ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け。

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 目下、ウクライナの海運が封鎖され、大量の穀物が港から積み出せない状態となっている。ならば鉄道で欧州に運んで、欧州で売るなり、欧州の港から輸出すればいいではないかと考えがちだが、ロジスティクス的観点から、それは容易ではない。最大の要因は、旧ソ連のウクライナは鉄道のレール幅が広軌の1,520mm、欧州は標準軌の1,435mmで、連続輸送ができず、いちいち国境で積み替えなければならないという点だ。

 個人的には、「今すぐにというのは難しいだろうが、ウクライナが欧州との統合を真剣に考えているなら、標準軌の1,435mmの鉄道を敷設し直し、欧州鉄道ネットワークに統合されたらどうか。どうせウクライナの既存の鉄道は恐ろしく老朽化しているわけで、いずれにしても近代化は必要であり、ならば欧州規格で作り直したらいいのではないか」などと考えていた。

 そうしたところ、こちらに見るように、ウクライナのD.シミハリ首相はこのほど閣議の席で、我が国は欧州標準軌鉄道の建設を段階的に開始すると表明した。最初は大規模なハブ、大都市間を結び、その後、国全体にそれを広げていくということである。なお、以前にはウクライナ鉄道の幹部が、標準軌への切り替えは高価で、長期間を要し、困難ではあるが、それでも必要であると発言したことがあった。


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 ロシアが天然ガスの輸出先を欧州から中国にシフトするためには、追加的なインフラ整備が必要である。現在のところ、パイプライン「シベリアの力」を通じた中国向けのガス輸出はサハ共和国のチャヤンダ・ガス田のみから行われているが、それだけでは資源基盤が充分ではない。イルクーツク州のコヴィクタ・ガス田を開発するとともに、チャヤンダとコヴィクタをパイプラインで結ぶ必要がある(上掲地図参照)。

 それで、こちらの記事によると、ガスプロム社によるそのチャヤンダ~コヴィクタ区間のパイプライン建設は、93%が完了したということである。A.ミレル社長がI.コブゼフ・イルクーツク州知事との面談の際に明らかにした。コヴィクタからのガスの供給は、2022年末頃の開始が見込まれている。


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 トルコ系の情報機関であるAAが、5月20日付のこちらの記事で、ロシアが欧州に天然ガスを輸出する上での選択肢が狭まってきたということを伝えているので、以下のとおり要旨を整理しておく。

 ロシア・ガスプロムはウクライナ経由での天然ガス供給縮小を余儀なくされ、ポーランド経由も停止を迫られたので、もう欧州に輸出する輸送路の選択肢があまり残っていない。

 2月24日から5月11日の間は、欧州向け輸送量に、大きな変化はなかった。それが、ロシアの対ウクライナ国境にある通過ポイントの一つが閉鎖されたことで、輸送量の低下がもたらされた。

 閉鎖されたのは、ウクライナのルハンシク州に面したロストフ州ソフラノフカのポイントである。ガウプロム側の説明によると、同ルートのトランジットは停止するとの通告が、ウクライナ側からあった。このポイントのキャパシティは日量3,000万立米であり、ロシアの対欧州供給の30%を占めていた。

 このポイントの閉鎖により、ロシアのウクライナ経由欧州向けの輸送は、25%低下し、日量7,200万tとなった。さらに、5月19日現在では、5,160万tとなっている。

 現時点では、ウクライナ・スムィ州に面したロシア・クルスク州スドジャの通過ポイントを経由するルートでのみ、ウクライナ・トランジット輸送が行われている。なお、上の地図で、赤がソフラノフカ、緑がスドジャとなっている。

 他方、ベラルーシ領、ポーランド領を通るヤマル~欧州パイプラインも、現時点ですでに稼働していない。同パイプラインのキャパシティは年間330億立米である。

 専門家によれば、ウクライナ・ルートが完全に停止し、ノルドストリーム1およびトルコストリームのみとなると、欧州の追加需要に対応することは、特に冬季には、不可能となる。


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 フェイスブックを眺めていたら、下に見るように、ウクライナ側のV.ダツェンコ氏という軍事アナリストが、この3ヵ月でロシア・ウクライナ両国保有の兵器数がどのように変化したかを図示した資料が出ていた。たとえば戦車は上掲のとおりで、一番左が2月24日現在の保有数、次が喪失数、次が補充数、最後が5月20日現在の保有数となっている。グレーのロシアであれば、元々2,700台だったのが、2,700-1,263+100=1,500台で、だいぶ減った。逆に紺色のウクライナ側は、元々858台だったのが、858-250+500=1,058で、欧米からの支援が効いて、増えている。

 大祖国戦争の最盛期に、ソ連は一日100台近くの戦車・自走砲を生産したのではないかと思う。それに比べると、この3ヵ月でロシアが補充できた戦車が100台だとすれば、一日1台ペースであり、ダメだこりゃ感が漂う。

 


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 ロシア鉄鋼業の現況に関するいくつかの資料に目を通したので、気になった部分をメモしておく。

