さい。ESPOは低硫黄であり、パイプラインで直か、またはコジミノ港から輸出され、海路でも5日ほどでアジア市場に運ばれるからである。

 ESPOはウラルに対して1バレル当たり20ドルも高い。2023年1月の場合、ウラルのブレントに対する値引き幅は34.6ドルだったが、ESPOは11ドルほどだった。ESPOはドバイ原油にリンクして値が動いている。

 ESPOを輸出している主な会社は、まずロスネフチであり、それにスルグトネフチェガス、ガスプロムネフチが続き、ルクオイルは小規模である。彼らは、ESPO価格で輸出し、課税はウラル価格をもとになされるので、その差の分、利益を被っている。ただ、政府の財政不足により、見直しがなされるかもしれない。


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