 こちらの記事によると、制裁により欧米に輸出できなくなった冶金産業の製品(鉄鋼だけでなく非鉄金属も含まれる)は、年間400万tと見積もられる。ロシアの輸出の10%程度なので、破局的というわけではない。しかし、ロジスティクスへの打撃等々で、内外の需要が低下し、生産の縮小は30%、1,300万tに及ぶ。制裁の対象には、一連の金属メーカーの幹部も含まれており、A.モルダショフ会長がリスト入りしたセヴェルスターリは3月2日からEU向けの輸出を停止した。

 こちらの記事によれば、2021年のロシアによる金属輸出のうち、EU向けは4分の1ほどであった(上掲記事の10%程度という話と整合しないが、これは非鉄金属を除いた鉄鋼のみか?)。EUの鉄鋼輸入の22%がロシアからとなっている。G.ソロキナという専門家の指摘によれば、欧州で進められている脱炭素化により、「汚い生産」はEU域外に移転される傾向にあり、それゆえにロシアからの完成鋼材や鋼管の輸入が禁止される一方、鉄鋼半製品は禁輸の対象外となった。

 こちらの記事によると、Yu.コスチュヒンという専門家が、ロシア冶金産業にとり代替市場となりうるのは、中国、ベトナム、タイ、インドネシアなどであるとの見解を示した。ただし、その場合には輸送コストが大幅に増大する。また、アジア市場では欧米市場よりも価格が低いので、メーカーは値引きをしなければならない。もっとも、現在ロシアメーカーは何としても生き残らなければいけないというフェーズにおり、利益率のことは構っていられない。現状を戦略的に打開するには、内需を増やすことであり、建設事業での政府調達、機械産業の発展が方策となるが、それには数年単位の時間を要する。もしも冶金産業の減産が20%ほどに留まるなら許容範囲だが、40%となると危険水域だと、コスチュヒンは指摘した。

 こちらの記事によると、欧米の制裁により、ロシアの大手鉄鋼メーカーの売上は10%ほど低下しそうで、特に欧州に注力していたセヴェルスターリ、ノヴォリペツクが被害を受ける。ノヴォリペツクは米国に加えEU圏のデンマーク、ベルギー、イタリアに圧延工場を有している。EUの制裁により、ノヴォリペツクは7.2億ドル(売上の8.5)、セヴェルスターリは39億ドル(売上の33.5%)を失う。一方、マグニトゴルスク、エヴラズは、国内市場、アジア・中近東市場などを志向しているので、被害は少ない。ロシアおよびウクライナの輸出では半製品の占める比率が大きく、EU市場の半製品販売の84%は両国によるものだった。専門家が共通して指摘するのは、ロシアメーカーが苦境を脱するためには、代替市場にシフトすることであり、とりわけアジア市場であるという点である。特に、脱炭素化を打ち出し、自国内における「汚い生産」を制限しようとしている中国向けは、有望である。

 こちらの記事は、欧米の制裁を受けた外国鉄鋼メーカーの動きを伝えている。アルセロールミタルは3月半ばに、鉄鉱石および原料炭の代替調達先を確保し終え、ロシアからの原料の輸入を全面的に停止した。これまでは欧州工場向けの原料炭の20%をロシアから調達していた。メタロインヴェストから購入していた鉄鉱石も打ち切った。同社の場合は自前の鉄鉱石・石炭産地があるので代替が比較的容易だったが、他の欧州鉄鋼メーカーは事情が異なり、欧州鉄鋼業で用いられる原料炭の約半分はロシア産である。イタリアの鋼管メーカーTenarisはロシアとの売買を完全に停止したほか、セヴェルスターリとの合弁への投資も打ち切った。Tata Steelはインド、英国、オランダに工場を有しているが、4月半ば、ロシアからの原料調達を打ち切り、代替供給源に移行した。


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 ウクライナの鉄鉱石輸出に関するこちらの記事を眺めていたら、興味深いことに気付いた。まあ、こんなことを興味深いと思う人間は私くらいだろうが。

 ウクライナの鉄鉱石輸出は、ざっくり言うと、半分くらいが欧州向け、残りの半分が中国をはじめとする遠隔市場向けである。後者は当然海運であり、大部分がオデーサ州のピウデンヌィ港から積み出されている。問題は前者の欧州向けだが、中東欧の内陸市場が中心なので、鉄道輸送なのだろうと、これまで個人的に理解していた。

 今回の資料を見ると、確かに欧州向けは鉄道輸送が主流だが、一部、オデーサ州の西端にあるイズマイル港から船で運ばれている分もあるということを知った。その仕向け地として、オーストリアが示されている。

 イズマイルはドナウ川に面した実質的な河川港。ということは、ドナウ川の河川交通で、オーストリアまで運ばれているのだろう。そして、この資料では割愛されているが、ウクライナはルーマニア向けにも一定量の鉄鉱石を輸出しており、ルーマニアの製鉄所もドナウ川に面したガラチにあるので、同国向けもやはりドナウ川での輸送なのだろう。どうだい、興味深いだろ?


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 今般の戦争が始まって以来、職業的に困っているのが、ロシアが貿易統計を発表しなくなったことである。なにせ私の所属団体はロシアNIS貿易会と言い、直近は貿易促進というよりはむしろ制裁とか撤退についての情報発信を手掛けているが、いずれにしてもロシア側の貿易統計がなければ仕事にならない。

 ロシア側の対応を見ると、どうも出していいのは2022年1月までの貿易の数字で、ドンパチを始めた2月以降の数字を秘密扱いにしているようである。2月以降の貿易の数字は慎重に伏せられており、出たとしても輸出・輸入の総額だけで、詳しい内訳とかは発表される様子がない。

 それで、当方気を揉んだのは、ロシア連邦税関局が発行する通関統計集も出なくなってしまうのか?という点だった。これは、四半期報と年報が出ており、貿易の詳しい分析をするのに不可欠だからだ。

 ただ、これに関しては、本日チェックしてみたところ、こちらのページに見るとおり、今般2021年の年報までが無事にアップされた。右上にある「Годовой」というところから、年報のデータを無料でダウンロードできる。いつロシア当局の気が変わるか分からないので、慌てて全ファイル、ダウンロードした。

 これが、最終回という気がするな。


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 ロシアのプーチン政権では、様々な分野別に経済危機対策を検討する会合が続いているようである。

 こちらおよびこちらに見るように、4月20日にはプーチン大統領が主宰して冶金産業に関する会合が開催され、その中でプーチンは次のように発言した。本年6月1日までに「2030年までの冶金産業発展戦略」を更新することを提案する。その作業で重視すべきは以下の点である。第1に、向こう数年間は国内の金属需要が大幅に増大するようにすべきである。そのためには価格が手頃でなければならない。金属を大量に消費し、経済諸部門、各地域、国民の生活に総合的な効果をもたらす新たなプロジェクトを始動させることが重要である。住宅、エネルギー・社会インフラ、鉄道、橋梁などである。第2に、輸出先を、より有望でダイナミックな市場にシフトさせなければならない。これは多分に輸送インフラの発展にかかっており、近いうちに東部方面の鉄道に関する個別の会議を開催したい。情勢ゆえに作業を急ぐ必要がある。第3に、税制に関しては、すべての決定は、国内市場における金属の需要と供給の両方の観点と、長期的かつ戦略的な計画とリンクさせなけれればならない。冶金産業は操業に切れ目のない産業なので、冶金企業にロシア産の設備と消耗品をしかるべく供給するよう、政府に要請する。

 一方、こちらおよびこちらに見るように、5月17日には石油部門をテーマとした会合が開催された。この中でプーチンは次のように発言した。石油・ガス市場の変化は地殻変動的であり、旧来のモデルでこれまで通りのビジネスを続けることは不可能と思われる。新しい状況では、単に石油を採掘するだけでなく、最終消費者までの垂直的なチェーン全体を構築することが重要だ。国は、石油産業におけるビジネスモデルを刷新するために、国が果たすべきあらゆる役割を果たす。物流能力の改善、各国通貨での決済システムの構築、金融・保険サービスの提供、高いレベルの原料加工および自前の石油サービステクノロジー(油田の探査・開発を含む)の開発促進などである。

 というわけで、金属、石油という基幹産業の危機対策として、「国内」に重点を置こうというのが、プーチン政権の方向性となっている。両部門とも、輸出志向の産業なわけだが、欧米による制裁に直面し、付加価値の低い商品を大量輸出するというこれまでのやり方を見直し、高付加価値化や内需拡大、必要な投入財・サービスの国産化という目標を掲げているわけである。

 言うまでもなく、これらの目標は、従来もできることならやりたかったわけで、実際に試みてもきたわけだが、その都度失敗し、結局ロシアは資源を売って必要な高付加価値製品や高度製品は輸入するという姿に回帰してきたのである。当然、今後も困難が予想される。

 なお、冶金産業のところで話が出た税制の問題につき補足しておくと、今年1月に行われた税制の変更が事業者側の不満の種となっていたことがあった。年初から、鉄鉱石に対する地下資源採掘税が世界平均価格の5.5%に、原料炭では1.5%に、クラスノヤルスク地方の銅・ニッケル・白金族鉱石の採掘では6%に引き上げられ、さらにスラブ価格が1t当たり300ドルを超えた場合には溶鋼に対し国際価格の3%の特別物品税が課せられることになった。財務省としてはこれにより冶金、コークス、肥料の生産者から2022~2024年に5,460億ルーブルを徴収する意向であった。溶鋼に対する物品税だけでも、3年間で1,795億ルーブルに上るはずであった。2018年8月に当時経済担当大統領補佐官だったA.ベロウソフ氏が、冶金産業および石油化学産業から年間5,000億ルーブルの追加税収を徴収すべきだと提唱した経緯があった。しかし、今般の欧米の制裁により苦境に立たされ、冶金産業から税制を見直すべきだとの声が上がっていた。


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 今般の戦争の発端となったのは、2月21日にロシアのプーチン政権がドンバス地方の自称「ドネツク人民共和国(DNR)」と「ルガンスク人民共和国(LNR)」を国家承認したことであった。それから、3ヵ月が経過した。DNR、LNR、そしてロシア軍は、元々のウクライナのドネツク州およびルハンスク州の全域の支配を目指して戦いを続けてきたが、苦戦続きなことは周知のとおりである。

 で、結局のところ、元々のDNR、LNRの支配地域と比べて、どの程度拡大したのかを、3ヵ月という機会に改めて確認してみたいと思った。目に留まったのが、FANという情報機関のこちらのページに掲載されている5月20日現在の戦況地図だったので、それを上に見るとおり転載させていただいた。クリック・タップで拡大する。地図は毎日更新されているようだ。

 Z系の情報機関ゆえ、ロシアの戦果を過大にアピールしている可能性もあり、慎重な取り扱いを要するが、ウクライナ東部・南部の元々の州境とロシアによる占領範囲が一番分かりやすく表示されているので、これを使う点、ご容赦を。

 上掲の地図で、オレンジ色のところが開戦前のDNR、LNRの支配地域であり、赤が開戦後の占領地域で、斜線のところが(ちょっと良く分からないが)「封じ込めゾーン」とされている。

 改めて確認すれば、ロシア国境に接しているがゆえに攻めやすかったLNRの方は、大きく占領地域を広げ、かなり州の全域に近い形で支配を広げている。それに比べると、DNRはマリウポリを含め西には拡大したが、北には拡大できていない。ウクライナが強固な守備網を敷いていたし、ハルキウ、イジューム方面から南下してウクライナ軍を挟み撃ちにすることにも失敗し、ドニプロ方面からいまだに自由に兵器も人員も補充されているようである。

 改めてこうやって見ると、ドネツク州を占領した割合よりも、ザポリージャ州の占領割合の方が大きい。ただ、ヘルソン州に関してはロシアが支配の既成事実化を急いでいるのに対し、ザポリージャ州についてはロシア側がどのように処分しようとしているのか、情報がほとんど伝えられない。以前当ブログでお伝えした「タヴリダ県」の一部にするなんて説が流れた程度である。

 もちろん、現在はウクライナ側が戦闘に手応えを感じており、占領地域の解放を目指し攻勢を強めようとしているので、上の地図で赤の地域が最終的にどうなるかはまだ分からない。


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 ロシア『エスクペルト』誌の5月9-15日号に掲載され、こちらのサイトでも読める記事が、天然ガスをめぐるロシアとEUの関係について包括的に論じている。気になったポイントだけメモしておく。

  • 今般ロシア側が非友好国に対して要求した支払スキームによれば、ある月の代金を、翌月の上旬に支払うことになる。
  • ロシアの要求した支払スキームに応じていないのは、チェコ、ポーランド、ブルガリア。いずれもロシアへの供給依存度が高く、ロシアの供給なしでは次の暖房シーズンまで持たないことから、ウクライナでお馴染みのリアルおよびバーチャルのリバース供給が用いられることになろう。
  • ルーブルでの支払いと言うが、それはあくまでも名目的なことで、外貨での支払いが可能。ロシアがこのスキームを打ち出したのは、中銀の外貨準備が凍結されてしまったのと同じように、「パートナー」たちがガス輸出収入を凍結するような野蛮な措置のリスクをなるべく低めるのが目的。所定の外貨による支払いは変わっておらず、銀行取引の条件が変わっただけなので、既存契約の基礎的な条項にも抵触しない。むしろEU側が2022年中にロシア産ガスの輸入を60%カットするとしていることの方が、既存契約のあからさまな違反。
  • 2021年にEUはロシアから1,550億立米のガスを輸入し、これはEUのガス輸入の約45%、消費の30%だった。
  • ブルガリアは年間28億~32億立米のガスを消費し、その70~80%をロシアから輸入してきた。今年末をもって長期契約が満了するところだった。ブルガリアにとっての希望は、ギリシャのアレクサンドルポリスで建設中のLNGターミナルだが、それが稼働するのは2023年だし、ブルガリアがそれを利用できる保証はない。
  • ポーランドは年間210億立米のガスを消費。自国での生産が40億立米。供給多様化のためにバルト海沿岸に建設したLNG再ガス化プラントのキャパが50億立米。すなわち、ロシアからパイプラインガスが届かない場合の純不足は120億立米となる。ポーランドが期待をかけているのが、デンマーク~ドイツ~ポーランドを結ぶバルチックパイプで、これはノルウェーのネットワークとも繋がっている。実はポーランドはリアルリバースでドイツからロシア産ガスを輸入しており、その量は4月には日量3,000万立米に達し、年換算では110億立米となる。そしてそのリバース輸送に活躍しているのが、くだんのバルチックパイプ。
  • BP統計によれば、2020年にウクライナはロシアからガスを輸入せず、「その他の欧州諸国」から147億立米を輸入したことになっているが、これも欧州諸国に供給されたロシア産ガスがリバースされたものである。

 なお、記事にはいくつか有益な図が出ていたので、それを拝見。まず、欧州における主要なガス供給者を見たのが下図であり、ガスプロムのパイプラインガスがトップ。

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 同じく、欧州におけるガスの供給源を見たのか下図であり、青が域内生産、赤がロシアからの輸入、オレンジがその他からの輸入。

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 下図は、各国のガス輸入に占めるロシアからの比率。上からチェコ、ラトビア、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、フィンランド、エストニア、ルーマニア、ドイツ、ポーランドと続いており、ここまでが50%を超えている。

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 ロシア産ガスの欧州3大輸入国はドイツ、イタリア、トルコ。

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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、今週1位のAcker Bilk - Stranger On The Shoreという曲を知らなかったので、YouTubeで聴いてみたら、クラリネット演奏によるイージーなインスト曲だった。ロックの時代はもうすぐそこだが、1962年にはまだこんなのどかな曲が大ヒットする余地があったのだな。

その頃ソ連では
1962年5月27日:ソ連で主要な肉製品、乳製品の価格が値上げされる。

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 石油価格には色んな種類があるが、ヨーロッパでよく使われるのがブレント油価で、それに対しロシアの主力となっているのがウラル原油である。それで、普段ウラル原油はブレントより少し安いくらいの価格水準なのだが、2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ウラル原油に買い手がつきにくくなり、大幅にディスカウントされて販売されるようになった。

 それで、実際にブレントとウラルはどのくらい乖離して推移しているのか、どこかにデータをまとめた良い資料がないかと思って探したところ、打って付けのサイトを見付けた。まさにその価格差を時系列的に示したインターアクティブなグラフが、無料で利用できるではないか(上の画像はスクショなのでかざしても反応しないので悪しからず)。

 このグラフによれば、2つの油価が最も乖離したのは、4月19日の37.47ドル/バレルだったようだ(ただし、データは過去5日間の移動平均である由)。その後は、多少持ち直す動きもあったが、依然として乖離は大きいままである。


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 こちらに見るように、ウクライナのクレバ外相がオランダメディアのインタビューに応じ、何をもってウクライナの勝利と見なすかということを述べた由である。

 クレバ外相いわく、我が国はいかなる代償を払っても勝たなければならない。もしも負けたら、ウクライナは消滅してしまい、ヨーロッパもまったく違ったものになってしまうからだ。この場合、「勝利」が意味するものは、以下の4点である。

  1. クリミア・ドンバスも含めた占領地の解放。
  2. ロシアによる戦争賠償。
  3. ロシアの戦争犯罪、人道に対する犯罪の訴追。
  4. ウクライナの欧州統合路線が固まること。

 以上がクレバ外相の挙げる譲れない「勝利」の4項目だが、余計なことを言わせていただけば、いずれもプーチン・ロシアとして受け入れられるものとは思えず、ゆえに戦争はまだ続くという結論になる。


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 こちらに見るように、5月前半(1~15日)のロシア石油生産量が明らかになったので、バレルに換算し、いつも作成しているグラフを更新してお目にかける。

 5月前半の1日当たり生産量は、4月から1.7%拡大し、1,025万バレルとなった。ロシア国内の製油所への原油供給は1日当たり515万バレルで、3.7%増だった。

 一方、こちらの記事が5月前半(1~15日)のロシアからの石油輸出動向を伝えている。これによると、5月前半の遠い外国への石油輸出は1日当たり488万バレルで、前月から2.3%低下した。うち、海運は318万バレルで2.7%減、パイプラインでは170万バレルで1.6%減だった。ただし、これはカザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンの石油のトランジットも一部含んだ数字のようだ。

 トランジットを除いたロシアの石油の輸出は1日当たり446万バレルで、前月から4.1%低下した。ウスチルガ港の11.1%減、ノヴォロシースク港の10.4%減などが目立つ。パイプラインではポーランドが15.4%減、ハンガリーが19.1%減、ドイツが6.2%減などと縮小した。逆にチェコは14.8%増、中国は5.4%増だった。


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 ロシア統計局から4月のインフレ率が発表されたので、早速それをチェック。

 ロシアのインフレ率(前月比の消費者物価上昇率)は今年に入って、1月:0.99%、2月:1.17%、そして3月:7.61%と、開戦を受け跳ね上がっていた。7.61%というインフレ率は、単月の数字としては、プーチン体制になって以降、最も高い数字であった。

 しかし、激しい物価高騰は3月の前半までであり、それ以降は沈静化しつつある。今般発表された4月の物価は、前月比1.56%増であり、だいぶ落ち着きを取り戻した。

 もちろん、これまでの蓄積があるので、4月の物価は、前年同月比では17.83%増という高率の上昇となる。こちらの方は、プーチン体制になって以降、最も高い年間インフレ率だ。近年の推移は、上図を参照。


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 ふと思い出した。そう言えば今年は、ロシアがWTOに加盟してから10周年だったな、と。正確に言うと、ロシアの加盟は2012年8月22日だったということだ。

 当然、うちの『ロシアNIS調査月報』でも特集を組んだ。上掲のとおり、表紙を飾ったのは、当時経済発展大臣で、最近なにかと話題のナビウリナ現中銀総裁。うちの表紙の歴史の中でも、ベストの部類だったと思う。

 まさか、その10周年の年に、ロシアが世界経済から決定的に孤立することになるとは。WTOのチケットを満面の笑みで受け取っていたナビウリナが、戦争経済の指揮を執ることになるとは。

 最近ロシア政府が採っている乱暴な制裁対抗措置を考えると、WTOから除名されてもおかしくないような。いや、もっと言えば、欧米日がロシアを最恵国待遇から外しているような状況では、ロシアがWTOに籍を置く意味が半減しており、ロシア自ら堂々退場するシナリオも考えられるような。


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 それにしても、個人的に、以前からウクライナの港のことを半ば趣味で調べていたのだが、その作業は自己満足に近く、世間様に見向きもしてもらえなくて当然だと思っていた。ウクライナがロシアに軍事侵攻されて、黒海への出口を塞がれかねず、翻ってそのことが世界の食料供給にとって深刻な不安要素になるといったことが、日本のニュースやらワイドショーで取り上げられる日が来るとは、思いもしなかった。

 まあ、なので、メディア出演した際には、これまで培ってきたオタク話をなるべく披露したいのだが、あまり細かい話は敬遠される。「ウクライナは穀物、ひまわり油の世界的な供給国。それを担っているのがオデーサ港」という話だけで終わってしまいがちである。

 ただ、厳密に言えば、話はもうちょっと複雑である。皆さん、オデーサ港と言うと、あのポチョムキン階段の先にある港のことを思い起こすであろう。その狭義のオデーサ港は、2021年の時点で、ウクライナ第4位の港にすぎない。オデーサ州の他の港、ピウデンヌィ(旧ユジネ)とチョルノモルシク(旧イリリウシク)の方が、貨物量は多いのである。ピウデンヌィ、チョルノモルシク、狭義のオデーサ港は、「大オデーサ港」と総称され、一体の港湾と見なせないわけではないが、実際には東京と横浜、千葉くらい離れている。正確には、区別して考えるべきだ。

 もう一つ重要な点は、オデーサの東にあるミコライウの港も、2021年の貨物量は全国2位であり、特に穀物・ひまわり油の輸出港として存在感が大きいことである。つまり、狭義のオデーサ港というよりも、オデーサ州の3大港およびミコライウ港がウクライナの海運、とりわけ穀物およびひまわり油の積出港として死活的な重要性を帯びているということである。

 そのあたりを私がまとめたのが、下表となる。階段下の狭義のオデーサ港は、穀物および植物油輸出国として大した存在ではないことがお分かりいただけるであろう。むしろピウデンヌィ、チョルノモルシク、ミコライウなのである。

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 もうさんざんこすられた話題だが、5月9日の戦勝記念日演説で、プーチン大統領は以下のように述べた。

 今日、我々は大祖国戦争によって命を奪われたすべての人々の記憶、息子、娘、父親、母親、祖父、夫、妻、兄弟、姉妹、親族、友人の記憶に対し、首を垂れる。

 2014年5月に労働組合会館で生きたまま焼かれたオデーサの殉教者たちの記憶に、首を垂れる。ネオナチによる無慈悲な砲撃や野蛮な攻撃によって犠牲になったドンバスの高齢者、女性、子供たち、民間人にも。ロシアのために、正義の戦いで勇者の死を遂げた戦友に、首を垂れる。

 殉教者とは、ロシア語では「ムーチェニク(мученик)」という単語なのだが、先日TV番組に出演する際の打ち合わせで、なぜプーチンはそのような大仰な表現を使ったのかという質問を受けた。そこで、以前にプーチンがその単語を使ったケースがあったかと思い、検索してみたところ、2018年10月のヴァルダイ会議における発言が目に留まった。

 会議で、核兵器の先制使用に関する話題になったようである。こちらに見るとおり、その際にプーチンは次のように発言した。

 我が国の核兵器の概念に、先制攻撃はない。我々の概念は、反撃、報復攻撃だ。…もちろん、全世界的な大惨事になるが、我が国の側からその破局を始めることはない。…侵略者は、報復を避けられないことを知るべきだ。侵略者は殲滅される。我が国は、侵略の被害者となる。我々は殉教者として天国に行くが、彼らは単に死滅するだけである。なぜなら、悔い改める、いとまがないからだ。

 こうした前例から考えて、昨今のプーチンは善悪二元論的な思考を強めており、「殉教者」という表現には、「善玉である我が方が理不尽にも迫害を受けている」という歪んだ被害者意識が込められているのだろうと感じた次第。


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 旅行で滋賀県に来ています。滋賀県は未踏の地だったので。この春、唯一の娯楽か? 皇太子ニコライが襲われた有名な大津事件の現場だけど、扱いはかなり地味だな。


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 最近、ロシア出身のオリガルヒ数人が不審な死を遂げる事件が相次いでいる。それに関し、こちらが伝えるように、有名な反ロシア派のエコノミストであるアンダース・アスルンド氏が、The New York Postのインタビューで見解を述べたということなので、その発言を紹介する。

 アスルンド氏いわく、自分がロシアの情報源から聞いたところによると、2021年末と、2022年3月初頭に、ロシア連邦保安局(FSB)は2つのリストを作成した。そこには、ロシアのエネルギー部門のトップマネージャーたちの名前が記されていた。FSBは、これらの人物がロシアの軍事侵攻計画の機密情報、ウクライナにおけるロシア連邦軍参謀本部情報総局の秘密工作の資金に関するデータを、ウクライナ側に伝えたとの疑いを抱いたのだ。そこで、すべてを抹殺する指令が下された。ロシアは秘密工作の多くをガスプロム社、ガスプロムバンクを通じて行っている。というのも、ガスセクターはロシアで最も腐敗した部門だからであり、ゆえに、そこで働く幹部たちは秘密資金をすべて知っていた。スターリンの時代から、都合の悪い人物の暗殺は、ロシアの特務機関のお家芸だった。アスルンド氏は以上のように述べたということである。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 さて、この頃のチャートを眺め、個人的に最もストライクなのが、今週14位のMary Wells の The One Who Really Loves Youとなる。YouTubeにはいくつか音源が転がっているが、モノラル盤45から起こしたと思われるこちらが音の迫力が一番すごく、お勧めする。モータウンはお上品なCDではなく、多少のノイズはあっても、オリジナル45で聴くのがやはり一番だ。

その頃ソ連では
1962年5月22日:ベラルーシ共和国ミンスク郊外のソスヌィにて、同共和国初の原子炉が稼働。

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 編集作業が終わったばかりの『ロシアNIS調査月報』2022年6月号の中身を、例によって編集長特権で、どこよりも早くご紹介。

  毎年6月号は、ロシア以外のNIS諸国の特集と決まっており、今年はご時世ゆえ「乱気流に巻き込まれるNIS諸国」という特集と相成りました。ただ、例年であればロシア記事は特集の枠外とするのですが、今回は巻き込む側のロシアの動きも切り離しては論じられないので、ロシア情勢の記事も特集に加えることにしました。

 服部個人は、「ウクライナを苦しめるロシアの封鎖と穀物泥棒」、「サプライズなしに終わった戦勝記念日」というレポートを執筆。「ベラルーシからのチーズ輸入にも制裁が影響か」というミニコラムも。

 5月20日発行。


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 「ロシア、388万人が国外へ 反プーチン・生活苦…わずか3カ月で」という記事が話題になった。「ウクライナに侵攻中のロシアで、国民が国外に出る動きが急増している。独立系メディアが6日、連邦保安局(FSB)の統計として、今年1~3月に約388万人が国外に出たと伝えた。渡航先は旧ソ連の構成国が多く、前年同期の5倍近くにふくれた国もある。今後も人材の流出が続けば、ロシア社会に大きな打撃となる可能性もある」と伝えている。

 もっとも、私の理解する限り、この388万人という数字は、あくまでも出国数であり、旅行や商用などですぐに帰ってくる人が多いはずである。日本のゴールデンウィークでは、だいたい60万人くらいが外国旅行に出かけるそうだが(コロナ期は除く)、そのほとんどが旅行が終わればすぐに帰国するのと同じである。

 また、ここ2~3年のロシアの出入国統計を見る上では、言うまでもなく、COVID-19が最大の要因である。昨年の初めはまだ渡航規制が厳しかったので、緩和後の2022年第1四半期の出国者数が前年同期から急増するのは、当然と言える。

 それでも、無益な戦争に興じるプーチン体制を嫌気して、ロシアから逃れている人々が多いこと自体は、事実である。それでは、どのくらいの規模に上るのか?

 こちらの記事では、Yu.フロリンスカヤという学者が、開戦後にロシアから逃れた国民は、ざっくり15万人くらいではないかとの見方を示している。

 一方、いくつかのメディアで引用されているが、たとえばこちらの記事に見るように、OK Russiansというチームは、開戦後に30万人がロシアを離れたという見方を示している。

 388万人が国を捨てたというのはいくらなんでも大袈裟で、桁が一つ違いそうである。ただ、本来であればロシアの発展を担うべき有能な人々ほど逃げ出しているわけで、15万人であっても、30万人であっても、国の将来にとって暗澹たる事態であることに変わりはない。


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 米農務省のこちらのニュースレターに便利な図が出ていたので、それを拝見することにする。ウクライナの農作物栽培カレンダーである。

 掲載されているのは、上から、大麦、とうもろこし、キビ・アワ類、菜種、米、大豆、ひまわり、小麦。黄色が播種時期、グレーが栽培時期、青が収穫時期を示している。

 主力の小麦については、いわゆる秋蒔きが主流であり、秋に種蒔きをして冬を越し、夏に収穫するというパターン。菜種も然り。

 それ以外のすべての作物が、3~5月に播種時期が集中しており、今回の軍事侵攻で大きな影響を受けたであろうことが推察される。


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 私は、ウクライナの港湾はロシアに占領されたり封鎖されたりしてすべて活動停止に追い込まれていると思っていたのだが、厳密に言うと、生き残っている港が3つあるらしい。4月21日付と少々古いが、こちらの記事が伝えている。

 稼働を続けているのは、オデーサ州の一番西端にあるレニ港、イズマイル港、ウスチドゥナイスク港の3箇所(上掲地図で左に並んでいる3つ)。一応、ウクライナの分類では海港という扱いになっているが、レニ、イズマイルなどはやや内陸に位置し、ドナウ川の河川港と言った方が実態に近そうだ。

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 問題は、上図に見るとおり、まだ封鎖を免れているレニ、イズマイル、ウスチドゥナイスクの3港は、ごく小規模であり、ウクライナ全体の輸送量から見れば、微々たるものという点だ。また、一応、鉄道路線はレニまで伸びているものの、本格的な貨物輸送能力があるかは疑問である。

 上掲記事によれば、ウクライナは現状、港からの穀物等の積出ができないことにより、1日当たり1.7億ドルの輸出収入を失っているという。


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 皆様、米トランプ政権が鉄鋼およびアルミニウムの輸入に関税を上乗せするというトンデモ政策を一方的に導入したことを、憶えておられるだろうか? あまり話題にならないが、実はバイデン政権はそのトンデモ政策を撤回せずにそのまま引き継いでいる。プーチン・ロシアですらやらないような、世界の通商秩序を破壊する暴挙と言わざるを得ない(プーチン・ロシアは通商以外の分野で暴挙を働いているが)。

 さて、そんな米バイデン政権もこのほど、商務省のこちらのページに見るように、ウクライナ産鉄鋼については25%の上乗せ関税を1年間停止するという決定を下した(時限的な停止にすぎないのか、ケチ)。

 商務省の声明いわく、5月9日レイモンド商務長官は、米国がウクライナ産鉄鋼に対する1962年通商拡大法232条に基づく追加関税を1年間停止することを決定した。ウクライナの鉄鋼業は同国経済にとって枢要であり、ウクライナ人の13人に1人が同部門で働き、給料も良い。ウクライナの鉄鋼城下町のいくつかは、プーチンの野蛮により最も被害を受けており、マリウポリの製鉄所はプーチンへの抵抗の象徴となっている。製鉄所のいくつかは、給料を払い続けており、付近で戦闘があるにもかかわらず生産を再開したところもある。ウクライナ鉄鋼業に輸出の機会を与えることは、同部門の雇用を守り、最重要な産業部門を維持することに繋がる。


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 AERAに掲載された「ウクライナ侵攻で旅客機『借りパク』のロシア 『魔改造』で飛ばそうとする背に腹は代えられぬ事情」という記事の中で、制裁に苦しむロシアの実情についてコメントしています。無料で読めますので、よかったらご笑覧ください。

 ただ、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給停止に関しては、このコメントをしたあと、若干認識が変わりました。それについては、また別の機会に。


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 はっきり言って、これまで個人的に、ロシアにおける5月9日の戦勝記念日の軍事パレードなど、まったくの関心外だった。しかし、今般のウクライナ侵攻で、軍事パレードの模様からでも、そこに何か意味やメッセージを読み取れるかもしれず、注目せざるをえなくなった。そこで、こちらのページに出ていた図解資料から、本日行われる軍事パレードを予習することにしたい。それぞれの画像は拡大してご覧ください。

 まず、全体的な段取りが下図のとおりとなる。

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 現在、ウクライナで軍事行動中ということで、行進する兵士の数も、兵器の数も、過去数年よりも小規模となる。すでに伝えられているとおり、外国のゲストは、ベラルーシ、カザフスタンといった同盟国の元首も含め、招待されていない。

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 本年のパレードで行進するのは、約9,000人。昨年は1万2,000人だった。装甲戦闘車両は上掲のとおりだが、これも昨年より30台ほど少ない。

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 航空機は上掲のとおりだが、8機のMig-29SMTが「Z」の文字を描きながら飛ぶのがハイライトとなる。

 ただ、この記事の中では触れられていないが、世間一般では、今回のパレードで、核戦争で地上での指揮が取れない場合に備えて設計された「終末の日の飛行機」こと空中指揮機「イリューシン80」が登場することが注目されている。

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 そして、Mi-26を先頭にヘリコプターの隊列も飛ぶことになる。


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 ロシア人ながら、プーチン政権を批判し、むしろウクライナのメディアによく露出する政治評論家が、D.オレーシキン氏である。こちらに見るとおり、同氏が今般Ukraine 24というYouTubeチャンネルに出演し、5月9日の戦勝記念日に向けた展望を語ったということなので、以下で発言要旨をまとめておく。

 プーチンは5月9日に、ロシア南部のロストフ地方からクリミアに至るまでの整備された陸上回廊という形で、テレビ視聴者に広範な勝利を提示しようとするだろう。まやかしの勝利だが、プーチンの支持層はそれを受け入れる。ただ、ロシア国民の25%は「明確なナチ」であり、彼らはプーチンに失望し、彼を臆病者と見なすことになる。

 もちろん、キーウで勝利パレードを行った方がいいのだが、それは無理だということが分かった。だから、マリウポリ、ドネツク、モスクワで開催する。プーチンはおそらく5月9日に成果を誇張して示すことに成功するだろう。

 ただ、ロシア軍関係者は、眠れない日が続いているだろう。私がウクライナ側の参謀なら、5月9日の「ロシアの勝利」を台無しにするようなサプライズを、何としてでもやろうとする。

 プーチンは、5月9日を乗り切ることまではできる。しかし、もし戦争が終わらないとすると、そして私は終わらないと思うが、プーチンにとって最も困難なことはそこから始まる。欧米の制裁が全面化し、武器供与を受けたウクライナの抵抗が激化する。プーチンの資金はどんどん減っていき、ウクライナはプーチンを叩くための武器、経験、士気を高めていく。

 ウクライナ戦争に対するロシア社会の認識不協和は、秋になると大きくなり、危機的な状況になる。数カ月もすれば、戦死者の葬儀の数が国の質的な変化に繋がり、プーチンにとって悪い知らせになるだろう。


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 ロシア・ウクライナ情勢が大変だが、毎週土曜日の息抜き企画を今日もお届けする。60年前のアメリカ・ヒットチャートを振り返るシリーズ。

 今週チャートの10位に入っているのが、Joey Dee & the Starliters の Shout。黒人ボーカルグループのアイズリーブラザーズが1959年にヒットさせた曲を、白人がカバーしたものだろう。正直言うと、こういうカバーバージョンがあることは知らなかった。ただ、聴いてみたところ、ライブ版ながら、あまり熱狂は感じられなかったかな。どう考えてもアイズリーの方が良い。

その頃ソ連では
1962年5月3日:カザフ共和国で西カザフスタン地方、南カザフスタン地方が創設される。

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